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旧・オネショタ好きな俺は転生したら異世界生活を楽しみたい!   作者: 井伊 澄州
第1章 オネショタな俺が転生したらエロフに騙された!
20/480

007 シルビアとエトワール

 外をフラフラと歩いている俺は一軒の食べ物屋を見つけた。

中は中々人で賑わっていて、みんなうまそうに飲み食いをしている。

俺はその店に入ってキョキョロしていると、突然話しかけられた。


「あら、先ほどのお客様?」

「あ、さっきはどうも」


それはあの魔法協会のお姉さんたちだった。

例の黒髪の先生風なお姉さんと、もう一人の茶色の髪のやさしそうなお姉さんだ。

黒髪のシルビアさんは、制服から私服に着替えたせいなのか、あのキリッとした感じから、見た目がえらく変わっておとなしく見える。

最初は見間違えたほどだ。


「席を探しているの?ここで私たちと一緒にいかが?」

「いいんですか?」


こんな美女二人と席を相席してもらえるなら、こちらから頼みたいくらいだ。


「ええ、どうぞ」


俺の問いに茶色の髪のお姉さんも笑顔で応じる。


「では失礼して・・」


俺はその席に座ると、キョロキョロと壁に書かれた品書きを眺める。

すると、シルビアさんがお勧めを教えてくれる。


「ここはソーセージと黒パンがお勧めよ」

「はい」


俺はお勧めの通りに、ソーセージやいくつかの物を注文する。


「お客様はどちらからきたの?」

「お客様はやめてください。

シノブ・ホウジョウと言います。

出身は・・・何と言うか、凄く遠い場所です」

「シノブさんね、私はシルビアって言うの、覚えてる?」

「はい、もちろんです。

魔道士シルビアさんですね?」


俺がそう答えると、シルビアさんはちょっと恥ずかしそうにして、隣にいる茶色い髪のお姉さんはクックックと笑いを堪えている様子だ。

え?何で笑うんだろ?


「あの・・・何か僕、おかしい事を言いましたか?」

「いいえ、別に何も間違ってはいないわ」


シルビアさんは真顔で答えるが、それにしては何か変だ。


「そうなんですか?」


そもそも、その割には隣の人が笑いを堪えているのはなぜだろう?

俺がそう考えていると、シルビアさんが説明を補足する。


「まあ・・・ただ魔道士同士では、公式な場ではともかく、こういう場所では、あまり御互いを「魔道士」とはわざわざ呼び合わないのよ」


ん?ああ、そうか?つまり日本では大学を卒業すれば、その人間は全て「学士」だ。

しかし大学を卒業した者同士が、町の食堂で会って、

「やあ、久しぶりだね、学士山本君!」

「まったくだね、君も元気そうで何よりだ。学士田中君!」

とは会話しない。

そんな感じか?一応、確認のために聞いてみた。


「えっと、つまりこういった場所で、そんな称号で呼び合うのは恥ずかしいと?」

「まあ、そんな所ね」


笑いを堪えながら茶色い髪のお姉さんが説明する。

やはり、そうだったのか。

話題を変えようとシルビアさんが俺に質問をしてくる。


「ところで故郷が遠いって・・・そんな遠いとこなの?」

「ええ、日本と言って、ここからどれ位離れているかわからない位です」

「ニホンね、確かに聞いた事がないわ・・・「魔道士エトワール」あなた知っている?」


黒髪美女のシルビアさんが、もう一人の美女に問いかける。

どうやらこの人も魔道士で、エトワールという名前らしい。

そのエトワールさんが、思わず飲んでいたエールを吹き出しそうな勢いで返事をする。


「ちょっと!

あなたもその呼び方やめてよ!

