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後世(ぐぜ)のアクシズ  作者: 白黒闇理
皇紀2615年【照波30年:俗暦1955年】
3/7

4月4日

朝5時ですみません。

 羊羹をカステラ風スポンジケーキで挟んだ…ここでも出自不明の銘菓

"シベリア"(それもチェリージャムと生クリームでデコった特製…)手土産に、

俺は我等が参陸零サブロクゼロ大隊の"本物の"総指揮官である大佐殿に

報告書を提出すべく皇国陸軍真華万洲帝国帝都支部皇国陸軍特務部隊専用駐在館…

もとい"絶対女帝エカテリーナ御殿"にある大佐の執務室…第一司令室へと足を運b…

前に己の執務室である第三資料室に向かうのだが…


―ガチャリ


「何でカギ開いて…パウダッ!?」

「………………ふぇっ?」


 ドアを開けたら色白金髪碧眼幼女さんが下着一枚のお着替えタイム中からの

ダブルロングフリーズ。脳内にダメなほうのサイレンが鳴り響く。

 俺は脳内の時間を涅槃寂静レベルでフルバーストオーバードライブさせた。


 そして理解した。


 俺は、目の前の一見すると幼女な見た目の大尉、

ある意味では大隊最狂なマヤ・ヴァウェンサにkrsrr!

ナンデ俺の執務室おへやで着替えナンデ…じゃねぇ逃げ…!


「おっぎゃあああああ!!」


 俺は本能のままにドアを閉めようとしたが、残念。俺の眼前には

大隊の尉官以上には大抵標準装備な大口径ハンドガン…いや違う

ヴァウェンサには特製のグレネードピストルの銃口がががががッ!?


「ギ…ギギギ…!」


 マヤは今にも炎上しそうなレベルの赤顔だ。前世なら俺は二重三重で死ぬる。

だからなんだろうが、俺は涅槃悟り顔アルカイックフェイスで開き直ってしまう。


「おま…そのちんちくりんボデーでガーターベルトとか…」


 マヤの顔が幼女の皮を被ったバケモノかと思うレベルの表情に一瞬変わってから

氷結の表情からまた茹蛸みたいな顔に戻って


ねええええええええッ!!」

「やめろ焼夷弾グレネードは洒落にならn―


―パシュン、ボコォォォォォォン…!

―何だ!? 敵襲!?

―第三資料室…!

―あ、何だ…准佐絡みか…


 思い返せばあの時の最後の笑い合う声がムカつくなぁ…。


【Guze no Axis】


 大佐へのお土産は守られたが、報告書その他諸々が無事って言うレベルじゃねえ

状態になっちまったので、俺は予定は無かったが"雷電中佐"の執務室である

第二蒐集魔科兵器安置室にて報告書をゼロから書き直すことになった。


「…薬湯…どうぞ…です…」

「あ…わざわざすみません…中佐殿」

「ミカ…ミカで…いい…です」

「いや…流石にそれは…」

「わ…私は…ホントは…中佐とか…器じゃない…ので…」


 実際"雷電中佐"こと司雷スィーレイ美華メイファ…いや、ミカ・シライ中佐は

こんな感じの根暗マンサーなので確かに指揮官としての器ではないと俺も思う…が

それを補って余りある超火力魔科兵器適合者なのが彼女なのだ。


 どんな魔科兵器かと言うと…異名に"雷帝"、"復活者ネクロマンサー"、"神落とし"、

"央華人民の敵"、"破壊神権化シヴァアヴァタール"といったのがボコボコ出てくるし

今後そのワンマンアーミーっぷりを見る機会は幾らでもあるので今回は割愛する。


「…お、お菓子…食べる…か…!? …です!」

「あ、おかまいなく…!!」


 俺、一応この人の直属の部下のはずなんだけど…?


 どうにか増えた分も報告書を書き上げ、保冷剤も新しいのに替えていざ!

第一司令室ほんとうのせんじょう…………………………………………………………

と見せかけて中庭に来てます。


―ワッショイワッショイ!

―ワッショイワッショイ!


