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74/82

その74

「あら?優君どうしたの?」


「こんな時間にすみません。奏いますか?」


「あら?奏さっき出掛けたけどてっきり優君の家に行っているのかと思ったけど?」

え?どこに行ったんだ奏‥


「じゃあ俺奏を探してくるんで失礼します」


「優君!奏のことお願いね」


「はい」

奏の母さん、俺が探すまで待ってくれるつもりだ、ありがとう。


どこ行ったんだ、奏、前にもこんなことあったよな。そうだ、あの橋の下か?

橋の下に行くがいない。やっぱここにはいないか。そうだ、花火大会の河川敷か!?

ここにもいないのか。

諦めて別の場所に向かおうとした時河川敷の川の近くで丸くうずくまって座ってる人影が目に飛び込んだ。


奏か?その人影に近付くとこちらに気付いたのか顔を上げた。

いた。

奏は泣いていて目が真っ赤になっているのが暗がりでも分かった。


「奏、ようやく見つけた」


「優、なんでここに?」


「奏を探してたんだ」


「私を?」


「ごめんなさい、私優に迷惑ばっかりかけて。つきまとって泣き喚いて重い女だよね?だから神城さんに奪られちゃうんだ」


「違うんだ、奏。俺が好きなのは奏だよ」


「じゃあどうして!?」

奏が大声で叫ぶ。あたりには奏の声が響いた。

俺はこれまでの事を奏に話した。奏は黙って聞いてくれた。神城さんにキスされた事は奏は一瞬戸惑っていたが俺の話を真剣に聞いてくれた。


「うぅ、グスンッ」

話を聞き終わり奏は泣き出した。やっぱり傷付けてしまったな。


「良かった‥‥」


「え?」


「優に嫌われたのかと思ったんだもん」


「違うんだ、奏を傷付けたくなくて‥でも俺のした事が逆に奏を傷付けてしまったのは事実だ。ごめん」


「ううん、いいの。優が私のためにそうしてくれたんだってわかったから」


「いっぱい傷付けてごめん、許してくれないか?奏」


「優、キスしてください」

俺はいきなり言われて戸惑ったが奏にキスをした。長いキスが終わり奏の顔を見るととびきりの笑顔だった。奏の心からの笑顔を久しぶりに見たような気がした俺は奏を強く抱きしめた。


「優、愛してる」



__________________________________


私は言いようのない寂しさとともに週末を迎えた。

優の家に行っても門前払いばかり。それでも行き続けた私は優にどう思われてるんだろう?考えるのも怖い。


岬ちゃんが家に遊びに来てくれたけど今の私は岬ちゃんの相手もすることが出来ない。岬ちゃんはそんな私を見かねて優の家に行った。

優を怒ったりしないでね、岬ちゃん。私が優に迷惑がかかる事をしてるんだから。


夕方になり私は家にいるとどうしようもなく寂しくなるので外に出ることにした。行くあてもなく歩いていると花火大会の時を思い出しそこに向かった。

あの時は楽しかったな、優も私も自然に笑えてて。


思い出すと急に悲しくなった。河川敷の川の近くで体を丸めた。季節的に寒くないはずなのに心の中はずっと寒い。


「苦しいよ、助けて」

声を殺して泣いていた。

どれくらい経っただろう?もう外は暗い。


するとこちらに向かってくる足音が聞こえた。もしかして不審者?いや、どっちかっていうと私が不審者?気になって顔を上げたら1番みたかった顔がそこにあった。


「奏ようやく見つけた」


「優、なんでここに?」

神城さんは?


「奏を探してたんだ」


「私を?」

どうして私なんか探してくれたの?

今までずっと避けてたのに‥


「ごめんなさい、私優に迷惑ばっかりかけて。つきまとって泣き喚いて重い女だよね?だから神城さんに奪られちゃうんだ」

自分で言っていて余計に悲しくなる。


「違うんだ、奏。俺が好きなのは奏だよ」


「じゃあどうして!?」

思わず大声になってしまった。優、そんな事言われても悲しくなるだけだよ、ならどうして神城さんといつも一緒なの?


すると優が今までの事を話してくれた。神城さんにキスされた事、録画されていて私にそれを知られないよう、悟られないようにしていたこと。それを知ったら私を傷付けてしまうから。だから私と出来るだけ距離を取ったんだと。

確かにショックだった。だけどそれは優のせいじゃない。こんなに私のために思い詰めてくれたんだと私はそんなことより優が私をまだ好きでいてくれていたことの方が嬉しかった。


「良かった‥‥」

無様だったっていい、優のことだったから傷付いてもここまで耐えられた。優以外のことだったら耐えられなかった。


「いっぱい傷付けてごめん、許してくれないか?奏」

もういいんだよ、優。


「キスしてください」

そのかわりまた前のようにお話したり一緒に笑ったりして側にいさせて。


優が私を強く抱きしめてくれた。

私は優と一緒にいていいんだ。


「優、愛してる」







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