134 表彰式での事件
午後になると、厳かに表彰式が始まる。
まずは芸術部門の表彰からだ。
優勝はユーリウスさんで、準優勝はエトワールさんだ。
二人とも笑顔で観衆に答え、手を振る。
続いて戦闘部門の表彰だ。
優勝者や準優勝者たちが表彰されようとする瞬間だった。
ここで突然乱入者が現れた!
「待てっ!」
おや?あれは確か旗取り試合の準決勝で、ユーリウスさんに負けた選手ではないだろうか?
中々の術者だったが、相手が悪すぎた。
ユーリウスさんが出場していなければ、準優勝くらいはしても不思議のない選手だったが・・・
俺がそんな事を考えていると、その男がわめき散らす。
「こんな表彰式、納得できるか!
本当の優勝者はこの俺だ!
俺の真の実力を見せてやる!」
そう言って、いきなりタロスを出して表彰式の関係者を襲い始める。
その数、およそ数百体だ!
これだけの戦闘タロスを一気に出せるとは中々の術者だ。
その数百体の戦闘タロスが表彰された人たちを襲う。
すわ!これは大惨事か?と俺は一瞬思ったが、それは杞憂だった。
この男は騒ぎを起こすにしても、場所と状況が悪すぎた。
何と言っても今この場所はゴーレム大会の開催場所で、この男が襲っている相手はその戦闘ゴーレムの上位表彰者たちなのだ。
不意を突かれた関係者たちだったが、次の瞬間、ほぼ全員がタロスを出現させる。
この大会で表彰される人たちとなれば、当然の事ながら最低でも100体のタロスを出す事が出来る。
そんな魔法使いがこの表彰式には10人以上もいるのだ。
その数は全部で1千体以上はいるだろう。
もちろんユーリウスさんや、本来魔法協会の戦闘法務官であるエトワールさんも例外ではない。
その千体を超えるタロス軍が男の出した数百体のタロスを囲む。
広い競技場もタロスの山で埋め尽くされた。
これほど多種多様のタロスは俺も見るのは初めてだ。
「かかれ!」
ユーリウスさんの掛け声と共に彼の戦闘タロスが相手のタロスに襲い掛かる。
それを合図に他の人たちの出した圧倒的なタロス群が男の出したタロスに襲い掛かる。
競技場の中はいきなり先ほどの試合以上の戦場となった。
男がタロスを出した瞬間に立ち上がった俺だったが、状況を見ると、すぐに座りなおしてのんびりと飲み物を飲んで見学をし始めた。
ミルキィやガルド、ラピーダも俺に合わせて立ち上がったが、俺の様子を見ると、再びおとなしく座る。
エレノアやシルビアさんは最初から涼しい顔で状況の推移を見守っている。
そんな俺たちにクラウスが声をかける。
「シノブ先生たちはアレに参加しないの?」
「クラウス、アレに俺たちが参加する余地があると思うか?」
俺が競技場の中を見てクラウスに答える。
そこでは選手たちのタロスだけではなく、今や観客の魔法使いたちも参加して大騒ぎだ。
この競技場には現在数万人の観客がいる。
しかも観客にも俺たちのように魔法使いや魔道士たちがてんこ盛りだ。
何しろこの大会は本来「使役物体魔法の向上を考える大会」なのだ。
当然の事ながらこの場には魔法使いもたくさんいる。
この大会のために、ロナバールだけでなく、他の大都市からも来場しているのだ。
おそらく数千は下らないだろう。
ひょっとしたら1万人を超えているかも知れない。
その人数は間違いなく魔法師団一個分以上だ。
それこそ枡で量れるほどにいるだろう。
しかもゴーレム大会でただでさえテンションが上がりまくっていたその魔法使いたちが、ここぞとばかりに、火炎弾や氷結弾、雷撃などを放ち、乱入者のタロスを攻撃している。
中には槍型や剣型のタロスを生成して投擲している魔法使いもいるようだ。
雨霰のように競技場に降り注ぐ魔法の攻撃を見ると、クラウスも納得する。
「そうだね・・・」
「それよりもこの様子をよく見ておけ。
こんな凄い魔法戦はそうそうお目にかかれないぞ?」
「はい、先生」
俺がクラウスに言ったように、今や競技場は凄まじいまでの魔法戦闘場と化していた。
火炎呪文に凍結呪文、雷撃に爆裂呪文、使役物体呪文と何でもありだ!
