表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
旧・オネショタ好きな俺は転生したら異世界生活を楽しみたい!   作者: 井伊 澄州
第1章 オネショタな俺が転生したらエロフに騙された!
196/480

176 昇降機のお披露目と魔法食堂

 アースフィア広域総合組合の組合長グレゴールさんの挨拶に続き、魔法協会ロナバール本部からブルーノ副本部長という人の挨拶があった。

魔法協会の幹部制服を着て、マントを羽織っている、いかにも老練な魔道士といった感じの老人だ。

迷宮は共同管理らしいので、両方の挨拶が必要なんだろうな。

そういやゴーレム大会の時も、魔法協会の挨拶って、この副本部長だったな?

ここの本部長って、こういう行事の挨拶って出てこない人なんだろうか?

まあ、いいか?そういう慣わしなのかも知れないし、人にも色々理由があるだろうしな。

俺とエレノアが設置者の代表として紹介されて、軽く御辞儀をする。

二人の挨拶が終わると先頭から順番に迷宮に入っていく。

俺とエレノアも店の手伝いをするために、挨拶が終わると急いで中に入っていく。


迷宮の中に入った人たちは、まずは広場に驚いたようだ。

今回の迷宮は中に入ると、すぐに広場になっているからだ。

しかもここの広場は南西の迷宮広場よりもはるかに広く、明るい。

経費は組合持ちだったので、俺は魔法照明ジャベックを作って、広場の中央にそれを迷宮の象徴のように配置した。

その樹木のオブジェのような魔法照明ジャベックは、1時間ごとに色の違う、大きな魔法の照明球を天井に打ち出して、広場を明るく照らすだけでなく、時間を知る事も出来るようになっていた。

また10分ごとに小さな照明球を無作為な方向へ打ち出して広場の天井を飾った。

そしてその照明ジャベック自身も光っていた。

しかも俺は少々凝って、時間ごとに徐々に光の色を変えて、順番に虹のように七色に発光するように仕組んでおいたので、それを見た人は感心したようだ。


そして南西の迷宮広場よりも店の数も多く、休憩所も広かった。

南西迷宮と同様に、魔法協会と組合の出張所もあるが、それ以外の店があった。

「カベーロス商店」と、「シノブ魔法食堂」だ。

カベーロス商店は品数も豊富で、協会や組合では売ってない物を売っているので、中々評判も良いようだ。

一番売れている物は各階の地図だ。

俺たちが迷宮の壁を壊して安全地帯や昇降機を設置したために、迷宮の構造が変わってしまったからだ。

そのために、現在の構造を書いた地図が一番の売れ筋商品のようだ。

うん、確かにそれは売れるだろうな。

俺もそれには気づいていたのだが、自分の商品の開発で忙しかったので、そこまでは手が回らなかったのだ。

 

しかしながらうちも負けてはいない!

迷宮に入って来たほぼ全員が、「シノブ魔法食堂」に衝撃を受けたようだ。

うちの店は食べ物屋で、飲み物は水、レモネード、ハーブ茶の3種類だが、食べ物は1種類しか売っていなかった。

だが、その1種類が衝撃的だったのだ!

