168 義務ミッション
組合から知らせが届いた。
義務ミッションの知らせだ!
いよいよ組合員としての義務を果たさなければならない。
知らせには義務ミッションには2種類あって、個人義務ミッションと集団義務ミッションがあるそうだ。
個人義務ミッションは各個人ごとにするミッションで、集団義務ミッションというのは登録したパーティで一つの義務ミッションをするそうだ。
各組合員は、どちらかを選べるらしい。
俺は家にいる組合員登録している人間を全員呼んで聞いてみた。
「どうする?みんな?
各個人で義務ミッションをするかい?
それとも我々全員で組んで、集団義務ミッションをするかい?」
「う~ん、どっちもどういう事をするのかわからないと何とも言えないな」
「そうですね、私も同感です」
シャルルとポリーナは決めかねているようだ。
まあ、無理はない。
「私は一人でするよりも御主人様と一緒にしたいです!」
うん、ミルキィはそうだろうな。
少なくともミルキィと俺は組むか?
「私も御主人様とミッションをしようと思います。
それにガルドとラピーダも一緒の方が面倒はないでしょう」
「そうだね」
エレノアも俺と一緒のようだ。
ガルドやラピーダも準組合員として登録してあるので、義務ミッションは生じる。
しかし当然、ジャベックだけでやらせる訳にはいかないので、必然的に最低でも所有者である俺と一緒という事になる。
そうなると、少なくとも俺とエレノア、ミルキィ、ガルド、ラピーダは一緒と言う事になる。
するとシャルルとポリーナも同行を望む。
「そうなると僕らも一緒の方がいいんじゃないかな?」
「そうですね、その方が良いと思います。
どちらにしても初めてでよくわかりませんし」
どうやら全員で集団義務ミッションをする事になりそうだ。
とりあえず俺たちは話を聞くために組合に行く事にした。
「まあ、ともかく組合に行って話しを聞いてみるかい?」
「ええ、そうですね」
エレノアが賛同すると全員がうなずく。
組合につくと俺がアレクシアさんに話しかける。
「こんにちわ、アレクシアさん」
「あら、こんにちは、シノブさん」
「義務ミッションの事で連絡があったのでお話を伺いたいのですが、どこへ行けば良いのでしょうか?」
「それでしたら私も話を聞いております。
組合長室の方へ御案内しますね」
「え?組合長室?」
「ええ、組合長が直々に義務ミッションの事をお話ししたいと言っておりますわ」
組合長が直々とはどんな義務ミッションなのだろうか?
「こんにちは、グレゴールさん」
「おお、これはシノブさんと皆様方!
ようこそ、いらっしゃいました」
「ええ、義務ミッションの事で」
「そうですか?
まずはそちらへお座りください」
俺たちが座ると、グレゴールさんが話し始める。
「さて、皆さん、御存知かと思いますが、義務ミッションには2種類あり、どちらかを選べます。
それは個別にミッションをする場合と、複数の集団でミッションを行う集団ミッションです。
皆さんはどちらをお選びになりますか?」
「内容にもよりますが、出来れば一応この全員で集団ミッションを受けたいのですが?」
「それはこちらとしても助かります。
実はうちでもそういう前提でミッションを考えさせていただいたので」
「なるほど、それでどういうミッションなのでしょう」
「はい、それは「昇降機設置」ミッションです」
昇降機設置?
昇降機って、あの迷宮にあるエレベーターの事だよな?
あれを俺たちで設置するって事か?
「昇降機設置って・・・迷宮にですか?」
「ええ、その通りです。
正確にはロナバール北東の迷宮の1階から15階までの昇降機設置作業ですね」
あの迷宮に昇降機を設置するのか!
確かあの迷宮の最深部は15階のはずだから、一階から最深部まで、全階層を貫通した昇降機を設置しろという事か?
俺たち一同が今一つ理解しないでいる中で、唯一エレノアが驚いて問いただす。
「あの迷宮に昇降機設置ですか?
それは難易度的にはアレナック等級か、オリハルコン等級のミッションのように思えますが?」
そうか?それはそんなに難しい事なのか?
そりゃ、迷宮にエレベーターを設置するんだもん、確かに大変だよなぁ・・
エレノアの言葉にグレゴールさんがうなずく。
「おっしゃる通り、これはかなり困難なミッションで、本来ならばオリハルコン等級のミッションとなります。
しかしシノブさんは等級は現在、上黄金ですが、実質オリハルコン等級で、エレノアさんに至っては、私と同じゴルドハルコン等級です。
また、もしこのメンバーで他の集団義務ミッションを行う場合、あまりにもレベルが散らばりすぎているのです。
例えばドラゴン討伐などを依頼した場合、エレノアさんは単独でも可能でしょうが、シノブさんでギリギリ、他の方は身を守るので精一杯か、下手をすると死んでしまう可能性すらあります。
それに対してこのミッションならば、それぞれの階層の設置を各レベルの人々で対応可能な訳です。
そして全体をシノブさんとエレノアさんで統括していただければ、ミッション遂行可能と組合としては判断しました。
確かに上黄金と白銀の集団としては、非常に破格のミッションだと思います。
そこで組合としては、もしこのミッションを受けていただけるならば、3年分のミッションと換算させていただいて、来年と再来年の義務ミッションは免除しても構わないという事になりました」
「なるほど・・・」
俺がその説明を聞いて考え込んでいると、エレノアが質問をする。
「このミッションを私たちが引き受けなかった場合はどうなりますか?」
「もちろん、その場合は他の義務ミッションをしていただく事になりますが、今ご説明した通り、シノブさんたちは等級はともかく、レベルの散らばりが大きすぎるので、個別ミッションになるか、2つか3つの集団に分けられてのミッションとなります」
「このミッション自体はどうなりますか?」
「しばらく凍結ですね、他に実行できそうな方々はいないので」
そのグレゴールさんの答えを聞いて俺は皆に尋ねる。
「なるほど・・・みんな、どう思う?」
「正直、僕は義務ミッションは初めてだから見当がつかないよ。
だから判断はシノブとエレノア先生に任せるよ」
「私もそうです」
「私は・・・御主人様と一緒に義務ミッションが出来れば何でも良いです」
・・・つまり、俺とエレノア次第という事か?