「………」


 今の時間はタカノ部隊の訓練のようだ…しかし帝政時代だろうが

旧ボリシェビキ連邦時代だろうが、相変わらず元・白銀国民セレブリャスキーの野郎ってのは

テンプレマッチョ白人って体格だよな…こんなのが集団で野太い声で

カチューシャ歌いながらAVS-36ぶっぱしてくるとか前世の日本防人様方凄いです。


―ワッショイワッショイ!

―ユミコ! ハラショー! ユミコ! ボリショイ!


「チョーシ乗んなこのチ○カスどもぉ~!!」

「セルジャントダーセルジャント!(サーイエッサー!)」

「お前等は何だぁ~ッ!!?」

「我らは蛆虫ですサー!」

「蛆虫が蝿の王ベルゼブブになる為には何が必要だーッ!?」

「貴女様への不屈の忠誠と屈強なる肉体と精神ですサー!」

「理解しているなら腰に力を入れろこのゴミクズぅ!!」


―ズバチィン!


 ダボつく軍服姿はその手のお店のコスプレ感が漂うのがタカノ部隊隊長…

ロリ巨乳メガネっ娘な見た目だけど、俺と3つしか年が違わない彼女が

ユミコ・タカノ准尉…万洲帝国で代々続くタカノ家の娘でこの部隊の

三代目タカノ部隊長を最初は縁故で世襲した女だ。そんな彼女が妙に可愛い声で

可愛くない事を言いながら馬用の鞭でセレブリャ系のテンプレマッチョマンの

ケツを景気良く何となく殺意交じりでブッ叩く。


「オゥ! ダー!!(Oh yes!!)」

「口からクソを垂らすんじゃあなぁ~いッ!!」


―ドバチィン!


「ンホォ! イーソス!!(Oh Jesus!!)」


 うーわー………。


「これはひどい(´・ω・`)」


おとこらしさ…ボクにはよくわからないです…少佐…」

「准佐な、そこ間違えんなよベオ」


 気がつけば隣でこっちまで落ち込みたくなるレベルの雰囲気を纏った体育座りで

そこに居た彼j…彼はベオウルフ・ハイランド少尉。連合王国からの移民四世で

どう見ても女の子の顔と細身だが、声は普通に高いだけの少年…? だし…?

何より股間に引っさげている「八拾八アハトアハトロングレンジキャノン」が間違いなく

彼を最強の男だと教えてくれる。そんなヤバイ武装を生まれた時から持ってるくせに

(なのでこいつの軍服の下は裾余りでさらにボンタンみたいな幅広ロングスラックス)

こんな見た目だから「男らしくなりたい」と自然すぎる上目遣いで言うもんだから

暇さえあればタカノ部隊で鍛えさせてるんだが、思い立った当初のタカノ部隊は

元々が蝶よ花よと育てられた大人しすぎるユミコだったのであのマッチョメンズに

終始舐められっぱなしっていうか色々危ない状況だった。

 なので俺は凄く嫌だが大佐殿と協力して彼女を二重人格レベルになるほどに

鍛えまくっちゃったらハイ、あの様でございます。

 しかしながら根っこの優しい心は二十数年の純粋培養なので簡単には直らない。

んでもってトラウマの一人である俺の直属の部下であるベオウルフを

あの調教完了マッチョメンズみたいに鍛えることは出来ないと言う

本末転倒…? な始末でございます。


「口では"グズは豚の餌"とか"本巣に帰れ豚野郎"とか"掘らすぞこの×××"とか

言うんですけれども…その…夜に…今にも死にそうなレベルで怯えきった

タカノ隊長が…」

「…うん。そればっかりは俺と大佐のせいだから…せめてお前は甘んじて

彼女の本当の意味でのガス抜きにキチンと付き合って差し上げろ」


 …夜中にロリ巨乳メガネ姉ちゃんが来るシチュはむしろ俺が味わいたいです。

しかし…できるわけがねぇ。そんな胆力あったらユミコは…ユミコは…!

ちくせう…っていうか普通に俺と大佐でベオを鍛えればいい話だったんじゃ…?

