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第四話「目覚める能力」

「俺にもやらせてください!」


 興奮のあまりカーニャちゃんの両肩に手をおいて前後に激しく揺さぶっていた。

 豊満な胸が暴れる。メタビライトという石への興味は一瞬でおっぱいに塗り替えられた。

 暫くおっぱいに目を奪われながら揺すり続ける。


 ブルンブルン!


 へぇー、おっぱいってこういうふうに揺れるんだ。


「痛いわ!」


 ブンッ!


 ガントレットを纏った手アッパーが放たれたがすんでのところで避ける。

 鉄パイプを粘土の様に潰したコレに当ったらひとたまりもない。

 あと少しでもおっぱいを見つめていたら首から上が消え去るところだったぞ。


「落ち着け! お前、目が血走っているぞ!」


 乳に走っての間違いだけどな!

 自分が殺人未遂を犯した事なんて微塵も思っていないカーニャちゃんが鎧の入っていた酒瓶の口にガントレットを押し当てる。

 ふぅ、と一呼吸するとガントレットはドロっとその形状を崩し液体となってシープドッグに追い込まれた羊の様に瓶へ戻って行く。

 手の甲にあった石もいつの間にかカーニャちゃんの可愛い手のひらに収まっている。

 さすがは異世界、何でもありである。


「ごめん、ちょっと凄くて興奮しちゃった」


 おっぱいに。


「んふふ、そうだろー、凄いだろー。やっと私の凄さに気付いたな?」


 んふー、と満足げのカーニャちゃん。

 両腰に手を当てて胸を張るせいで余計におっぱいが強調される。

 先端にボタンのような突起物が浮き上がっていた。


「まさか、ノーブラ……なのか」

「ん? のーぶら?」


 しまった!またしても心の声が漏れた。

 しかし、幸いカーニャちゃんはノーブラという単語自体存じ上げないようだ。

 まさか、な。


「……ブラジャー」

「なにそれ?」


 今、この世界にブラジャーがないことを確信し、小さくガッツポーズをとった。

 しかしその後、別の女性に追求したところ普通にブラジャーは存在し更なる汚名を被る事になったのはまた別のお話。


「よくわからないが話を続けるぞ。これを持って何か強い想いを念じてみろ」


 メタビライトと言われる石は、掌にちょうど収まるサイズの平たい六角形に整った透明な石で、先程の様に赤く光る要素は見当たらない。持っていても特に何も感じないただのガラス細工の様だ。


「何かって?」

「なんでもいい、力が欲しいとか早く走りたいとかよくあるやつだ」

「子供みたいな願いだな。じゃあケーキ屋さんとか犬になりたいとかでもいいの?」

「何でもいいから早くやってみろ、胸に押し当てながらやるといい」

 

 言われた通り、胸へと近づけて念じる。


 ……だめだ、さっきのおっぱいが脳裏に焼き付いている。

 あのおっぱいが揉みたい。

 いや、目の前にあるおっぱいが揉みたい!

 そう、俺の願いはおっぱいが揉みたいのだ!


 そう強く願った瞬間、石が紫色に発光し指の間から漏れ出した。


「もっと! もっと強く念じるんだ!」


 そうか、これは意志の力に呼応しているんだ!石だけに!


 おっぱいが揉みたい!


「もっと! お前ならできる!」


 おっぱいが撫でたい!


「もっと! まだだ! まだ足りない!」


 おっぱいを愛でたい!

 紫色の光が徐々に強くなる。


「あと少しだ! もっと! 考えるな! もっと感じろ!」


 どこかで聞いたフレーズが飛び出した辺りで俺の願い(よくぼう)は最高潮に達した。


「うあああああ! おっぱいが舐めたい!」


 部屋が先ほどの様に石の放つ光で白く染まる。


「……はぁはぁ、やればできるじゃないか。よかったぞ」


 妙に艶のある声を出すロリ巨乳。

 思わず鷲掴みしそうになる手を抑制する。

 その手は黒く染まっていた。


「お前の強い想いはよく分かった。かなり引いたぞ。だが、纏手(メタビライザー)としての素質は一流だ。鏡を見てみろ」


 そういって部屋の隅にある洗面台の鏡を指さした。

 そこにはカーニャちゃんの様なかっこいいガントレットとは違い、頭の先まで真っ黒のシルエットしかないモノが映っていた。まるで現世で見た少年探偵マンガの犯人だった。


「これが……俺?」

「そうだ。私にはどんなに頑張っても手だけにしか纏えないが、素質があるやつ程その部位は多くなる。ただ全身に纏えるのはお前が初めてだ。正直驚いたぞ」

「へぇ、凄いことなんだね。かっこ悪くて素直に喜べないんだけど」


 想像していたかっこいい鎧、若しくはバトルスーツではなく、全身タイツの様な姿。

 検査着といい、何かとタイツに縁があるな。


「お前のメタビライトの光は紫色だったな。今までの研究によるとその色は速さが上昇する傾向にある色だ」

「色によって能力が違うのか。カーニャちゃんは赤色だったよね?」

「そうだ。赤は力が上昇する傾向にある。だから鉄パイプも先程の通りだ」


 足元に転がっている先程のスティックパンの様な鉄パイプを指さす。


「鎧を纏うと纏った部位の基本的な能力が上昇するが、それに加え光の色によって様々な効果が追加される。私みたいな馬鹿力もいれば、お前の様な紫色でとんでもなく足の速いやつもいる。……ん?」


 カーニャちゃんは俺の目の前まで近づいてじっと俺の顔を見上げている。

 可愛い顔の下にとても美味しそうな谷間が見える。先程の欲求が爆発しそうになる。


 その時、脳裏に映像が流れた。

 今の様にカーニャちゃんが俺を見上げながら何か話している。音は聞こえない。

 そして何かを言い終わり俺から身を離す瞬間に鉄パイプを踏みつけ尻餅をついてしまう。

 ここで映像は終わる。


「お前のメタビライトは額にあるんだ。これも初めて見たな。どんな能力なのか調べる必要があるなあああ! 痛っ!」


 そう言い終わりに一歩、二歩後ろへ下がったところで鉄パイプに躓き、後ろへと尻餅をつく。


「……」

「いたた、ちゃんと捨てておけばよかった」

「……分かった、かも」

「えっ! 見えた?」

「今、少し未来を見た……かも」


 少しホッとした表情を浮かべるカーニャちゃん。


 俺は漫画では最強の部類に入る未来視を手に入れたようだ。

 そして、カーニャちゃんの淡い水色のローライズビキニをばっちり見た事は黙っておこう。

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