しかし俺も始めての事だから、正直判断がつかない。
どうやらここはエレノアの判断を頼るしかないようだ。
「どうかな?エレノア?このミッションは我々に出来るだろうか?」
「・・・そうですね。
確かに昇降機設置は難しい仕事ですが、ここにいる我々が力を合わせれば出来ない程ではないでしょう・・・
ただ十五階分となると、少々、手数が足りません。
ジャベックやタロスで補う事も可能ですが、もう少し人手があれば嬉しいですね」
「ではもう少し誰かを誘ってみるかい?」
「そうですね、もしそれが可能ならば、その方が良いです」
エレノアの助言に従って俺はグレゴールさんに聞いてみた。
「メンバーは増やしても別に構わないのでしょうか?」
「ええ、もちろんです。
これは非常に公共性の高いミッションですからね。
何人誘っていただいても結構です。
実際、200年ほど前に南西の迷宮の昇降機を設置した時は、組合員100人ほどで設置したと記録が残っております」
その数を聞いて俺は驚いた。
「え?100人ですか?」
「ええ、やはりかなり規模が大きな工事になりますからね。
かなり苦労したとも記録に残っております。
それに御存知のように南西の迷宮は北東よりもかなり難度が高いですからね。
しかし今回の北東の迷宮も南西よりも難度は低いとは言え、15階分です。
かなり困難な事は間違いありません。
ですから手伝っていただいた方々の3年分の義務ミッションにもいたします」
3年分の義務ミッションとはありがたいが、それだけ困難な事業という事でもあるだろう。
「なるほど、もしもう今年の義務ミッションを終えてしまっている人の場合はどうなりますか?」
「その場合は来年から3年分の義務ミッション免除とさせていただきます。
とにかく今回の物は困難かつ公共性の高いミッションですから。
かかる費用の方も書類を提出していただければ、こちらで負担させていただきます」
なるほど、必要経費は出してくれるので、こちらとしては基本的に人材と時間の問題という事か?
確かに迷宮に昇降機があるとないとでは大きな差だ。
費用も莫大な物になるだろう。
その事業を頼もうというのだから、実費の費用は出してもらわないとたまらない。
「では少々何人かに声をかけてみたいと思います。
その結果で受けるかどうかをお答えしたいのですが、よろしいでしょうか?」
「ええ、構いません。
うちとしては是非引き受けていただきたいので、精鋭の御仲間を集めて受けていただく事を望んでおります」
「わかりました。
なるべく御希望に添えるようにしたいと思います。
1週間以内にはお答えが出来ると思います」
「よろしくお願いします」
俺たちは組合長室を辞去すると、ハイエストに行って相談を始めた。
「どうかなエレノア?
我々だけでも出来ない事はないのかな?」
「そうですね。今の人数でも不可能ではないと思いますが、かなり困難で、時間がかかってしまうと思います。
やはり人数がもう少し増えれば、時間的にも楽になるでしょう」
「何人くらい?」
「今の我々が5人、ジャベックのガルド、ラピーダ、ヴェルダ、ロカージョを入れても9人です。
今回の昇降機設置は15階で、出来れば各階層にそれなりの判断力がある人間が欲しい所です。
どうしても人材が居なければ、浅層階はジャベックやタロスなどで監視させるにしても、中層階はやはりある程度判断力のある人間がいないと厳しいですね。
最低でも組合基準で言えば2級か、3級は欲しい所です。
それがあと最低でも5・6人、出来れば11人は欲しい所です」
「11人か・・・」
「はい、私か御主人様が全体を制御するとして、各階に責任を請け負う人間が一人ずつは欲しい所です。
つまり全部で16人ですね。
どうしても人数が足りないとなれば、私がジャベックを御用意も出来ますが」
正直俺も組合に入ってそれほど年数が経っている訳ではない。
まだほんの数ヶ月だ。
だから知り合いもそれほどいる訳でもない。
「さし当たって誘うとしたら誰が良いだろう?」
俺の質問に、ミルキィ、シャルル、ポリーナがそれぞれ考え込む。
「そうですねぇ・・・」
「残念だけど、ボクはここには誰も知り合いがいないしね」
「私もです」
まずは俺が二人ほど候補に上げる。
「男爵仮面とマギアマッスルさんはどうだろう?」
「ええ、あの御二人なら大丈夫だと思います」
俺の提案にエレノアがうなずく。
「あとシルビアさんとエトワールさんも誘いたいな」
「人材的には全く問題ないと思うのですが、あの方たちは魔法協会の仕事があるでしょうからわかりませんね」
「ああ、そうか・・・後はサイラスさんとザイドリックさんはどうかな?」
「そうですね、大丈夫だと思います」
俺のここでの知り合いはそんな物だ。
単に知っている人間ならまだいるが、俺の誘いに乗ってくれそうなのは、この程度か?
これでも全部でまだ6人か?
俺たちと足しても11人だ。
まだ満足できる人数ではないな?
とりあえず俺たちは家に帰って本格的に検討する事にした。