ウチで売っていた食べ物は「肉まん」ただ一つだった。

そう、21世紀日本ならコンビニでもおなじみのあの中華まんだ。

俺は迷宮で食べ物を売るに当たって色々と考えた。


1、迷宮の中で移動しながらも食べ易い。

2、比較的安く作れておいしい。

3、材料が簡単に入手できて、大量生産が可能

4、持ち運びにも便利。

5、半日程度は日持ちがする。

6、出来れば目新しく、人気が出そうな物。

7、万人受けする物


以上の7点を条件として考えた。

まずはハンバーガーやサンドイッチを考えたが、挟む具材にもよるが、これは意外に具がこぼれ易い。

それにこの世界でまだハンバーガーっぽい物は見た事がないが、サンドイッチは「メティ」と言って、すでに存在している。

ミクサードもメティの一種だ。

乾パンや干し肉は今更で、他の店でも売るだろうから、あまり面白くはない。

丸パンも同様だ。

次に考えたのはおにぎりなのだが、現状ではまだ俺の手持ちしか米の供給がない。

それがなくなれば終わりだ。

これでは大量に作る事が出来ない。

どちらにしても我が家で食べて在庫は減っているので、米や小豆の栽培はなるべく早く解決した方が良さそうだ。


そして考えたのが中華まんだった。

俺が知る限り、この世界にはまだ「蒸す」という調理技術がなかった。

エレノアやキンバリーに聞いても知らなかった。

だからふかふかの蒸した食べ物などはない。

これは目新しく受けるだろうと俺は思った。

材料的にも生地はパンとほぼ同じだし、中身も肉、たまねぎ、キノコと全て市場で揃う。

醤油は難しいが、試行錯誤した結果、魚醤と香辛料で、何とか代用できそうだ。

まずは俺は町の木工細工屋に頼んで丸型の蒸篭せいろを作り、自分の家で肉まんを作ってみた。

そしてそれを皆に試食で食べさせてみた。

蒸篭から出し、湯気の立つ肉まんを食べたうちの人間たちと、昇降機設置メンバーは、全員が驚いた。


「これ、凄くおいしいよ!シノブ」


二つに割り、湯気の立つ肉まんを食べたシャルルが、まずは絶賛する。


「ええ、暖かくてふんわりして、とてもおいしいです!」


ミルキィも気に入ったようだ。


「これは中々いけますな」

「ええ、とてもおいしゅうございますよ!」


年配のアルフレッドやキンバリーにも気に入られたようだ。


「こりゃ、うまいっ!うまいぜ!

これを迷宮で売ろうってのか!そりゃいいぜ!

うまい上に、迷宮に入る前にちょいと腹に入れるには丁度いい!」


体育会系のザイドリックさんにも受けている。


「ちょっと!シノブさん!

プリンもだけど、これも町で売りなさいよ!

迷宮だけだなんて勿体無いわ!」

「私もそう思うわ。とてもおいしい」


エトワールさんとシルビアさんも絶賛だ。


「これはうまいですな!」

「ええ、本当に!」


ゼルさんとマドレーヌさんも気にいってくれたようだ。


「御主人様!おいしいですニャ!」

「うむ、中々に美味ニャ」


ケット・シー的にも味は良いらしく、ペロンとバロンの受けも良い。


「おいおい!シノブ君!

こんなモンを売られちゃ、ウチでは食べ物が売れなくなっちまうじゃないか!

ちょっとは手加減してくれよ!」


カベーロスさんは自分の店が心配になるほどだったようだ。


このように全員に大評判だったのだ。

まずいという人は一人もいなかった。

まあ、21世紀の地球でも肉まんは大人気で、嫌いな人はほとんどいないからね。

マギアマッスルさんなどは、よほど気に入ったのか、3つも食べていた。

しかし、中でも一番感銘を受けたのはポリーナだった。


「これは凄いです!

柔らかくて、あたたかくて、とてもおいしいです!

こんな食べ物は食べた事がありません!

私、これを自分で作れるようになりたいです!

そしていつか私の村でもお店を出したいです!

シノブさん!これの作り方を是非教えてください!」

「うん、大丈夫だよ、教えてあげる」


どの道、これを店で売るとなれば、俺一人で作る訳にもいかない。

俺はポリーナだけでなく、キンバリーを初めとして、エレノア、ミルキィ、ガルド、ラピーダ、ヴェルダに肉まんの作り方を教えた。


家では竈で火をおこして作ったが、迷宮では火気厳禁だ。

迷宮で火を起こすと危険だし、煙が充満してしまうので、発熱タロスを使う事にした。

何段も蒸篭を重ねて、その一番下に水を張った鍋を置いて、その中に発熱タロスを入れる。

発熱タロスによって鍋の水は沸騰し、蒸気となる。

そして時間がくれば、発熱タロスは消滅する。

これで蒸す事が出来た。


肉や野菜、小麦粉などの材料の確保は、カベーロスさんが協力してくれた。

仕入れるのに良い店を紹介してくれたのだ。

俺はてっきり紹介料を取られるかと思ったが、「今回の義務ミッションに加えてくれた礼だと思ってくれ」との事で、それはなしだった。

中々義理堅い商売人のようだ。


調理の方はそれで解決したが、次の問題は皿と飲み物の入れ物だった。

使い捨てが理想なのだが、この世界には紙皿や紙コップなどはないのだ。

かと言って、木や金属で作った物を使っていては、洗う手間が大変だ。

なにしろ街の食堂と違って、ここでは水の制限があるのだ。

俺は試しに紙を折り紙にして紙コップを作ってみたが、この世界の紙では少々時間が経つと、すぐに水が染み出て来てしまった。

俺の持っていた、神様からもらったノートや折り紙を使うと長時間持つのだが、もちろんそれでは数に制限があるので、使う訳にもいかない。

もっともエレノアたちは俺が紙一枚でコップを作り上げたのに少々驚いていた。

俺は調子に乗って、折り紙で三方さんぼうつる蝸牛かたつむりを折ってみると、さらに皆は驚いた。

どうやらこの世界に折り紙文化はないようだ。

うん、これはこれで、いつか何かの役に立ちそうだな?


