第5話「大路島、死す」
遂に加藤を発見する事が出来た藤原達。伊藤の提案で誘導作戦を開始するが、智恵美は謎のパワーを使ってゾンビを呼び寄せたのであった。
「オイオイオイッ! ふざけんなよ! 世界観崩壊してんじゃねーか!!」
藤原は語気を荒げてみるが、文句を言ってもこの状況は改善されない。
2人を囲む10人以上のゾンビ達。藤原と大路島は、この常識外の状況に訳もわからず混乱をしていた。
「藤原ぁ! 智恵美は、過去に《魔術の本場イタリア》で修行をしていた事があって、その結果《死霊術》を会得したらしいんだ。近くにいる死体に仮の魂を宿らせて自由に操る事が出来る」
「そんな無茶苦茶な奴と、何で普通に付き合ってんだお前は!?」
「は? 愛に理屈なんているかよ。俺は智恵美を愛してるから付き合ってるんだ」
「加藤ちゃん……(ぽっ」
「何だろう。はっきりと説明できないが、こいつを無性にぶん殴りたい!」
その頃大路島は、けん玉でゾンビ達に応戦していたが、ゾンビには痛覚というものがないのか、まったく怯む事なく2人を追い詰めていく。
「ま、不味いぞ! このままだと僕達までゾンビ化してしまう! ゾンビに噛まれたらゾンビになるって聞くし!」
「か、加藤! このゾンビに弱点は無いのか?」
「それはもう《聖水》一択だぜ」
「そんな都合の良いもの持ってないよ」
「うーん確かにお前らじゃあ無理だな。男の《尿》って、聖水と呼べるような神聖な物でもないから」
「ふざけんな下ネタじゃねーか!」
「こっちは真剣なんだ! 真面目に答えないと置いていくぞ!!」
「あーえっと。確か、術者である智恵美を何とかすれば術が解けるはずだ」
「何とかって、何をすれば良いんだ?」
「そりゃーもう……」
「ちょーっと加藤ちゃん。少し喋り過ぎですよー?」
加藤が何かを話し掛けた途端、智恵美が加藤の口を両手で塞いだ。
「ム、ムグゥ〜〜!」
加藤は苦しそうに唸っている。
一方で、別に唸り声を上げているゾンビ達は、藤原と大路島に少しずつ近づいて来ている。最早一刻の猶予もない状況だ。
「藤原! よくわからないが、やるしかないぞ! あの智恵美って子をケチョンケチョンにしてやるんだ!」
「えーー。……俺、基本的に女性に暴力ってNGなタイプなんだよねー」
「この後に及んで何を言ってるんだ!? ふん、なら良いさ。お前が行かないっていうなら僕1人でも! 突撃ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
大路島は、藤原を置いて智恵美に勢い良く飛びかかる。
その瞬間、不意に大路島の足首が、何かに引っ張られていった。
「えッ!?」
大路島の足首には、罠用のワイヤーが絡まっていた。
大路島は、そのワイヤーを目で伝って確認していくと、ワイヤーの先端が《鉄の処女》の内部に繋がっている事に気付いた。
「ええッ!!?」
(あ、死んだなこりゃ)
友人の末路を察した加藤が、そっと黙祷をする。
大路島は、ワイヤーの引力に必死に抗おうとするが、ワイヤーの力はそれ以上だった。結果、大路島は為す術も無く鉄の処女内部に入ってしまう。
そして、鉄の処女の扉がバタァン!! と無慈悲に閉められ、中から苦痛に満ちた絶叫が藤原達の耳に轟いた。
「お、大路島ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
突如訪れた友人の死。
その悲惨な運命を垣間見てしまった藤原は、感情の赴くままに、その場で割れんばかりに叫ぶのだった。
「ちくしょー! 大路島を殺りやがって、許せねー!!」
「いえ、ワタクシは何も……」
「問答無用だぁ!! ウオォォォォォォォォォ!!!!」
藤原は走った。友の無念を晴らすために。
敵は、少女とゾンビの軍団。果たして藤原は、彼奴らを倒し、加藤を救い出す事が出来るのだろうか!?
つづく。
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