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ここまでお付き合いいただきありがとうございます。
如月王子のうさんくさい王子キャラの真相回です。
キャラ作りすぎてしんどくなる気持ちはわかります。
「僕、人に構われやすいみたいで…」
如月の自分語りはそんなため息混じりのもので始まった。
「幼稚園までそうでもなかったんだけど、小学生にあがったくらいからかな。女の子たちに口調とか笑い方とかこうしたら格好いいよって色々言われるようになったんだ」
「ああ、そのうさんくせぇ話し方と笑顔な。いって」
面倒ついでに茶々をいれると、横からりこの頭がわきばらに飛んできた。
痛っ。
こいつがちびだからもろに入った。
「如月くんは気にしないで~つづけてつづけて」
りこの態度の違いにいらっとするが、まぁ仕方がない。
続きを話せとうながすと、如月は苦笑した。
「最初はちやほやされるのも悪くなくて、ふざけて言われた通りやっていたんだ。だけどだんだん飽きてきて。クラスの男子も面白くないみたいで色々言われるようになったしね。もういいだろうと思って、構ってくる子達にもうやらないって言ったんだよ。そうしたら泣かれちゃって」
如月ははぁとため息をつく。
「一人泣きだすと周りの子たちがその子を庇うもんだから、悪者みたいになっちゃって、なぜか僕が謝るはめになるんだよ。似たようなことが何度かあって、もう面倒くさいし言われる通りにしてるんだ。そうすると僕に変なイメージを求めて盛り上がるような子達しかそばにいなくて、いい加減しんどい」
なるほどな。女子に泣かれると男子は弱いってのはあるな。
俺もりこや妹にびーびー泣かれるなら、許容範囲でワガママをきいた方が楽だと思うことは多い。
しかしだな…
「お前も悪いだろ」
「え?」
「信者に幻滅して泣かれるのが嫌だから、未だにうさんくさい王子やってんだろ。やりたくないなら幻滅されてもやめろよ。辞めるかどうかはお前の権利だ。お前中途半端じゃねぇか?」
「りゅ、りゅうちゃん!そんな本当のことはっきりいっちゃダメだよ!あやまって!」
如月の肩が落ちる。
いや、いま追い討ちかけたのはりこ、お前だぞ?
「田之上くんのいう通りだ…今キャラ作りをやめたら、周りから誰もいなくなるんじゃないか不安で」
あ、こいつヘタレだ。
横でりこも困った顔をしている。
でもまぁうさんくさい笑顔を振り撒かれるよりは受け入れられるか。
顔面偏差値の高いやつは周りの期待値も高くて大変なのだろう。
まったく共感できんが。
「如月くん!りゅうちゃんが友達になるよ!口と目付きは悪いけど本当は優しいから安心して!」
「お、おい」
りこ何をいってるんだ。
勝手に決めるなよ。
面倒事を押し付けるな!あと目付きが悪いってなんだよ。
「田之上くん、いいの?」
「ほんとだよね??」
二人して俺の顔をのぞきこむ。
今日の目的はりこと如月を仲良くさせるというものだったはずだ。
なぜ俺と如月がお友だちにならにゃいかんのだ。
はぁとため息をつくと、りこがうんうんと頷く。
「じゃぁりゅうちゃんのライン教えておくね~」
と勝手に操作している。
「友達とはじめてライン交換した」
そう照れ臭そうにされると非常に怒り辛い。
俺もそこまで非情じゃないつもりだしな。
りこもちゃっかりライン交換にまざっている。
本当にちゃっかりだな。
ちなみに、如月は女子とライン交換は初めてらしい。
構ってくる女子に教えると拡散の危機を感じたらしく、ごまかしていたらしい。
「でも、いい寄ってくる女子の中にタイプのやつとか一人くらい居ただろう」
純粋に興味本位で尋ねると如月は首を傾げた。
りこも一緒の方向に首を傾げる。
「うーん。可愛いとは思うけど、経験から女の子ってどうしても油断ならないっていう警戒心の方が先に立っちゃうんだよね」
こら重症だ。
りこは困ったような顔をして俺を見上げた。
お前の恋は前途多難だな。
お読みいただきありがとうございました。
成り行きで如月君とお友達になってしまったりゅうちゃんはどうなるのでしょう。