恥かしいじゃない!」


そうか・・・やはり恥ずかしいのか・・・


「わかったわ、で?知ってるの?」

「いいえ、私も知らないわ」


エトワールさんも首を横に振る。


「ふ~ん、まあ、いいわ、それでどうして一人で旅をしているの?目的は何?」


この質問にはいきなり困った。

正直今の所、目的などないのだ。

正確に言えば、素敵な御姉さんを探してオネショタ生活を満喫する事が目的だが、まさかそれを言う訳にもいかないしね。

この二人はまさに素敵な御姉さんなので、俺の彼女になってくれれば嬉しいんだけどなあ・・・

俺はさしあたり無難な事を正直に答える事にした。


「正直、今の所、目的って言うほどの物はないんです。

ただ世間を知りたくて旅をしていて、強いて言えば、広い世の中を見聞するのが今の目的です。

それと将来、何かやりたい事や目的が見つかった時のために、困らないように、今のうちにできるだけレベルを上げておきたいのと、魔法をたくさん覚えたい。

それが今の目的ですね」

「なるほど~偉いのね」

「ええ、その年で感心するわ~」


見た目は12・3歳だけど、中身は45のおっさんだけどね。


「それで昼は魔法協会を尋ねてきたのね?」

「ええ、ここの魔法協会はかなり大きいと聞いて、魔法を覚えるのにはどうしたら良いかと思って」

「まあ、魔法を覚えるのは昼に教えた通りね」

「はい、色々教えていただいてありがとうございました」

「いえいえ、どういたしまして」


機嫌が良さそうな所で、俺はシルビアさんに聞いてみたい事があった。


「あの・・・もし御迷惑でなければ、いくつかお聞きしたい事があるんですが?」

「かまわないわよ?」

「ありがとうございます。

魔法を覚える事はわかったんですが、これから僕が旅をしていくのに、他に何か助言はないですか?」


俺の質問にシルビアさんが考えながら答える。


「そうねえ、それはやはり仲間を集める事かしら?

レベルを上げるにしても、旅をするにしても、やはり一人では限界があるから」

「そうね、何かの時のために、信頼できる仲間はいた方がいいと思うわ」


エトワールさんも賛同する。


「仲間ですか・・・」


正直それは俺も感じていた。誰か良い旅の連れ合いでもいれば良いなと。

特に迷宮で一人は厳しい。

しかし、いかんせん、それにはどうすればよいか、全くわからなかった。


「仲間を集めるにはどうすればいいんですか?」


俺の質問にシルビアさんが、再び考えながら答えてくれる。


「そうねえ、仲間と言っても色々あるわ。

一般的には、こういった食堂や酒場で会った気の合う人間を仲間にしたりするわ。

後は魔法協会の掲示板や、組合の掲示板で仲間を募っている場合があるわ。

でも、坊やみたいな初心者にはお勧めできないわね」

「どうしてですか?」


いつの間にか坊や扱いされているが、気にしない事にしよう。

何しろ相手は素敵なお姉さんだ。

オネショタ趣味の俺にはむしろ大歓迎だ。


「相手も色々レベルとか、特殊技能の要求とかあるし、逆にレベル能力問わずって言う場合は、危ない話の場合が多いのよ」

「危ない話?」

「ええ、例えば最初から強い魔物に会った時に、逃げるための捨て駒にするつもりだったり、単なる使い走りや仲間とは名ばかりで雑用にされたり、ひどい場合には追いはぎが目的な場合とか、身包み剥がされて奴隷として売られてしまう場合だってあるわ」

「うわ~、それは確かにひどいですね?」


そんな場合があるのか?

さすが中世だ!

法も道徳もあったもんじゃないな!

俺が驚くと、エトワールさんも忠告する。


「ええ、だから気をつけなくてはダメよ」

「はい、ありがとうございます。他には?」

「そうね、後は・・・一番問題なのは・・結局、揉めるのよね~」

「揉める?」


そう聞いた瞬間、俺はつい目の前のお姉さんの胸を見てしまった。

うむ、この大きな胸は確かに揉みたい。

いや、そうじゃなくて・・・


「ええ、家族とか、主人と家来の関係なら、あまり問題はないけど、酒場なんかで集めた仲間って言うのは、早い話寄せ集めでしょ?

