155 シャルルとポリーナの訓練
2週間に渡るノーザンシティの滞在期間も終わり、いよいよロナバールに帰る事となった。
俺とエレノアがユーリウスさんに別れの挨拶をする。
「それではエレノア先生、シノブさん、どうもありがとうございました」
「いいえ、こちらも有意義な時間が過ごせて良かったです」
「ええ、また機会があったら是非」
「彼らの事もよろしくお願いします」
「はい、大丈夫です。
ユーリウスさんも、もしこちらで何か動きがあったら教えてください」
「承知しました」
ロナバールに帰った俺はシャルルたちと話していた。
「やあ、シャルル、調子はどうだい?」
「ああ、お蔭様でうまく行っているよ。
もう随分レベルも上がった」
「私もです」
ポリーナも嬉しそうに話す。
「よし、だったらシャルル、今日から俺と一緒に訓練をしようぜ!」
「訓練?」
「ああ、迷宮に行って、もっとお前のレベルをあげるのさ」
「それは構わないけど、僕の今のレベルは、君とじゃ比較にならないよ?」
「だから特訓するんだよ!
俺と一緒に迷宮に行けば、お前ならすぐにレベル100くらいにはなれるさ。
そうすればどこにだっていけるさ」
「うん、そうだね」
「私も頑張ります!」
二人が同意したので、俺は二つの班に分ける。
「では班を分けて行動をしよう。
俺とシャルルとガルド、ポリーナとミルキィとラピーダとヴェルダでそれぞれ特訓をしよう。
その方がレベルがあがるのも早いし効率も良い。
その間にエレノアはオーベルさんの特訓をすればいい」
「なるほど」
「そうですね。
私もそれがよろしいかと思います」
エレノアも賛成のようなので、俺たちはその3班に分かれて訓練をする事にする。
「よし、決まりだ!それじゃ早速明日から特訓だ!」
翌日から俺とシャルルとガルド、そしてミルキィとポリーナ、ラピーダとヴェルダの7人で迷宮に訓練に行った。
特訓のために、いきなりロナバール南西の迷宮だ。
シャルルは正体を隠すために、かつてのエレノアのようにフードを被り、幻惑魔法をかけている。
迷宮に入るとシャルルが俺に尋ねる。
「この迷宮って、レベルはどれ位なの?」
「一番下でも30から」
「レベル30か、まあもちろんそれ位なら大丈夫だけど・・・」
「何言ってるのさ、今から行くのはここの地下9階、まずはレベル150位の場所だぞ」
俺の言葉にシャルルが慌てる。
「え?レベル150?無理無理!そんな場所行ったら僕、死んじゃうよ!」
「大丈夫、俺たちに任せておけって!
ラピーダ!ヴェルダ!お前たちはポリーナを守るんだぞ!」
「かしこまりました、御主人様」
「お任せください」
「それじゃミルキィ、そっちのチームは任せたからね?」
「はい、大丈夫です」
ミルキィはポリーナとラピーダ、ヴェルダを連れて迷宮で訓練を始める。
俺たちは俺とシャルルとガルドの三人だ。
「ほら、これで大丈夫だろ?」
「本当に大丈夫?」
「ああ、じゃあ行くぞ」
「うん」
「そういえば名前は何にしたんだい?」
「ああ、フレイジオ・ノーベルにしておいたよ」
「なるほど、フレイジオというのは?」
「それは僕が生まれた時に父が僕の名前をシャルルにするか、フレイジオにするか悩んだそうだ。
ノーベルは母方の姓だよ」
「なるほど、じゃあ行くか?フレイジオ?」
「うん」
迷宮に入り、昇降機で一気に九階へと行く。
しかも今日は魔物の鈴をつけて歩き出す。
途端にグリフォンが出てくるが、俺とガルドが瞬殺する。
「うわ、僕いきなりレベルが上がったよ?」
「いくつ上がった?」
「え~と?2も上がって、レベル75になっているよ?」
「よし、じゃあこの調子でガンガン行くぞ!」
今回は速攻でレベル上げを目的にしているので、まずは容赦なく魔物を倒す。
何しろ、魔物の鈴をつけているので、魔物は数歩ごとにガンガン出てくる。
半日もしないうちに、シャルルのレベルは85まで上がった。
「凄いよ!僕のレベル、もう85だよ?信じられない位だ!」
「まあ、俺たちが一緒で、問答無用で魔物を倒しているからな。
それに普通は戦闘訓練も平行してやるんだけど、お前の場合はまずはとにかくレベルを上げる事を目的としているからな」
「それでいいの?」
「ああ、お前の場合はゴーレム使いになるのが目的なんだからな。
使役物体魔法はお前も知っての通り、魔力を大量に消耗するからな。
そのためにはまずはレベルを上げなきゃ話にならない。
もちろん、ゴレーム使いだって多少は戦闘をできなきゃならないけど、戦闘訓練は後ですればいい。
とにかくまずはレベル上げだ」
「そうなんだ、それにしても、シノブもガルドも本当に凄いんだねぇ」
「大丈夫だよ。
シャルルもこの勢いでレベル上げをすれば、明日にはレベル100を越えるからな。
そうしたら本格的な使役物体魔法訓練を始めればいい」
「ええ?明日にレベル100?本当?」
「ああ、だから今日もこれからガンガン行くぞ!