 …いやダメだ、大佐は年下の少年には甘い…キモいレベルでゲロ甘だ。


「えぇぇ……」

「女の苦しみの吐露に胸を貸してやるのも"男らしさ"だぞ」

「…ずるいです…准佐」


 その顔と言い方がまるで美少女おとこらしくない


「………そのうち正式な形でユミコには詫びるし…仕方ないから

そのうちヤミ魔科兵器摘発の実地訓練でもしてやるよ」

「…その約束…忘れないでくださいね?」

「………」


 俺は肯定したとばかりにタバコに火を点けてその場を離れる。


【Guze no Axis】


 さあ…俺の最初の戦いだ…! うおぉぉ…怖ぇぇ…! ホントにあの人

サツキと同い年の19なのか未だに疑わしい…!!


「失礼いたします!」

「Это другое. Это мозг. Снайпер мозг.

(そこじゃない。脳天だ。脳天を狙い撃て。)…ん? 鍵は開いている、入れ」


 電話越しの会話が不穏だが、いつもの事なので顔には出さない。慣れないけど。


「お早うございます大佐。シュンヤ・ナガト准佐、ただ今到着いたしました」

「…なぁシュン…私とお前の仲だ、戦場以外では普通にカーチャとかリーナとか

カチューシャとか呼んでおくれよ?」


 その貫禄ある見た目でカチューシャは別次元から粛清されそうなのでご勘弁。

まぁ、カーチャだったら最強カーチャンが少しは可愛く…


―パコォン! チョリッ!


「どわぁッ!!」


 綺麗に俺のモミアゲの一部が削られた。トカレフの弾丸で。


「うん。リーナかカチューシャが良いね」

「……洒落にならないんで止めてくれませんか大佐」

「リーナかカチューシャが良いね」

「ですから大s」

「リーナかカチューシャが良いね」


 わーい。大佐は笑顔のスチェッキン・マシンピストル二丁構えだぁー☆


「リーナ…俺だって痛いもんは痛いんだぞ?」

「心が、だろう? この怪物め☆ 私を楽しませてくれる唯一の愛しい男…」


 顔面にザックリ一本走った刀傷以外はホントに綺麗な顔で、

その刀傷が無かったら毎晩お相手したい19とは思えない体つきで…

本名不詳のエカテリーナ大佐は満面の笑みで葉巻に火を点ける。


 ビールは清涼飲料水と言い張るセレブリャ人なので、タバコなんて普通なのよ。

そして「酒が不味くなるから本来通り香りを楽しむ」と葉巻を吹かすのよ。

まぁ、たまに普通に吸っちゃって咽るのは可愛くないといえば嘘だが、

死にたくないから誰も突っ込まないっていうか見ない振り。あぁ…もう灰皿…

それ一本で大間の大トロ何貫食えると思ってんですか大佐ァ…。


「お土産は何?」

「特製シベリアだよ」

「味見して良いかい?」


 拒否権もクソもないし、冷たいうちに食うのがシベリアケーキの醍醐味だから

俺は何も言わず気持ち大きめに切り分けたシベリアを皿に乗せて出す。


「ふむ………何だかグレネードの香りがする…良いね」


 …本巣の旧ボリシェビキ連邦の白色死神遊撃隊ベーラャスメルチヴィソトニキどころか

中枢党員の機密を片手に皇国陣営にふらりと現れた女…それがエカテリーナ。


「…それは…良かったのか?」

「どうせシュンはまたマヤと何かトラブルを起こしたんだろ?」

「不可抗力だ……葉巻貰っていい?」

「冗談が好きなんだね」


 俺の鼻の穴にマシンピストルをグイグイ押しながら…はーい行動ミスけいそつったー☆


「嘘です普通に自前のを吸わせてください大佐」

「……止してよ、安物の匂いは御免だ。特別に一本くれてやるさ」


 安物…新生ノイゲブロンネは確かに大衆向けだけどさぁ…!

最近は皇国で社会問題化してるくらいには需要過多なんで結構お高いんだぞ…!!


「うぐぐ…頂きますッ…!」


 悔しい…爪楊枝刺してギリギリまで吸ってやるんだから…!