その時は気があって、仲間として一緒になっても、いざっていう時ほど、やっぱり、揉めるのよ~」

「いざって言う時?」

「そう、例えば、重要なお宝が出た時なんかはもめる基本ね。

お金なら均等に配分可能でしょうけど、貴重なアイテムだったりしたら、全員に分ける事はできないわ」

「そういう場合、どうするんですか?」

「優秀なリーダーなら大抵は最初から決めておくわね。

例えばリーダーがそのアイテムを買い取ったと仮定して、その金額を仲間に分配する方法や、欲しい仲間に買い取らせる事が一般的ね。

一番公平なのは本当に売ってしまって、そのお金を全員で分ける事ね。

でも、それでもやっぱり不平が残ったりするわ」

「なるほど」

「それ以外にも、例えば爵位や叙勲なんかで、揉める事があるわ」

「爵位?」

「ええ、どこかの王様から出た重要なミッションなんかをすると、爵位を授かる事があるの。勲章をもらったりもね。

その時に全員に同じ爵位をあげればよいのだけど、場合によってはリーダーだけとか、仲間で爵位に差がつけられるとかいう場合があるわ。

その時はやはり揉めるわね。

もっとも同じ爵位をもらったとしても、それはそれで、やっぱり揉めるのよね~

俺の方が活躍したんだから、俺の方が上の爵位になるはずだってね。

あとは叙勲される勲章の等級でも同じような事は起こるわ」

「ああ~~」


そのシルビアさんの話に俺は納得した。

それは確かにどちらもありそうだ。


「だから信頼できる良い仲間を見つけるってのは、意外に難しい事なのよ~」

「確かにそうですね。では他に仲間を見つける方法はないのですか?」


俺が聞くと、今度はエトワールさんが答えてくれる。


「奴隷を買う方法があるわ。

正直言って、こっちの方が、あなたにはおすすめね」

「なぜですか?」

「奴隷ならよほどの事がない限り、主人を裏切ったりしないし、戦闘用の奴隷なら頼りにもなるわ。

それにちゃんと信用のおける商館から買えば、安心もあるしね。

欠点としてはあなたが養わなきゃならない事。

あとは良い奴隷は買うお金が結構かかることかしら?」

「ボク、お金なら多少持っています」


その俺の言葉にシルビアさんが諭すように話しかけてくる。


「そうなの?

それなら優秀な奴隷を買うのがお勧めかもね。

でも、坊や、自分がお金を持っているなんて簡単に他人に話しちゃだめよ?

