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その73

結局何も奏に相談しないまま俺は迷走し続けた。

俺が奏に近付かないようにしても奏はいつも側にいようとしてくれた。最近は奏の泣きそうな顔ばかりしか見ていない。


土曜の午後俺は外にも出す部屋の中にいた。気が滅入る。


「優ちゃん、お客さんよー」

母さんが階段の下から言った。お客さんということは奏ではないのだろう。奏が来たなら母さんはそう言うしな。


玄関を開けると岬がいた。


「優先輩遊びに来ました!」

なんとなくだがホッとした。


「あれ〜?反応が違う、いつもならまたお前かとか言われると思ったんですけどー?」


「お前って俺をなんだと思ってるんだ?」


「まぁいいや、お邪魔しまーす」


「優ちゃんのお友達?」


「ああ、母さんこいつと初めてだもんな。」


「こいつとはなんですかぁ!?あたし椎名 岬です、優先輩の後輩やらせて貰ってます!」


「可愛い子じゃない、優ちゃん。奏ちゃん以外にもこんな可愛い女の子と知り合いなんて浮気はダメよ、奏ちゃん泣いちゃうんだから」


「そんなんじゃねぇよ、いちいちうるさい」

母さんに余計なことを言われる前に俺は岬と部屋に行った。


「まったく、今は遊ぶ気分じゃないんだけど?」


「そうでしょうね」


「は?」


「あたしさっき奏先輩のとこ行ってきましたもん」


「え?奏は?」


「物凄く落ち込んでましたよ?奏先輩。もう優先輩は自分のこと好きじゃないのかな?って思い詰めてましたもん」


「人の事言えないですけど優先輩最低ですよ!あんなに落ち込ませるなんて、何があったんですか?」


「お前には言われたくなかったけど‥」

もう1人で悩むのは限界で岬にこれまでの事を話す事にした。


「へぇ、そう言う事だったんですねぇ、神城先輩を見直しましたよ」


「なんでそうなるんだよ!?」


「いやぁ、参考になるなと」


「お前に話した俺がバカだった」


「うそうそ、冗談ですよ。それにバカなのは優先輩ですよ?そんなの奏先輩にすぐ話しちゃえば良かったじゃないですか、こんなにこじれる前に」


「いや、そんなことしたら奏を傷付けるだろ?」


「それが何か?」


「何かってお前‥」


「しちゃったことは仕方ないじゃないですか?今奏先輩にしてることの方が傷付けてると思いますけど?奏先輩は優先輩にそんなに避けられても側にいてくれようとしてるんですよね?」


そうだ、そうなんだ。済んだことでどうにも出来る事じゃあないが俺がこのまま奏を避ける事はもっと酷い事だとようやく気付いた。1人でバカみたいに悩んで結果事態をさらに悪くしているだけだった。奏はそれでも俺の側にいようとして俺がそっけない態度をとって傷付いてもそれでもだった。バカだった俺は。奏に言おう、そして謝ろう。


「岬、ありがとう。岬が今日来てくれてよかったよ」


「あ〜、あたし何やってんでしょうかねぇ。前は2人のことぶち壊してやろうと思ってたんですけど」

岬は照れたように笑った。


「奏先輩みたいにバカ健気で可愛い女の子なんて滅多にいないんですからちゃんと引き止めないと後悔しますよぉ?」


「ああ」


俺は岬に礼を言い、奏のもとに向かう。

気付けばあたりはもう暗くなっていた。




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