その22
重ねていた唇をそっと話すと大きく目を見開いている奏がいた。
どうやら何があったのかさっぱり理解してないらしい。俺も同じだ。
涙を流しながら先程の困惑とは違う困惑で奏はこちらを見ている。
俺も何をしているんだろうと自分で自分の行動が訳がわからなかった、いや、本当は気付いているのかもしれない。
「優?」
先に口を開いたのは奏だった。
「あの?ゆ、優?」
「よかった、落ち着いた?」
するとまた奏の顔がぐしゃりと歪んで俺に抱き付いてきた。
え〜?振り出しに戻った?
「奏?大丈夫だよ?ほら、泣き止んでくれないと何処にも行けないだろう?」
「ううん、ごめんなさい、こんな時だけど嬉しくて、、うわぁぁあん、、」
10分くらい経っただろうか?ようやく奏は落ち着き始めてデパートの中に戻った。
もう観ようとしていた映画はとっくに始まり俺たちは諦めて今日の所は帰ろうって事になった。
「ごめんなさい、お金無駄にしちゃったね?」
「まぁいいよ、あんな状態じゃ何も頭に入らないだろ?」
「うん、本当にごめんなさい」
「どうする?今日はもう奏も自分の家に帰るか?」
「嫌!絶対一緒にいる!」
強く反論されてしまった。会話が途切れ2人とも無言で俺の家に着いてしまった。
時間はまだ午後の15時くらいだ。
「あ、あの、優。コーヒー入れるね?」
「う、うん。飲もうかな!」
コーヒーがカチャリとリビングのテーブルに置かれた。
コーヒーを飲もうとカップの取っ手に手をかけた時
「優、あのさっきのは‥‥‥えーと、その」
奏は言葉に詰まってしどろもどろになってしまっている。
「奏に泣いたままでいて欲しくなくて気付いたらキスしてた‥」
「何とかしたくて自分でもよくわからなかったんだ、ただ奏の泣いてる姿を見たらこっちも悲しくなってきて‥‥ごめん」
コーヒーを飲もうとしていた手は置かれリビングの時計の音だけ響いていた。