相手が私たちだったから良かったけど、そういうのを狙って近づいてくる人もいるんだから注意しなくてはだめよ?」

「はい、忠告ありがとうございます。

今後は気をつけます。

先生!他には何かありますか?」


調子に乗った俺の質問に再び、シルビアさんが答える。


「んふふ、よろしい!シノブ君は中々いい子ね、素直で良いわ~・・・

そうね、後は難しいけど、自分でゴーレムを作るか、ゴーレムを買う事ね」

「ゴーレムを買う?」


ゴーレムはすでに何回となく作っているが、買ったりするとは思わなかった。


「ゴーレムを作ったり、買ったりって言っても、いわゆる普通のゴーレムじゃなくて「ジャベック」っていうのよ?知ってる?」

「はい、名前だけは」


ジャベックというのは、確か中級ゴーレムの名称のはずだ。


「ええ、いわゆる普通のゴーレムは、正確には「タロス」って言って、役目が終わるとすぐに魔素屑に戻っちゃうの。

ゴーレムって言えば、普通はタロスの事を指すけど、使役物体魔法の総称でもあるわ」

「そうですね、僕の作るゴーレムはそれです」

「あら、あなた自分でタロスを作れるの?凄いわね?」

「え?正式に魔法学校にも行っていないのに?」


二人は俺がゴーレム魔法を使える事に、かなり驚いたようだ。


「はい、でもそれじゃダメなんですよね?」

「ええ、ジャベックっていうのはね、かなり高位の魔法使いでないと作れないのよ。

だから使える人はとっても数が少ないの。

魔法協会で言うなら魔法学士レベルね。

私たち魔道士レベルでもジャベックは作れないわ。

だからあなたがそれを作るようになるのは、ちょっと難しいと思うわ。

そうなると、ゴーレム屋で買うのがいいけど、それもあんまりお勧めはしないわね」

「なんでです?」

「指図しなれてないと結局二度手間みたいな感じになるのよ。

所詮人形みたいなものですからね。

もっとも上等なジャベックになると、そういうのも大丈夫だけど、今度は値段が高いしね。

それに戦力とはなるけど、旅の仲間としてはちょっとね」


それは確かにそうだ。

エトワールさんも同意する。


「そうね、まあ確かに戦闘には良いけど、単純に戦闘ならタロスを買えばいいわけだし」

「え?タロス・・・普通のゴーレムも売り買い出きるんですか?」


俺は驚いて聞いた。

あんな物をどうやって売り買いするのだろうか?


「ええ、そうよ」

「どうやって?あの、タロスって、作り出してしばらくすると崩れちゃいますよね?

どこかで買っても、目的地に行くまでに崩れちゃいませんか?」

「ああ、それはね、作ったタロスはちょっとした魔法操作で封じ込める事が可能なのよ。

その封じ込めた空間にいる間は時間がとても遅く流れるので、ゴーレムはほとんど劣化しないのよ。

マギアサッコの魔法と使役物体魔法自体の複合応用なの。

そうやって持ち運んで、いざ使う時になれば、その場で開放するのよ」

「どうやって使うんですか?」

「大抵はその場で放り出して、短い解呪の言葉を唱えれば、開放されて動きだすわ」


なるほど、ウルトラセブンのカプセル怪獣みたいなものか?それともポケモンかな?

とにかくそれは便利そうだ。

その方法を知っていれば、買わなくても、俺の場合は宿で作っておけば、戦いの時にすぐに出せるし、魔法力の消費もない。

それを覚えれば、恐ろしく便利そうだ。


「ただし、タロスの場合は使い捨てね。

元の封じ込めた状態に戻す事はできないわ。

ジャベックは使った後で、また封じた状態に戻せるけど。

大抵はサイコロ型や正四面体の形で持ち運ぶわね、

でも戦闘用に一番便利なのは、ベルトや服に穴を作って、挿しておく場合で、マギアグラーノとか、ゴーレムグラーノって呼ばれているわ」

「マギアグラーノ?」

「ええ、「魔法のどんぐり」って意味よ、形がどんぐり型なのでね。

昔はエイコーンと言っていたらしいけど、今はマギアグラーノとか、ゴーレムグラーノって言うのが普通ね。

単にグラーノとも言うわ。

ちなみに四角いのや三角なのは、ゴーレムキューブとかゴーレムテトラと呼ばれているわ」


そういえばこの町の屋台で、サイコロみたいな物や、小さいピラミッドだかテトラパックみたいな物、ベルトに弾丸のような物をズラッとつけていた人を何人か見た記憶がある。

アレを見た時は、銃もない世界なのに、一体何なのだろうと思ったが、そういう代物だったのか!


「それって、町の屋台で見たような気がします・・・」

「ええ、屋台でも売っているわ。

でも、正直言って、屋台のは安いけど、不良品が多いし、結構当たり外れの大きい、いい加減な物を売っているからお勧めはしないわね」

「そうね、ちゃんとしたのはやっぱり街中で店を構えているゴーレム屋か、魔法協会で買った方が良いわ。店によっては保証もしているしね」


その二人の説明に俺もうなずく。

なるほど、確かに屋台のじゃ、いい加減なのが多そうだ。

ミスリルの短剣だって、あのざまだったしなあ・・・


「それって、いくら位するんでしょうか?」

「そうね、もちろんピンからキリまであるけど・・・

基準の一つとして、戦闘用タロスならだいたいレベルかける大銅貨1枚、

ジャベックならレベルかける大銀貨3枚ってとこかしら?」

「と、言うと、レベル20のタロスなら銀貨2枚、

ジャベックなら金貨6枚って事ですか?」

「そう、でももちろん、レベル1の物なんて誰も買わないから、実際に売っている物は最低でもレベル10位からかしらね?

