163 ゴブリン退治
ポリーナとシャルルが初ミッションを始める。
まずはゴブリンキャプテンだ。
ゴブリンキャプテンはゴブリンの進化型魔物で、ゴブリン数十匹を手下にして森の奥や廃屋を根城にしている場合が多い。
今回の標的は森の廃屋を住処にしているようだ。
俺たちはミッションを要請した村の村長の案内で目的地へ向かう。
ポリーナは村で退治に使うと言って、村長に荒布で巻いてよく油の染みた松明を60本ほど用意してもらった。
それを自分で出したタロス2体に背負わせて運んでいる。
目的地に着くと村長が廃屋を指差す。
「あそこです。
あそこに奴らは巣食っています。
今の所、農作物や家畜程度の被害で済んでいますが、いずれ人間にも手を出すでしょう。
その前に退治していただきたいのです」
その言葉に俺がうなずいて答える。
「なるほど、では村の人などで、攫われた人などはいないですね?」
「はい、大丈夫です」
「わかりました。
それなら気兼ねなく思い切り出来るので安心です」
「ええ、宜しくお願いします」
村長の言葉に全員がうなずく。
状況を理解した所で、俺がポリーナに質問する。
「どうする?
僕たちは見学で大丈夫かい?
必要なら手助けをするけど?」
「いえ、私一人で大丈夫です。
皆さんは私の行動を見て、後で反省点を聞かせてください」
「わかった。では気をつけてね」
「はい、ではいきます」
いよいよゴブリン退治の始まりだ。
ポリーナが呪文を唱えると数百体のタロスが出現して、小屋を三重に囲む。
相手の住処が小さい場所の場合はこれが有効だ。
これでほぼゴブリンたちに逃げる隙は無い。
次にポリーナは用意していた松明60本に一気に火をつける。
油が染みているために良く燃える。
そして30体ほどのタロスを生成して、そのタロスの両肩にそれぞれ松明を自分たちで差しこませていく。
このタロスの両肩には松明を差し込める穴が空いていて、そこに松明を入れるのだ。
そしてポリーナは両肩に松明をつけたタロスたちを中に突入させる!
なるほど、ゴブリンは火や照明を嫌う。
こうして両肩に松明を装備させたタロスを突入させて、火と煙で燻り出す訳か?
しかもこれならタロスの両手が使える。
中々良い戦法だ。
俺がそんな事を考えていると、途端に中では騒ぎが起こり、戦闘が始まったようだ。
何匹かのゴブリンが出てきて、周囲を囲んでいるタロスに倒される。
やがてしばらくすると静かになったので、俺たちはポリーナの後について廃屋の中に入っていく。
そこではゴブリンたちが全滅していた。
標的のゴブリンキャプテンも息絶えている。
いくらポリーナの戦闘タロスが弱いと言っても、そのレベルは100だ。
それが30体も相手ではゴブリンやゴブリンキャプテン程度ではひとたまりもなかっただろう。
これでミッションは終了だ。
案内して来た村長に書類にミッション終了のサインをもらってミッション完了だ。
ポリーナがホッと一安心して俺たちに話す。
「うまく行って良かったです」
「うん、とても上手だったよ」
「ええ、初めてとは思えないほどです」
俺とエレノアが褒めるとポリーナも嬉しそうに話す。
「ありがとうございます。
これもアルマン大御爺様の退治法のおかげです。
私のような初心者でもこの本に書いてある方法どおりにすれば、ゴブリン退治を安全で簡単に出来る証明だと思います」
「そうだね」
白銀等級で散々迷宮で魔物を倒す訓練をしてきた人間に、誰でも簡単と言われても違和感があるが、まあ間違ってはいないので良いだろう。
しかしゴブリンキング討伐をした事がある娘なのに、ゴブリン退治が初めてって、何だか順番がめちゃくちゃだな?
まあ、いいか?
次はメイジゴブリンだ。
これは俺も経験があるので、ポリーナに話してみた。
「ねえ、今度は僕がやってみてもいいかな?
