その54
奏は岬に怒鳴った後に風邪がぶり返したのか緊張が解けたのかへたり込んでしまった。
「奏もう帰ろう?風邪ひいて休んでて奏がいなかったら奏の両親心配するだろ?」
「うん、それより優の怪我の方が心配だよ?うちに来て」
「俺はいいよ。後はあいつだな」
岬を見つめるが余程奏に怒鳴られたのが堪えたのか下を向いてダンマリしている。
「おい、大したことにならなくて良かったな。これに懲りたらこれから少しはおとなしくてろよ?俺らは帰るけどお前も一応心配だから一緒にこいよ?」
すると岬は素直にゆっくり立ち上がり俺について来た。
フラフラな奏を歩かせるわけにはいかないのでおんぶする。
「優だって怪我してるのに私ばっかり悪いよ」
「これ以上何かあったらもう手に負えないから我慢してくれ」
土手を上がってコンビニに着く。
岬の家はコンビニの先なそうだ。5分くらい歩くともうすぐそこだからここまででいいと岬は言った。
「岬ちゃん、さっきは叩いてごめんなさい。だけど私のことはいいけど優をバカにしたりするのはやめて」
「わかったよ‥‥」
「お前も今日は散々だったな、まっすぐ帰れよ」
「お前じゃない!み・さ・きッ!」
「ああ、じゃあな『岬』」
「やっとそう呼んでくれた‥‥」
聞こえるか聞こえないかな声でそう言い岬は帰っていった。
逆方向ばかりに行ってたのですっかり奏の家から離れてしまった。少し急ごう。
今日はやけに体力使うことばかりだ。
「優、そんなに急がなくてもまだママも帰ってきてないと思うから大丈夫だよ?」
「はぁはぁ、そうなのか?じゃあもう少しゆっくり行くか」
少しペースを緩める。
「ねぇ優、優って凄いね」
「何が?」
「橋の下でのこと。スマホ持ってたって事は私の家に寄ってそれから探してその間に私たち絡まれてて優からしてみれば時間なんてほとんどなかったはずなのによく思いついたね?私だったらあんなに手際よく思いつかなかったかも」
「ああ、俺も不思議だよ。まぁ相手がすぐ退いてくれてよかったよ、本当は警察とか真っ先に呼んだ方が良かったんだろうけどそうなったら聴取とか取られて奏の両親とかに心配かけるだろ?ただ警察呼ぶかどうかの判断は1番迷ったんだ。あいつらが仮に捕まっても恨み買われて仕返しされたら結局また奏に危険が及ぶかもしれないし。だったら証拠だけ取ってあっちからも関わりたくないようにした方がいいのかもって思ってさ。でもそうならずに呼んでればよかったって後悔する可能性があったし‥‥もしそうなったら俺は、、」
言葉に詰まる。本当に危なかったのだ。
スマホを忘れていって良かった。それがなければ気付きもしなかった。
「優、本当にありがとう。そこまで考えてくれたんだね。私は例えどっちになっても優が助けに来てくれただけで涙が出るほど嬉しかったよ?優は私の王子様だよ」
チュッと奏が頬っぺたにキスしてくれた。そんな奏を見ていると無事で良かったと心から思うよ。
奏の家にようやく着いた。
「優、本当にいいの?怪我してるのに‥唇切れてるよ、大丈夫なの?うちに寄って手当てしなきゃ」
「いいよ、手当てするほどじゃないよ。それに奏はもう寝た方いい。ただでさえ無理してるんだから」
でもでもと言う奏を強引に部屋に連れて行きベッドで寝かせた。疲れたんだろう?案外すぐ寝てしまった。奏の頭を撫で奏の家を後にした。
俺も今日はかなり疲れた。早く帰って休もう。気づけばすっかり日が落ちていた。