それにレベル50を越えると、その2倍から3倍、レベル100を超えると、さらに値段は上がるわ。

あまり売っていないから。

それと、もちろんレベルが低くても、汎用や複雑な動きをする物は高くなるわね」

「なるほど」


話を聞いて俺は納得した。

あれ?

そういえば、今思い出したけど、この人たちの昼の制服にも、そんな物があったような・・・


「そういえば、シルビアさんたちの魔法協会の制服にも、そんなような物がついていたような気が・・・確か胸の辺りに・・・?」


そう、制服の胸の辺りに、斜めに5本、それが装着されていたような記憶がある。


「ああ、気がついていたのね?

そうよ、私たち魔法協会の魔道士は、戦闘法務官と言って、町の秩序も守らなければならないの。

だけど、場合によっては、たった一人で、争いの調停や戦闘を強いられる時があるの。

だからその時のために、制服にはグラーノを最低でも5つは装備する事が規則で決められているのよ。

そうすれば長い呪文を唱える必要もないし、魔法力も使わないですむから。

それを目立つように制服の胸の部分に装備している訳、そうすれば相手もそれを見るだけで注意するでしょう?

何しろ魔道士の持っているグラーノは一般的な物に比べれば強力だから

もっとも胸に着けているのは、「見せグラーノ」みたいな物で、実際にはもっとたくさん持っている事が多いわね」

「ええ、それに実際には自分の呪文で戦闘タロスを生成する事の方が多いわ。

正規の魔道士なら必ず全員タロスは作り出せるから。

それとグラーノはマギアサッコに入らないから外に持っているしかないのよ」


シルビアさんの説明に、エトワールさんも補足してくれる。


「え?マギアサッコには入らないんですか?」

「ええ、マギアサッコとマギアグラーノは似たような魔法だから反発しあってマギアサッコの中にグラーノは入らないのよ」

「なるほど」


しかしこれは便利な魔法だ。

例えマギアサッコの中に入らないとは言え、持っていた方が良い。

これを持っていればかなり便利なはずだ。

確かに俺もそれは使えるようになりたい。

俺がそんな事を考えていると、エトワールさんが、突然笑いながら話しかけてくる。


「んふふ・・・ちょうど今、私グラーノを持っているわよ」

「え?」

「ここで見せてあげるわね」

「え?いいんですか?」


こんな場所でゴーレムを出して戦闘をするつもりなのか?と俺は驚いた。


「大丈夫、大丈夫、私の趣味で作った安全な奴だから」


そういうとゴソゴソとハンドバックの中身を探ると、紫色に光る、どんぐりのような物を取り出す。

その代物は確かに俺が屋台で見たアレだ。


「は~い、でてらっしゃ~い」


エトワールさんが、そう言ってテーブルの上にグラーノを放ると、そこに小さなゴーレムが出現する。

ちょっと小さめなフィギュアか、デッサン用の木で出来た人形のようだ。

そのゴーレムはテーブルの上で踊りだす。

それは俺の作ったゴーレムのようにめちゃくちゃな踊りではなく、滑らかなちゃんとした踊りだった。

綺麗にクルクルと回ってみたり、ジャンプをしたりと、まるでバレエでも踊っているのを見ているようだ。

これに比べれば、俺のゴーレムの踊りなど、ただその場で暴れて適当に動いているだけだ。


「うん、ずいぶん滑らかに動くようになってきたわね」


シルビアさんが感心したようにその踊りを見る。


「でしょ~?苦労したもん」


エトワールさんは得意満面だ。

一通り、テーブルの上で踊りを終わると、丁寧にお辞儀して、そのゴーレムはパアッと四散して、光となって消滅する。

俺は思わず拍手をした。

ゴーレムでこんな芸術的な使い方も出来るとは驚いた!


