1
こんにちは。
「実録『導きの魔女』時給1600円」を一休みしてこちらをスタートさせます。
実録~は全編書ききってから順番に上げますので少しお待ちください。
こちらもお付き合い頂けると幸いです。
10歳も離れた弟妹を多忙な親にかわってあれこれ世話をやいている。
だから学校くらい静かに過ごさせてくれと願って生きている。
中学時代の教室はぎゃーぎゃーと動物園の様な騒がしさでかなりストレスだった。
それもようやく卒業し、高校に進学したらまわりもそれなりに落ち着いてくるだろう。
あわよくば大人しめで知的な彼女でもできないだろうかと夢見てた。
夢だった。
高校一年。
入学式から1週間たつと、それなりに気の合いそうなもの同士でなんとなくまとまり出し、朝のHR前にはざわざわと雑談がきこえるようになった。
「きゃーーーーーかっこうぃぃぃ王子さまぁぁ」
隣の席の女がクラスメイトの携帯を覗きこんで、雄叫びをあげた。
幼稚園児のちび二人をなんとか幼稚園まで届け、ようやくほっと一息ついていた俺は大声にびくっとした。
「でしょ~2組の如月王子だよー。同中にはファンクラブもあって超人気だったんだ」
「生でご尊顔を拝見したうぃぃ」
同中イケメン自慢は、女子たちの格好のネタなのかあちこちで盛り上がる。
ただ、隣の席の河中りこのテンションと言動はおかしい。
あほだ。
河中りこは小学生みたいにちいさい。顔も身長も手も足も。
小学生がいるなんて何かの間違いだろうと初日真剣に考えたくらいちいさい。
目がくりっと大きくて頬がぷっくりもちもちしてそうなのは、園児の弟妹と同じだ。
あと、声がでかいのも。
雄叫びにつられて、女子たちが隣の席にあつまっては「かっこいい」「王子顔だねー」きゃーきゃーやってる。
動物園みたいだ。
ピチパクと口々にさえずる。
1週間ぐらいじゃ人は成長しないのだろう。
「如月王子は中身も王子だよ~朝ばったり会ったら『君とまた同じ学校なんて光栄だよ』ってにっこり笑ったんだ~」
うわ、はなざわくんかよ。
それは中二病という病気におかされている。
かわいそうに。
いや、イケメンで辛うじて救われているのか。
俺の冷静な分析とつっこみをよそに女子たちもまた何かにおかされているのか、きゃぁぁと盛り上がる。
河中りこは両手を組んで祈るような仕草までしている。
「やだ、如月王子、すき」
ぷっくり幼児みたいな頬を赤めてつぶやく。
あほだ。こいつはあほだ。間違いなくあほだ。
「会ったこともないのによく好きだの言えるな。うすっぺらい」
女子たちの喧騒にイラついていたからか、思わず吐き捨てるようにこぼれた。
その瞬間周りの目が俺に集まった。
動物園状態のままだったら喧騒にまぎれたはずのつぶやきだったが、河中りこの発言に周りも驚いたのか引いたのかさえずりが止まっていた。
俺のコメントはしっかり本人に聞き届けられているみたいだ。
やべ
河中りこはでっかい目を見開いてぽかんとしてから、その目にじわじわ涙がたまる。
あ、泣く。
弟妹の面倒をみている手前、がきんちょが泣き出すタイミングには敏感だった。
とっさに河中りこを抱き上げると、自分の膝の上に乗せて背中をとんとんする。
「わりぃ言いすぎたわ。俺が悪いよ。ごめんな。泣くな」
妹はわがままを言ってよく泣く。この方法がてきめんで体に染み付くほどだ。
それがあだになった。
どう考えても同級生を慰める方法じゃないよな。
2話は5/4 15時に更新予定です。
お時間あればお付き合いくださいね。