結局、これもタロスで解決をした。

俺かエレノアが皿型タロスとコップ型タロスを家で大量に作って、店に運び込む事にしたのだ。

もちろん俺たちが店にいる時はそこで作る。

これならば使い捨てに出来るし、時間が来れば消えるので、ゴミにもならない。

少々贅沢な魔法の使い方だが、迷宮の食器としては理想的だ。

いずれは何か別の解決策を考えるつもりだが、当分はこれで十分だ。


そして俺たちは川から迷宮の近くまで水道も引いていた。

蒸すのに水は必要だったし、飲み物を作るにも水は必要だが、いくら何でも毎日町から持ってくるには大仕事になる。

川から迷宮の近くまで水を引くのも、中々の大工事だったが、エレノアやポリーナが草原に水道を引いた事があったので、その指示に従って、大量の工事タロスに物を言わせて作り上げた。

迷宮の工事をする初日からエレノアが工事タロスを出して、近くの川から水道を掘っていたのだ。

俺は自分の家と同じ構造の浄水器を作り、迷宮の中での水の需要に応えられるようにした。

これで無制限とは言えないが、調理に必要な位の水は確保できた。

その結果、北東の迷宮広場では飲み物も売る事が出来た。

南西の迷宮広場では、組合の出店が干し肉と乾パンを売っているが、飲み物は自家調達だ。

自分で飲み物を迷宮の中で飲みつくしてしまうと、町に帰るまでは何も飲めないので、迷宮の中で飲み物が飲めるのは誰もが大歓迎のようだ。

さらに迷宮の横に水洗トイレも十基ほど作り、下水に流せるようにしたので、そちらの評判も上々だ。


こうして苦労して考えて、水周りの設備も整えた努力もあって、肉まんは飛ぶように売れた。

一個大銅貨5枚と少々高めの金額設定だったが、それを物ともせずに売れまくったのだ!

火気厳禁な迷宮の中で暖かい食べ物を作って売っているのも不思議がられて、それが一役買ったようだ。

「魔法食堂」の名は伊達ではない。

一応人気商品の自信はあったが、初日は恐る恐る売り始めた。

しかし瞬く間に用意した分は売り切れて、すぐに次を蒸し始める事になった。

蒸篭は予備も含めて30個も用意しておいたのだが、すぐにその30個はフル稼働となった。

中華まんは蒸しあがるのに時間がかかるので、初日は結構お客を待たせる結果になってしまった。

俺は慌ててその日の内に、蒸篭を作ってもらった街の木工細工屋に増産を頼んだくらいだ。


 飲み物も売れる。

普通、迷宮で飲み物は売っていないので、大人気だ。

水がコップ1杯銅貨3枚、持参した水筒には大きさを問わず、大銅貨2枚で水を入れる、レモネードとハーブ茶は1杯大銅貨2枚だ。


そしてもちろん昇降機も好評だ。

組合でも俺たちが短期間で2基も昇降機を設置したので驚いたようだ。

しかもその昇降機は、今まで以上の優れものだ。

南西の昇降機と同じで、自動的に人を感知して、階数を言えば、そこに移動する機能は当然として、その他に認証機能や籠の中に広告を設置できるようにもした。

認証機能は昇降機ジャベックの内側にも「目」があって、それで中の人間の登録証を認識して、レベルや等級の低い人間を深い階層などでは出さないようにする事も可能だ。

そして籠の中の壁には壁紙などを取り付けられるようになっていて、組合や協会の告知や広告を出す事も出来る。

それに俺は地球のエレベーターのように、各階の案内と、出てくる魔物の種類なども、昇降機の中に表示しておいた。

同じ物を各階の安全地帯にも大きく書いて掲示板として置いたのも分かり易く、評判が良いようだ。

さらに上下の移動速度も南西の物より速く、そこも評判が良い。


グレゴールさんが俺たちの所に挨拶に来た。


「いやはや、これは凄いですね?

こんな短期間で昇降機を2基も設置していただいた上に、あのような機能までついているとは驚きです。

それに移動速度が南西の物より遥かに早いです。

しかもこのような大繁盛の店まで作ってしまうとは・・・

やはりあなた方に任せて大正解だったようです」


グレゴールさんも組合の義務が果たせて喜んでいるようだ。

俺もうなずいて返事をする。


「はい、我々も今回は色々と勉強になりました」

「ええ、こちらとしても大変助かりました。

今後ともよろしくお願いいたします」

「こちらこそ」


とにもかくにも店も含めて今回のミッションは大成功だ。

俺はそれを昇降機設置関係者に報告すると、同時にミッション完了記念のパーティの開催も知らせた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