「凄い!こんなの初めてみました!

ゴーレムって、こんな風にも使えるんですね!」


俺の惜しみない賞賛に、エトワールさんも得意げだ。


「ええ、他にも上手く作れば、楽器を弾いたり、歌を歌わせたりも出来るわよ」

「歌まで?」

「ええ、発声部分の作りが複雑で難しいけどね」

「へえ~」


本当に使役物体魔法は奥が深い。

俺は改めてそう思った。

素直に感心する俺にシルビアさんが、説明する。


「ま、確かにゴーレムは便利だけど、あくまで道具であって、仲間というにはちょっと無理があるわよねえ」

「あら?でもジャベックの質の良いのなら、それなりに使えるし、簡単な会話もできるから仲間とも言えるんじゃないかしら?」


そのエトワールさんの意見にシルビアさんは首をかしげて答える。


「そうねぇ、微妙な線かしら?」


考え込むシルビアさんに、エトワールさんが含みを持った淫猥な笑いで答える。


「ふふっ、それにジャベックならお楽しみもできるしね~」

「年端もいかない人間に、そういう知らなくてもいい、余計な事を教えるんじゃない!」


そう言ってシルビアさんが、エトワールさんの頭をドスッ!とチョップする。

エトワールさんが両手で頭を押えて叫ぶ。


「なによぅ、いいじゃない!」

「え?どういう事ですか?」


俺が質問すると、二人は顔を見合わせたあとに、仕方ないかという感じで、シルビアさんが説明を始める。


「あのね、まあ、つまりジャベックの上級のになると、その・・・色々と出来る物もあるのよ」

「へえ?」

「そうそう・・・ジャベックの上物になるとね、見た目とか触感とかも、かなり、人間に近いのができるのよ、見た目がすっごくかわいいのとか・・・」


エトワールさんの説明に俺が再び考える。


「そ、それは、なんと言うか・・・寂しい人たちのための・・・?」

「そうそう、町にはそういった事の専門のゴーレム屋もあるくらいなのよ。

「美女ジャベックあります」とか看板が出ている店とかね・・・」


せ、専門店・・・あるのか?

そういうのが・・・?

美少女アンドロイドならぬ、美少女ゴーレムか・・・どういうのだろうか?

ゴーレムと言えば、自分の作った土くれで出来たゴーレムしか知らなかった俺にはちょっと想像が出来ない。

でも今見せてもらったエトワールさんの踊るタロスは驚くほど滑らかな動きをしていた。それから考えると、美少女なゴーレムって、ちょっと店に行って見てみたい気がする。


「だから、そういう余計な事を教えな~い!」


再びシルビアさんのチョップが、エトワールさんの脳天をビシッ!と直撃する。


「いった~い!別にいいじゃない?

シノブさんだって、そういうのに興味あるわよねぇ?」

「はあ・・・まあ・・何というか・・・」

「だから前途ある少年を変な世界に引き釣り込むなっつーの!」


グイッとグラスをあおったシルビアさんが、さらにチョップをしようとするのを、今度はサッとエトワールさんが避ける。


「なによう!シルビアだって、興味はあるくせいにぃ~」

「な・な!私がいつそんな物に興味を・・・!」

「あら?まだ酔いが足りないようね?」

「なんですって?」


何か怪しい雰囲気になってきたので、俺が中に入って止める。


「まあまあ、その話はわかりましたから・・・」


俺がそう言って止めると、二人もおとなしくなる。

この二人、ひょっとして酔うと厄介なのか?

