ある転生者の手記
文章の練習がてら書いていくので可能な限り毎日更新しようと思います。
プロットはありますが、展開の変更やらで書くのに時間がかかってしまうと更新が遅れるかもしれません。ご了承下さい。
あまりファンタジーに触れてこなかったので拙い部分が露呈してしまうことがあるだろうと思われます。またしてもご了承下さい。
言い訳ばかりですが、良ければ私にお付き合いください。
首都ヅヴェラクアでは水槽で魚を飼うことが流行っている。
そういうわけだから、どの通りにも必ずと言っていいほど水槽売りの商人が居て、毎度毎度客引きに声をかけられるので、私は辟易していた。
「そこの帝国紳士さん。良いガラス水槽がありますよ」
またしても、私は客引きの対象となってしまう。
話しかけてきた商人は汚ならしい服装をしているので、どう見てもマトモな商品を扱っているようには思えなかった。
「悪いが、魚に興味はないんだ」
「たしかに世話が面倒ですしねぇ。でも海草や貝なんかもいけますよ。今流行りのアクアリウムくらいやっておかないと損ですよ」
貝や海草をみて何が楽しいのだ、そんなに見たけりゃ海にでも行く。と、怒鳴ってやろうとして私が商人を睨み付けた時、ふと、商品が並べてある古い木のテーブルが視界に止まる。
逆ドーム状のガラス水槽や阿片などの中に、ポツンと本のようにもメモ帳のようにも見えるものがあったのだ。
「これは、なんだ」
私は吸い込まれるように、それを手に取り、聞いた。
「あぁ、それは異世界人から買い取った日記です。まぁ、異世界人らしく日本語で書いてあるんで読めないんですけどね」
偶然なことに学生時代、異世界言語のひとつである日本語を私は学んでいた。
「これは売り物か」
「買っていただけるなら売り物ですな」
「いくらだ」
「アー…。100ゴールド…」
「冗談だろう。ディジタルキャメラ並みじゃないか」
異世界人道具と変わらぬ値段などふざけている、という私の抗議を商人は意地汚く笑って一蹴した。
「異世界人の書いた日記ですぜ?そりゃ価値があります。えぇありますとも」
「卑しい男め」
「買わないのなら結構ですけどね」
100ゴールドと言うと新聞記者である私の2ヶ月と半月分の給料に等しいのだが、そんなものとても払えない。
その時だった、私はとある提案を思い付く。
「そうだ、ならそれを私に訳させてくれ。もし中身が面白ければ記者のコネを使って世に出そう。そしたら、売上の半分を君にやる」
あまりに突飛な提案に商人が目を丸くしたのを見て、心の中でざまぁ見ろと痛快さを感じてしまう。
そんな商人はしばらく悩んだ後、こう言った。
「分かりました。それで手を打ちましょう」