「………な、何だこの芳醇な香り…!」

「万洲の亡命セレブリャ陣営の新興財閥オリガルヒ御用達の一品だからね。

原材料の葉も帝国領の南米の特級品だし、確か…

シュンの母国の皇帝ツァーリにも謙譲されたんじゃなかったっけ?」

「いや…基本うちの天照皇あまてらのすめら陛下にそういう嗜好品ダメだから」

「うぅん? 待ちなよ。確かにそんなルートだと私は聞いたが?」

「多分星宮大公家か山本侯爵家の方だわ、大公家は陛下の妹親王殿下が宗主だし」

「ややこしいんだよ。シュンの皇国の貴族関係は」

「…歴史が長いからしょうがないんだよ」

「私の本巣みたいに改革運動ペレストロイカしなよ」

「無茶言うなよ俺は百姓家の三男だぞ」

「むしろ相応しいじゃないか」

「冗談じゃねえ皇国の長い歴史の光と影に焼き呑まれるわ」

「あははははははは」


 まるで抑揚の無い笑い声だわこの人。


「ご歓談中失礼しm「ノックしろ阿呆が」」


―パパパパコォン!! チョチョチョチョリン!!


「ぎょわああああ!?」


 音は間抜けだが威力はお墨付きのマシンピストル。可哀想に…。

モミアゲが片方だけ綺麗に削り取られたよあの兵士さん…。


「したのですが…」

「あ、そう…で?」

「ほ、報告書を…」

「そこへ置いて回れ右。そして耳にしたことは忘れろ」

「ダー! セルジャント!」


 と、まぁ彼女に異議など無用。通るのは戦場で重大性がある時だけだ。

流石にその場でぶっ殺したりはしない。リーナ曰く「人的資源は大切に」である。

資源て…あなた…。


「私は何時まで書類と睨めっこしてりゃ良いんだい?」

「……平時は最低でも毎週だよ」

「あぁ…ミカにやらせると仕事は良いんだが…遅くてねぇ…」


 そりゃー本来はあんたが決めなきゃならん重大案件もあるんだから

誰だってそうするわ。


「かと言って…シュンにはねぇ…」

「やめてください。しんでしまいます」

「はぁー…老兵組合イェルターグルッペの連中と多対一演習したいなぁ…」

「やめてください。としよりをいたわってやってください」


 折角魔科兵器適合して色々若返った彼らの何もかもをバッキバキに折る気か。

これだから天然超人スーパーナチュラロイドは…! そこはマヤを見習えよ。

あいつは過去が過去だから年寄り相手には普通にアイドルやれるんだよな…。


「まぁ、お前とヤるのが一番楽しいがね…?」

「やめてくれ……」


 絶対俺の方が先に心が折れる自信あるから。嬉し泣きはマジで折れるから。


「……ふハッ…何だ、七年の付き合いのシュンは未だゼラを制御できないのか?」

「相手は年頃なんだぞ? …思春期なんだぞ? 胃がもんどり打つわ」

「言うこと聞くまで絶望を味わわせてやればいいだろうに。昔私もそうされたし」

「……どっちにしても暴走するじゃねーか」


 ゼラは適合Bカテゴリーだから…普通なんだから…無茶言うなし。


「……ふん。まぁ、いい。で、明日の取り締まりはどうする気だ?」

「…どうするも何も…いつも通りだ」

「量産型ムスッペルが出るかも知れんぞ?」

「最悪自滅待ちで」

「ふふ…試作モデルは気が楽だな?」

「ふざけるな…」


 俺は愛用のタバコに切り替えようとしたら口にまた

大トロ何貫分の葉巻を突っ込まれた。


「安物は禁止だ」

ーのはよ?」

「二、三本減ったところで…ほうれ」


 リーナは机の引き出しからみっちり詰まった葉巻箱を…見せ付けるぅ!!!


「お、俺の給料何年分だろ…」

「在庫合わせれば人生二回分じゃないか?」

「げふぅ!?」


 畜生…旧ボ連…ぜったいにゆるさない!

次回投稿は朝9時頃です。

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