俺は話を変えようとしてゴーレムの話を続けた。


「それじゃあ、仲間にするならジャベックではなくて、その上のアイザックなら・・・」


そう言いかけた俺を二人が同時にさえぎる。


「「 それは無理!! 」」

「え?」


ジャベックではなく、さらにその上級ゴーレムである、アイザックなら旅の仲間として良いのではないか?

そう考えた俺の質問を、全部言うまでもなく、二人が揃って否定する。


「あの・・・無理って・・・?」


戸惑う俺に、エトワールさんが勢いよく説明する。


「確かにアイザックなら自分で判断もするし、魔法も私達魔道士か、それ以上に使えるわ。戦闘でも日常でも、とても頼りになると思うわ。

普通に話も出来るし、人間と変わらないわ。

旅の仲間としては最高でしょうね。

でもそれは無理なのよ」


その言葉にシルビアさんもうなずきながら説明する。


「タロスやジャベックと違って、アイザックは桁外れの値段なの。

下手な奴隷よりも高いし、そもそもその辺では売ってないわ。

とても庶民には手が出ないのよ」


エトワールさんも相槌を打って、教えてくれる。


「そうね、高級なジャベックでも高い物は金貨百枚以上はざらにあるけど、アイザックとなると、最低でも金貨五百枚以上、実際には大抵1千枚以上になるわね」


金貨1千枚とはたしかに高い!


「そんなに高いんですか?」

「ええ、アイザックを持っているのは王侯貴族か、よほどの上級魔道士、後は中規模以上の国家よ。

そもそも作れる人を探すのが大変だしね」


国家?そんなレベルなのか?

それは確かに個人で所有するのは無理ってもんだな。


「国家?アイザックって、そんな凄い物なんですか?」

「ええ、だって戦闘用上級アイザックなら、一体で中規模の町程度なら殲滅できるもの、下手すると、小さな国だって滅ぼせるわ」


国を滅ぼすって・・・まるで核兵器扱いだ。

俺はただの質の良い上級ゴーレムかと思っていたけど、実際のアイザックって、そんな凄まじい代物だったのか?

