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第4話「危険な女は死の香り」

 富士の樹海に辿り着いた藤原達。樹海の奥へ進むと中学生くらいの戦車乗りと遭遇する。ほふく前進で隠密しながら爆殺寸前の狐を救い出した3人は、何とか加藤の元へと移動していくのであった。

 そして、ここは富士の樹海の奥深く。

 ここに、椅子に固定されている哀れな男がいた。


「ち、ちくしょう! 俺の体は好きにできても、心まで自由にできると思うなよ!」

「うるさい」

「あふんっ!!」


 電気椅子に電流が走る。

 富士の樹海に連れて来られた加藤は、この場で拷問を受けていた。加藤の周りには2人の女性がいて、名前は《智恵美》と《響子》。2人とも加藤の彼女だった人物だ。


「き、聴いてくれ智恵美、響子! 俺は、浮気をしていたつもりは更々ないんだ! 何故なら俺は全員に平等な愛をギャフンッ!!」


 電気椅子の電圧が上がる。

 響子と呼ばれた、おそらく大学生くらいの女性はフンと鼻を鳴らす。


「無駄口を叩くな。言われた質問にだけ答えろ。……加藤、お前はこれまで何人の女性と付き合ってきた? 私の知らないところでッ!!」

「そんなの多過ぎてわからないアバババババ!!!! ま、待って待って! 今すぐに思い出すから電流はやめて!!」


 ……そんな有様を、遠くの方から藤原、伊藤、大路島の3人が眺めていた。


「加藤の奴、大分痛めつけられてるな。電気椅子で拷問されてやがる。これは、命がいくつあっても足りやしない」

「あんな大きくて物騒な物、どうやってここまで運んで来たんだ?」


 よく見ると、3人の近くには電気椅子の他に《鉄の処女》に《三角木馬》、《頭蓋骨粉砕機》などの大型の拷問器具に加え、《鞭》や《ペンチ》などの苦痛を与える道具が取り揃えられていた。


「不味い。このままだと加藤の奴、そのうち取り返しのつかないことになるぞ」

「だが、問題はどうやって救出するかだな」

「どうって。相手は女2人で、オレ達は男3人なんだ。いざとなったら力付くで……」


 その瞬間、突如バシィイイイイイン!!!! という甲高い鞭の音が響き渡った。

 見ると、そこには鞭を握り締めた響子の姿があり、何故か三角木馬が破壊されていた。


「な、何が起こったんだ!?」

「ああ、あの響子って人。三角木馬に鞭を振るって粉砕したんだ。とんでもない破壊力のある鞭捌きだったよ」

「マジでか!?」


 一方で、加藤はその鞭捌きを目の前で目撃して、完全に萎縮していた。


「……サッサと答えないと、お前もこの木馬と同じ運命を辿るぞ?」

「ヒィッ!!」


 ……どうやら、相手を女と思って甘く見てはいけないらしい。

 出来るだけ安全に加藤を救出するため、3人は作戦を練ることにした。


「ここは陽動作戦が良いだろう。オレが、ホイッスルを使ってあの2人を引き付ける。その間に、藤原と大路島は加藤の拘束を解いて、すぐにこの場を離れるんだ。その後、オレ達は各自で樹海の入り口まで移動をする。富士の樹海は広く迷いやすいが、幸いにもオレは、ここに来るまでに包帯で目印を作っておいた。それを頼りに戻ったら良い」

「伊藤……お前、なんて有能なんだ!」

「車がある樹海の入り口まで移動したら、なりふり構わず脱出するぞ。樹海を抜けさえすれば、後はこっちのものだからな」

「…………」

「ん? どうした大路島」

「いや。仮に今救出に成功しても、後から彼女達がまた加藤を拐いに来るんじゃないのかと思ったんだ」

「そこは大丈夫。何故なら加藤の父親は警視庁の偉い人で、母親は弁護士だ。加藤は俺達に救出された後、親に頼んで《権力》と《法律》を得て彼女らに圧力をかけるだろう。2度と同じような強襲をさせないためにね」

「だからオレ達が心配する事はない。とにかくオレ達がやるべき事は、加藤を連れてこの場を去る、それだけだ」


 そうとなれば早速、行動開始だ。

 伊藤は、藤原と大路島2人から少し離れた場所へ移動し、ホイッスルを思い切り吹いた。

 たちまち、「ピィーーーーーーー!!」という煩い音が響く。当然、その音は向こうの3人のところまで届いていた。


「む。何だこの笛の音は?」

「こんな樹海の奥深くに、人が入り込んだのでしょうか? 自殺志願者の類ですかね」

「まったく、見張りの《戦車女》は何をやってるのだ。……おい《死体女》、私が音のした方を見て来るから、お前は加藤を見張っていろ」

「了解です」

「……言っておくが、抜け駆けしたら殺すからな」

「…………りょーかいです」


 智恵美と響子は、そんなやり取りをしてから、智恵美はこの場へ残り、響子はホイッスル鳴らした伊藤の方へ向かっていった。


「うーむ。1人しか持ち場を離れなかったな」

「どうする? ここは強引に突破するか?」

「……そうだな。見たところ、智恵美って子は大人しそうな女の子みたいだし、2対1なら勝機はある!」


 せっかく伊藤が作り出したチャンス。この気を見逃すわけにはいかない。

 藤原と大路島は、智恵美が完全に姿を消した事を確認すると、加藤の元まで全力で走り出した。


「加藤! かとーう!」

「ああ、お前達! 来てくれたんだな。逢いたかったぜ!」


 加藤が感激の声を上げる。

 そして、藤原達の存在に気付いた智恵美は、2人の前に立ち塞がった。


「……貴方達、加藤ちゃんのお友達ですか?」

「まあ、そんなところさ。悪いけど、加藤をこちらに渡してもらうぞ」


 藤原と大路島は、ジリジリと距離を詰めていく。タイミングを見計らって片方が智恵美に飛び付き、もう片方が加藤を救出するという作戦だ。

 しかし、男達がにじり寄って来るこの状況下で、智恵美は寧ろつまらない物を見るような目で、2人を蔑んでいた。


「へーそうですかそうですか。小虫の分際で、ワタクシの加藤ちゃんを奪おうって言うんですね?」

「き、気を付けろ2人とも! 智恵美は、実はとんでもない能力を……」


 加藤が何か忠告をしようとするが、遅い。

 智恵美が両手を掲げ出し、何やら呪文のようなものを唱え出したその瞬間。突如、周囲から薄気味悪い唸り声が聞こえてきたのだ。


「な、何だこの声は? 一体どこから……」

「お、大路島! 後ろだぁ!!」


 大路島が振り向いてみると、そこには10人以上の《人間》が立っていたかに見えた。

 ……しかし、それは正しくは人間ではなかった。猛獣のような低い唸り声。浮浪者のようなおぼつかない足取りで移動する彼ら、或いは彼女らは、人間どころか生物ですらない。

 その正体は、《ゾンビ》。

 動く死体と称される、生命を冒涜する化け物が、2人の前に現れたのだ。

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