その53
奏の家にスマホを忘れていた事に気付き来た道を戻っていた。一応路地を探しながら来たがきっと奏の家だ。そして奏の家に着きインターホンを鳴らしたが奏が一向に出てこない事で何かおかしい事に気付いた。玄関に手を掛けるとガチャリと開いた。
おかしいぞ?
玄関に入って確認してみる。一応お邪魔しますと言って。
「奏、いないのか?」
大きめの声で言っても反応がない。
ふと玄関の隅に俺のスマホがあった。
嫌な予感がして奏の部屋に行った。いない。そこには奏のパジャマがあった。
脱いだ後のパジャマ、玄関に落ちていたスマホ。それだけでとてつもない嫌な予感がした。
俺が奏の家から出て戻ってきてスマホがない事に気付いてどこかで落としたのかあたりを探して来たが15分か20分くらいしか経ってない。
どこだ?誰かに連れ去られた?車か?だったらこの時間差は絶望的だ。
でもそうじゃないならまだ近くにいるはず!そう信じたい。
いたる場所を全速力で走っていた。コンビニを過ぎたあたりでようやく見つけた!いた!よかった!だけど状況がヤバいことがすぐわかった。男3人組に絡まれている。しかも前にデパートで絡んできた奴らに感じが似てる。まさか同じ奴らか?それに何故か岬といてそいつらに奏と岬が人気のない橋の下に連れて行かれる所だった。
どうすればいい?どうしたらスムーズに解決できる?多勢に無勢、俺が考えなしにのこのこ出てっても絶対岬と奏はただじゃすまない‥なんとかなってもあいつらに仕返しされたら意味がない。どうしたらいい?どうしたら‥
一刻の猶予もない俺の頭の中はパニック状態だった。ダメだ、もうこれしか思い付かない‥
意を決してヒロキに電話を掛ける。ヒロキは何事だと思い聞いてくるが余裕のない俺は「いいから言った通りにしろ」と強引に頼んだ。
後は現場証拠だ、本当は少しでも危ない目に合わせたくないがここだけで終わらせたらまた同じ事があるかもしれない。
俺も橋の下に行き物陰に隠れスマホの動画カメラを起動させてズームにする。
動画を撮る。もう充分だ、ダメだ見てられない。
そして突き付けると1発殴られはしたが効果があったのかそいつらは去って行った。
咄嗟に思いついた作戦だったけど相手がバカなのか俺の作戦が上手く効いたのか解決した。
殴られた俺を奏が涙を流して心配している。
「ごめんな、怖い思いさせて。丸く収めるのにああするしか思い付かなかったんだ、考える時間なくて」
「ううん、いいの!もうダメかと思ったの、でも優が助けてくれたッ!」
奏が泣きながら倒れてた俺の頭を起こし抱きしめる。
そして思い出した。
「あ、ヤバい!ヒロキに電話しなきゃ」
ヒロキに先程のことを謝り事情を説明した。ヒロキも心配してくれて無事だったことを喜んでくれた。
奏が少し落ち着いたところで呆然と一部始終を見ていた岬が口を開いた。
「はぁ〜、優先輩帰り際に1発殴られてダサいですねぇ」
その瞬間奏が岬に近寄りバチンッととても大きな音が響いた。
岬が奏に思いっきりビンタされたのだ。
岬はビックリして手を頬に当てる。俺も奏のフルスイングするようなビンタに驚いた。凄く痛そうで‥
「岬ちゃんッ!何があったかわかってるの!?優まで危険な目にあわせて!優にありがとう、ごめんなさいも言えないの!?」
岬は頬を押さえ下を向き小さくごめんなさいと呟いた。
明るかった外はすでにオレンジ色に染まっていた。