俺は驚いて質問する。


「そんな凄まじい代物なんですか?」

「ええ、戦闘用上級アイザックは上級の魔法学士と同等よ。

いえ、それ以上ね。

だから個人が所有するなんて、余程の事がない限り無理よ。

値段だって金貨1万枚を越える事だってあるわ」

「なるほど」


金貨1万枚を越える金額とは凄まじい。

確かにそんな代物を個人で所有するのは難しそうだ。

感心する俺に、さらにエトワールさんが説明を続ける。


「例えば、このロナバールの魔法協会本部はかなり大きいけど、それでも戦闘用上級アイザックは六体しかいないわ。

その六体はロナバールの「六名石」と言われているわ」

「ろくめいせき?」

「ええ、名のあるゴーレムの場合は「巨石」とか「名石」と言われる場合があるのよ。

特に「名石」と言われるのは、名のあるアイザックなどの場合が多いわね。

その六体はどれ一つとっても、ちょっとした街の一つや二つは消し炭に出来るわ」

「なるほど」

「そして一つの都市にアイザックが六体というのは多い方なのよ。

普通はせいぜい一体か二体、多くても三体ね。

六体以上の上級防衛用アイザックがいるのは、ここ以外ではマジェストンと帝都しかないわ。

後は確かノーザンシティに四体か五体いると聞いているわ。

まあ、あそこはゴーレムで有名な町だから・・・それ位、アイザックは重要で貴重よ」


その説明に俺も納得した。

魔法大全には単に上級ゴーレムとしか説明をされていなかったが、こうやって話を聞くと、どうやら実際のアイザックというのは、とんでもない代物のようだ。

しかし、この人たちの話を総合すると・・・


「話を元に戻して・・・そうすると、今の僕に仲間を作るという点で向いているのは、奴隷を買うって事ですか?」


その質問に落ち着いたシルビアさんがうなずいて答える。


「そうね、今の中ではそれが一番いいわね」

「私もそう思うわ」


どうやらエトワールさんも同じ考えのようだ。

やはり、そうなのか。

正直、奴隷を買うという行動にはまだ抵抗があるが、これからの事を考えると、そうも言ってられないかもしれない。

ゴーレムは一応戦力になっているけど、それだけじゃなあ・・・

それに「郷に入れば郷に従え」という言葉もあるしね。


「う~ん、どこか良い奴隷商館って、シルビアさん、知っていますか?」

「ああ、ここを出て大通りを行った所に「バーゼル奴隷商館」というのがあるわ。

そこならあなたみたいな若い人でも、ちゃんと対応してくれるはずよ」


ああ、サーマル村長たちに案内してもらったあそこか!


「そこ、僕以前に見学した事があります」


というか、俺はそこしか知らない。


「そうなの?では明日にでも、試しにそこに行ってみたらどうかしら?」

「はい、ありがとうございます!

シルビア先生とエトワール先生の魔法講座は大変ためになりました!」


俺が頭を下げて礼を言うと、二人が笑って答える。


「ふふん、確かに大変素直でよろしい!

このタロス使いのエトワールに質問がある時はいつでも聞きたまえ!」

「ええ、こんな程度で良ければいつでもどうぞ」

「はい、よろしくお願いします」


俺がそう言うと、ちょうど食べ物がやってきた。


「はい、ワインの水割りと、ソーセージと黒パン、それに焼きじゃがいもお待ち!」


そう言いながら店の人が俺の前に料理を並べる。

俺はきた料理を食べながら考えた。


う~ん、それにしても奴隷か・・・

俺が無言で食べながら考えていると、突然シルビアさんが抱きついてくる。


「きゃははは!まあ、そんなに深刻に考えないで!

何か困った事があれば、いつでも私が相談に乗るわ!」


そう言いながら酔ったシルビアさんが俺にグイグイとしがみついてくる。

・・・え?何?この人?突然どうしたの?

いや、嬉しいんですけど!


「あら?とうとう酔いが回ってきたのね?

この人、酔うと年下の男に抱きつく癖があるから。

特に気に入った男だと思いっきりね。

この様子だと、あなた相当気に入られたみたいよ?」


なんですって?

わお!酔っ払い万歳!

もっと酔っ払ってください!


「シルビア?わかってる?

あなた、また酔ってるわよ?

ごめんなさい、シノブさん。

ほらほら離れて・・・」


酔ったシルビアさんをエトワールさんが引き剥がそうとする。

ああ・・・そんな事しなくてもいいのに・・・


「いいえ、別に構いません」


むしろご褒美です。

ありがとうございました。

そのまま寝込んでしまったシルビアさんを、食事が終わった後で、エトワールさんと両脇で抱えて、家まで送っていった。

二人は魔法協会の寮に住んでいるようだ。


「本当にごめんなさいね。今日は助かったわ」

「いいえ、どういたしまして。

 こちらこそ色々と話をしていただいて助かりました!」


しかもシルビア先生の御褒美がいただけて嬉しかったです!


「あ、何か困った事があったら、本当に魔法協会に来てね。

私もシルビアも相談にのるから」

「はい、ありがとうございます」


そう礼を言うと、俺もオルフォン亭に帰った。

ふう~、今日はこの世界に来て、美人と話せて食事まで出来て良い日だった・・・

オマケに美人の御褒美までいただけて最高でした!

あ、別にメリンダさんが美人じゃないって事じゃないよ?

そう自分で自分に突っ込みを入れながら今後の事を考えた。

(魔法と仲間か・・・)

果たしてどちらを優先すべきだろうか?



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アースフィア 8日目


名 前 : シノブ・ホウジョウ


レベル : 41


年 齢 : 15


状 況 : 古都ロナバールで、シルビアさんとエトワールさんに会って

      仲間の集め方の説明を受ける。




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