第6話「大路島よ、永遠なれ」
《死霊術師》智恵美が生み出したゾンビ軍団に為す術無しの藤原達。一か八かの突撃に出た大路島だったが、迂闊にも敵の罠に嵌ってしまい御陀仏。大切な友人を失った藤原は、富士の樹海で叫び、智恵美に決死の特攻を仕掛けるのであった。
「いやー藤原くん。ボクは信じてましたよ。君ならきっと、助けに来てくれるって」
藤原は、大路島がAEON MALLで買ってきた《ピンセット》で加藤の拘束を解いた。
体の調子を確かめるため、加藤は軽くストレッチを始める。
「ホント、調子がいいよなぁ加藤は」
藤原は、決死の特攻が幸いして、何とか智恵美を倒す事が出来た。
智恵美を倒した後、ゾンビは糸が切れた人形のように倒れてしまった。おそらく、智恵美が意識を失った事で、死霊術が解けたのだろう。
「それにしても、まさか智恵美さんがコーヒー嫌いだったとは。偶然《コーヒー缶》を持っていたから、おかげで倒す事が出来たよ」p
「だな。じゃあ取り敢えず、気絶した智恵美は手首を拘束して俺がおぶる。藤原は道案内してくれ」
「その人連れて行くの?」
「当たり前だ。俺の彼女だぞ、見捨てられるか」
加藤は、気を失っている智恵美を背負う。長らく拷問を受けていた割には、体力は残っているようだ。
藤原は、ここに来るまでずっと疑問に思っていた事を加藤に聞く。
「……加藤。一体何があったんだ? 伊藤の話じゃあ、彼女達とトラブって誘拐されたと聞いたけど」
「……あれは今朝の事だった。俺は妹の《沙霧》と一緒に買い物をしに街まで出掛けていたんだ。そこで偶然、3人と顔を合わせた」
「あーなるほど。つまり加藤の彼女達は、妹を浮気相手だと誤解した訳か」
加藤は頷く。
「何度言っても、彼奴らは納得してくれなくてな。おかげで散々苦労したぜ」
「信用が足りてないんだよ」
「藤原! お前は、俺を軽薄な人間だと思っているのか!?」
「じゃあ加藤。お前がこれまでに付き合ってきた彼女の人数って憶えてるか?」
「頑張れば思い出せる」
「同時期に付き合ってきた最大の人数は?」
「11人」
「軽薄」
「恋人を愛でる上で、大事なのは《一途な心》ではない! その愛する人にどれだけ尽くせるかの《具体的な行動》が重要なんだ!」
「お前の問題点は《複数人の女性と付き合う事》だ、どうして気がつかない? ……けど、まあ確かに。加藤の行動力は目に見張るものがあるよな」
加藤の色男っぷりは今に始まった事ではない。幼稚園児の頃から彼女がいて、以来百を超える相手を作ってきた男にとっては、そもそも一般男性と価値観が異なるのだろう。一般男性は、彼女を作りたいとは思っても、複数人と同時に付き合える器量も度胸も持っていない。
「ああ、今朝は久し振りにフリーでのんびり過ごすはずだったんだがな」
「勉強しろよ。明日からテストだぞ」
「それも妹の買い物の手伝いでおじゃんになったが。まあ、長話はこの樹海を脱出した後にでもしよう。俺は早くシャバの空気を吸いたい」
「でも大路島が……」
大路島は、依然鉄の処女に捕らわれたままだ。扉を開こうにもロックが掛かっており、救助は不可能に思われた。
「奴は死んだ。悲しいが、それが現実なんだよ」
「せめて葬式くらいは挙げてやりたいんだけど……」
「じゃあ花でも添えてやるか」
藤原と加藤は、周囲を見渡してお供え用の花を探してみるが、適当な花が見当たらなかった。仕方ないので、2人は花の代わりにそこら辺に生えている《雑草》を鉄の処女の頭に乗せる事にした。
「成仏してくれよー」
藤原は、鉄の処女に拝んだ。その時、鉄の処女が微笑んだような気がした。
しかし、富士の樹海に微風が吹くと同時に、その笑みはフッと掻き消され、辺りに静寂が訪れる。
藤原は、きっと幻聴でも聞いたのだろうと思い、その場を後にするのであった。
よろしければ評価・感想等をお願いします!