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第7話「絶体絶命」

 見事加藤を救出する事が出来た藤原。大路島の犠牲を旨に、2人は富士の樹海の脱出を試みる。


「さて、そろそろ行くぞ藤原。ボサッとしてると響子と奈緒が戻ってきちま---」


 加藤が振り向き間際にそう言った次の瞬間。

 突如加藤は、《謎の大爆発》に晒され、遥か彼方まで吹き飛んでいった。


「えぇ!? か、かとおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」


 あまりに唐突な出来事に驚愕を隠せない藤原。

 その直後、何者かが藤原の後ろにそっと忍び寄り、両手首を拘束してきた。


「なっ!?」


 藤原は、巧みな手際で一瞬で手首を縛られる。

 見ると、藤原を拘束した人物は、加藤の彼女、《拷問使い》響子。

 そして、その響子にボロ雑巾のように引きずられていたのは、陽動作戦のため別行動をしていた伊藤だった。


「……へへ、済まねえ。ドジっちまった」

「伊藤!!」

「……こいつの仲間? お前も、私の邪魔をするつもりなのか?」


 響子の冷たい声が、藤原の二の足を止める。

 直後、後方で大地を踏みしめながら異様な存在感を放つ戦車が現れた。

 戦車のハッチから顔を出したのは、これまた加藤の彼女、《戦車乗り》奈緒である。


「出遅れたー! もう、いつの間にわたしの目を掻い潜ったのこいつら!?」

「そんな事より、お前の放った一撃で加藤が木っ端微塵に消し飛んだぞ」

「あー、こいつに当てるつもりだったんだけど手元が狂った……。まあでも、大丈夫! 加藤くんがこの程度で死ぬはずないって!」

「……なら良いんだが」


 人を殺めようとしたというのに平然としている。

 藤原は、天性の《シリアルキラー》を目にしたような顔をしながら、冷静に今の状況を分析する。

 2人いた仲間は既に戦闘不能。救助対象の加藤は御陀仏となり、先に拘束されたので逃走は不可能。まさに絶体絶命の大ピンチだ。


「ふ、ふふふ。……奈緒ちゃん? 何をしてくれるんですか? ワタクシと加藤ちゃんに嫉妬ですかー??」

「あ。生きてたわこいつ」

「死体女は、無駄にしぶといようだな。あの砲弾を受けて立つとは」


 爆発の煙の中から現れたのは、コーヒーを飲んで先程まで気絶していた智恵美。彼女は、一緒に居た加藤を抱きしめながら、響子と奈緒の元へ近づいて行く。


「加藤ちゃんは無事でしたよ? まあ、例え今ので死んだとしても、ワタクシが死霊術で蘇らせてあげますけどねー。そうすれば、浮気なんてせずにずっと一緒に……」

「加藤が死体女の操り人形だと? ふざけるな。加藤は私の物だ!」

「はぁ!? 加藤くんは私の物なんだけどぉ!」


 3人の女子がお互いに睨み合っている。

 藤原は、彼女達とは極力関わりたくないと思ったが、いずれはこちらを注目し出すだろうと予想し、何とか脱出の機会を伺うため会話を試みる事にした。会話をして、少しでも考える時間と情報を得るための作戦だ。


「き、君達が、加藤の彼女達か?」


 その言葉に先に反応したのは響子だった。彼女は、藤原を軽く一瞥してから、倒れた加藤の方を見やる。


「仮にも恋人の敬称を、複数の言い方で呼ばれるのは癪だが……そうだ。私は《森田 響子》。そこの節操無しとは恋人関係にある」


 それに続いて、他の彼女らも反応した。


「わたしは《和泉 奈緒》! 加藤くんの彼女だよ!」

「ワタクシは《夕陽ヶ丘 智恵美》。この偽物達とは違い、ワタクシこそが加藤くんの本当の婚約相手です」

「「あ?」」


 喧嘩腰の智恵美に対し、射抜くような激しい眼差しを向ける響子と奈緒。

 加藤の3人の彼女達は、なかなかに《ワイルド》で《クレイジー》に満ちていると、藤原はそう思うのだった。

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