第9話「閉幕」
前回のあらすじ。
最終兵器《妹》、見参!
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁわたしの1000万ドルがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
奈緒は、自慢の戦車を一刀両断され、泣き崩れる。
そして加藤は、妹の思わぬ登場の仕方に心底驚いていた。
「さ、沙霧!? お前、何でここに?」
「知らないのお兄ちゃん? 最近は《GPS》で、世界中のどこに居ても居場所がわかるんだよ」
「いつの間に俺のスマホとペアリングしたんだ……」
「さあ、帰ろう。今夜はシチューを作って皆んなで食べるんだから」
「ちょーっと待ったぁーー!」
言葉を遮ったのは《戦車乗り》奈緒。彼女は、戦車の残骸を抱き締めながら、宿敵沙霧の前に仁王立ちで構えた。
「妹だか何だか知らないけど、わたしの加藤くんを連れ帰そうなんてそうは行かないから! 」
「「誰が、お前のだ(貴女のですか」」
響子と智恵美が反応するが、奈緒はそれを無視する。
「後、何でわたしの戦車を斬ったんだし!」
「……奈緒さん。その戦車で、私の兄を吹き飛ばしてましたよね? 普通に危ないですし、こうするのは当然です。そもそも何故戦車がこんな所にあるんですか?」
「それはわたしの《アイデンテテー》だからよ!」
「アイデンテテー?」
「ふん、だ! 良いもん。この戦車がやられたところでわたしには……」
そう言いながら、奈緒は樹海の奥へ走っていきます。
しばらくすると、ゴトゴトと駆動音がしてきた。その後、樹海の奥地から新しい戦車が現れ、ハッチからは奈緒が顔を出していた。
「どうよ!(ドヤァ」
「いや、どうよと言われましても……」
「そしてこれがわたしの復讐の一撃! くらぇい!!」
奈緒は、戦車の砲塔から必死の一発を沙霧にぶちかました。
しかし、沙霧が戦車に腕を構えたその瞬間。戦車から放たれた砲弾は、まるで空間ごと凍りついたかのように突如空中でピタリと動きを止めた。
「……私はライトセイバーを極めし者。念道力で弾を止めるなど、造作もない事なのです」
「沙霧。お前完全にダー◯◯イダーだな……」
「言っておくけど、今日は引きずってでも連れて行くからね。お兄ちゃん、家のことなんにもしないんだからせめて顔くらい出して!」
有言実行。沙霧は、兄の首根っこを掴んで来た道を戻っていこうとする。
加藤はされるがままになっていた。
そこへ、2人の元に智恵美が話し掛けてきていた。
「沙霧さん沙霧さん」
「……智恵美さん、ですよね。どうされましたか?」
「--ワタクシも、お家にお邪魔してよろしいでしょうか?」
「彼奴、戦って勝てそうにないから妹に媚びるつもりか!?」
「なんて狡い女!」
こうなれば他の2人も黙ってはいられない。3人の彼女達は、自然と沙霧に付いていく事になった。
……彼女達が去った後、身を隠していた藤原は、瀕死の伊藤の所まで近づいた。
「おお、伊藤。大丈夫だったか?」
「ぐぅぅ。何とか、な……。それでお前に1つ聞きたいことがあるんだが、藤原」
「何だ?」
「オレ達、ここに来る意味あったのかなぁ???」
「……………………ふっ」
その問い掛けに、藤原はニヒルにほくそ笑む。
そして一言、こう呟いた。
「帰ろう」
それを聞いて、伊藤は黙って頷いた。
藤原は伊藤に手首の拘束を解いてもらい、富士の樹海を後にする。
「あ、そうだった。空中に固定した砲弾、解除しておかなきゃ」
「「えっ?」」
その瞬間、沙霧が念道力で止めていた砲弾が、本来の軌道に従うまま一直線に飛んだ。
その向こうには、藤原と伊藤がいた。
ドカァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!
「「ぎゃあああああああああああああああああああ!!!!」」
……そんなこんなで、加藤を救うために立ち上がった、男達の熱き冒険譚は、こうして幕を閉じたのであった。
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