その非常識なほどの魔法攻撃に対して、男は慌てて追加のタロスを出すが、当然の事ながら削られていく方がはるかに早い。
なまじ相手が数を出したので、攻撃側はさらにテンションが上がる。
完全に燃料投下状態だ。
「ヒャッホー!」
「今度こそ当ててやるぞ!」
「これでも喰らえ!」
「俺の紅蓮の炎を見せてやるぜ!」
「わしの雷撃に敵なぞいないわ!」
「私の冷凍魔法の冷たさを教えてあげるわ!」
「俺の投擲タロスを喰らえ!」
出遅れた連中が今度こそ乗り遅れてはならないとばかりに、追加されたタロスに攻撃を集中する。
その結果、削られる速度はさらに増した。
男の出したタロス1体に対して最低でも5・6個の魔法が当たり、中には20発以上もの魔法攻撃が当たっている物もある。
その上でユーリウスさんたち大会参加者が出したタロスが攻撃を加えているのだ!
さしものレベル100を誇る戦闘タロスの大群もたまった物ではない。
「そ、そんな・・・」
男はせいぜい大会参加者の数名を相手して撃滅すればよいとでも考えていたのだろう。
そうすれば自分の名を上げる事が出来ると・・・
しかし、その予想に反してこの反撃だ。
こんな事は想像もしていなかったのだろう。
そりゃそうだ。
自衛隊の全力射撃だって、ここまで凄くはないだろう。
もはや魔法の飽和攻撃だ。
俺もこんな光景を見るのは初めてだ。
先ほど以上に火炎弾あり、氷結、雷撃、爆裂、投擲と、もはや攻撃魔法の見本市のようだ。
こりゃ完全に祭り状態だな・・・
いや、確かにこれは祭りなんだけどもね・・・
相手が1千近くもいるタロスとはいえ、それに対しておそらくは万を超える魔法の攻撃だ。
男は一応防御魔法で防御幕も作ったようだが、そんな物は1秒も持たない。
圧倒的な攻撃魔法の量にパリーン!と防御幕が破壊される。
戦いは数だよ!兄貴・・・とはよく言ったものだ。
瞬く間に決着はつき、ものの1分もしないうちに男のタロスは追加分も含めて全滅する。
男は慌てて魔力回復薬を使って魔力を回復させるが、そんな物は焼け石に水だ。
多少魔力を回復させてタロスを出した所で、あっという間に魔法攻撃で倒される!
むしろ観客の魔法使いたちはまだ楽しめるとばかりに嬉々として魔法を男のタロスにぶつける!
何か自業自得とはいえ、見ててちょっと哀れになって来る位だ。
そのあまりの凄まじさに、ついに男の顔は恐怖に引きつり、絶叫する!
「ばっ!馬鹿な!
おのれ~!貴様ら!
くっ!こんなはずでは・・・魔王様~っ!」
そう叫ぶと、力尽きた男はバッタリとその場で倒れて、駆けつけた警備員に首に魔法封印をされて連行される。
これでこの男も魔法を使う事が出来なくなった。
しかし最後にこの男、気になる事を叫んでいたな?
「マオウサマ!」って何の事だ?
マオウって、魔王の事か?
この世界にも魔王っているのだろうか?
まあ、魔法がある世界なんだから魔王がいても不思議はないが・・・
男が倒れたので、ようやく観客たちの魔法攻撃も止まる。
一般の観客たちも楽しいショーが一つ余計に見れたとばかりに満足だ。
参加していた魔法使いたちなどに至っては、ストレス解消が出来たとばかりに大満足だ。
あらためて表彰式が再開されて、今度は無事に終わる。
そのまま閉会の宣言がされて、何事もなかったかのようにゴーレム大会は終わった。