お前は見ているだけでいいからな」
「うん、わかった」
こうしてシャルルはその日の内にレベル80を越えて、翌日には予定通り、100を超えていた。
「本当にレベル100を越えちゃったよ!」
「今お前の魔力量はいくつになった?」
「えっと・・・127000位かな・・・信じられないよ」
その返事を聞いてエレノアがうなずく。
「それだけあれば、ゴーレムの訓練に入っても問題はないでしょう。
明日からはタロスの訓練を始めましょう」
「はい、お願いします」
流石に正規の魔道士な上にシャルルは才能があって、数日ほどで、タロスを数千体出せるようになった。
「信じられない・・・たったの2週間程度でこんな事が出来るようになるなんて・・・」
「それだけお前に才能があったって事さ」
「いや、そんな事無いでしょ?
みんなエレノア先生や、シノブやミルキィ、それにガルドやラピーダのおかげさ」
「それじゃ実践訓練を兼ねて、また迷宮に行こうか?」
「そうだね」
再び迷宮に向かった俺たちは、今度はシャルルを中心に戦いを組み立てる。
「よし、シャルル!基本的に戦闘はお前に任せるぞ!
俺たちはあくまで補佐だと思ってくれ」
「うん、わかったよ」
しばらくは午前中はシャルルが戦闘を組み立て、午後には単純にレベルを上げる作業を続けた。
三日ほどすると、シャルルも戦闘に慣れてきた。
レベルも120になったので、俺が提案をする。
「そろそろ、アースフィア広域総合組合で登録していいんじゃないかな?」
「そうですね、しかしここまで来れば、二人とも150まで上げてしまいましょう。
そうすればシャルルやポリーナも白銀等級になれますから。
二人の今後の事を考えれば、そこまで上げておいた方が良いでしょう」
そうだった。
シャルルはこの後で、ノーザンシティへ戻って、父の仇を取らねばならないのだ。
ポリーナもこの後で高祖父との約束でゴブリンキラーになるのだ。
そのためには確かに二人とも白銀等級程度にしておいた方が良いだろう。
「ええ、それにミルキィも150を超えたことですし、私達も上のランクになりましょう」
「うん、そうしよう」
俺たちは組合に近日中に黄金等級の昇級試験を二人受けに行く事、そしておそらくもう二人が白銀等級の試験を受ける事も伝えておいた。
そして俺たちはさらに修行をして、オーベルさんがPTMを覚える頃にはシャルルのレベルを162にまで上げた。
ポリーナはレベル157だ。
オーベルさんはエレノアが毎日一対一で教えていたせいか、俺たちよりも早い3週間ほどでPTMを覚えてしまった。
流石は高等魔法学校の首席卒業者だ。
エレノアが最後の確認をする。
「PTMの確認はどうしますか?」
「それはメディシナーに戻ってやりますよ。
何と言ってもたくさん患者がいますからね」
「そうですか?」
「ええ、お蔭様でPTMを覚えた事だし、俺はメディシナーに帰りますよ。
グリーンリーフ先生、ありがとうございました」
「いいえ、これもオーベルの努力の結果ですよ。
レオニーやレオン、それにパラケルスによろしく」
「はい、それではまた。
そういえばシノブ君、時間が出来たらうちにもあの講義をしに来てくれよ?」
「はい、わかりました。
オーベルさんも色々とありがとうございました」
「ははっ!あの程度の事で良ければいつでも役に立つよ」
こうしてオーベルさんはメディシナーへと帰って行った。
迷宮でシャルルとポリーナの訓練も十分に出来たので、俺はエレノアと相談をする。
「ではそろそろ二人の登録に行くか?」
俺の意見にエレノアも賛成する。
「そうですね。
そろそろよろしいかと思います」
「そういえばポリーナ?ヴェルダの登録はどうする?」
ヴェルダの本来の持ち主はシャルルだが、ポリーナがそれを申し出て、ヴェルダをシャルルに返そうとした所、シャルルが高祖父の形見のようなヴェルダをポリーナから取り上げるなど出来ないと言って、固辞したのだ。
この事によってヴェルダは一応当分はポリーナの所有となった。
ただし、シャルルが18歳になった時の状況によってはどうなるかわからないので、その点はポリーナも納得はしているようだ。
「ガルドやラピーダは登録しているようですが、ヴェルダも組合に登録をした方が良いでしょうか?」
「いや、そうでもないな・・・」
確かにガルダとラピーダは準組合員として登録してあるが、それは俺の趣味みたいな物で、さほど意味はない。
「登録しないと何か不利になる事はありますか?」
「いや、それはまずないと思う。
ジャベックを組合に登録するのは趣味みたいなもので、登録すると逆に色々と面倒な事が多くなると思うから」
「ではヴェルダの登録はやめておきましょう」
「うん、それで良いと思うよ。
人間と違って、ジャベックは登録してもあまり利点はないし、それに登録しようと思えばすぐにできるしね」
「わかりました」
ポリーナも納得したようなので、ヴェルダは登録はしない事となった。
そして新規登録と等級を上げるべく、俺たちは組合本部へと向かった。
本編の今年の話はこれで終わりです。
後は多少書き足りてない部分を書き足そうかと思います。
外伝の方はもう少々書く予定です。
年末年始は少々休んで、次回は1月7日より再開を考えているので、よろしくお願いします。