エレノア式のゴブリン退治法をポリーナやシャルルに見せてみたいんだ」
「はい、それは私も是非見学したいです。
よろしくお願いします」
「うん、僕も見てみたいな」
「うん、じゃあ二人ともしっかりと見ていてね」
メイジゴブリンは大きめの屋敷に巣食っていた。
どうやらこれはどこかの金持ちの別荘のような物が廃棄された物のようだ。
村の話によると何人かの娘が攫われているらしいので、俺が初めてゴブリン退治をした時と同じように、戦闘タロス、発光タロス、救出タロスの3種類を出して、屋敷の中へ突入させた。
例によって、救出された娘たちをエレノアとミルキィが手当てする。
最後に中の確認をしてメイジゴブリン退治は終わった。
俺がミッションを終わらせると、ポリーナが興奮して話す。
「凄いです!
高祖父の方法ですと松明が大量に必要ですが、この方法なら高位の魔法使いなら何も道具が無くても可能ですね!
私は是非この方法も本に書きたいと思います!」
「そうだね、僕も驚いたよ」
シャルルも驚いて話すが、俺が首を横に振って答える。
「いや、中に助ける人がいる場合はこの方法が良いけど、単純に中の連中を燻り出すには、やはりさっきポリーナがやった方法の方が良いんじゃないかな?」
俺の言葉にエレノアも賛同する。
「そうですね、私も御主人様の意見に賛成です。
これは場合によって使い分ける物で、その事もポリーナの書く本には書いておいた方が良いでしょう」
「はい、そうですね」
次のメイジゴブリンはシャルルの番だった。
今度は人質がいない様子だったが、シャルルは道具なしの方法を試してみたいと言って、エレノア式退治法でゴブリンを相手にしてみる事にした。
俺がやったのと同じように出入り口を塞ぎ、中に戦闘タロスを突入させて、中にいるゴブリンを殲滅した。
それはあっさりと成功して、シャルルの初ミッションは完了となった。
ここまでは簡単だった。
この程度だったら五級か六級程度の組合員でも数人いれば何とか出来るだろう。
そして次は中位ゴブリンのドルイドとソーサラーだ。
この辺になると、中級者である四級か三級以上の組合員が複数いないと難しいだろう。
「さて、次はいよいよゴブリンドルイドとソーサラーか。
とりあえずドルイドの方が近いからそっちに行ってみようか?」
「はい」
「そうだね」
全員で航空魔法で移動して現地に到着すると、俺が二人に聞く。
「今度はどっちがやる?」
「ドルイドが相手ならたくさんゴブリンタロスを出すだろうから僕がやってみて良いかな?」
基本的にゴブリンドルイドはタロスを大量に出し、ゴブリンソサーラーは中位攻撃呪文で攻撃をして来る。
タロスを大量に出す相手なら、ゴーレム使いとしてシャルルも戦っておいてみたいのだろう。
シャルルの答えにポリーナも順番を譲る。
「ええ、どうぞ、私は次のソーサラーを相手にしてみます。
少々実験してみたい事がいくつかあるので」
「わかった、じゃあ先にやらせてもらうよ」
こうしてシャルルがゴブリンドルイドを倒し始める。
予想通り、ゴブリンドルイドは大量のゴブリンタロスを出すが、シャルルはそれを上回るタロスを出し、量でゴブリンドルイドを圧倒した。
圧倒的な物量で完勝したシャルルだったが、本人は少々反省したようだった。
「いやあ、ちょっと量に頼りすぎて、作戦が疎かになっちゃったかな?」
考え込むシャルルに俺やエレノア、ポリーナが助言する。
「いや、戦いは数さ、特にゴブリンみたいな単純な奴ら相手だったら、単なる力押しで良いと思うよ?」
「そうですね、同じゴブリンでもウイザード級以上ともなると、綿密な作戦が必要となるでしょうが、ドルイド程度まででしたら数で戦うので十分だと思います」
「私もそう思います」
「そうだね」
みんなの意見にシャルルも納得した様子だ。
次はいよいよ最後のゴブリンソーサラーだ。
しかしその戦いの前にポリーナが俺たちに説明を始めた。




