フリーライター篇1 目覚めて悪夢を見る。
ここまでのあらすじ……って言っても特にない。
魔女とかほざくガキはマンションの大家で。騒いでたら102号室の貞子に怒られ。挨拶回り中に怪しい人間に『旭岡大樹』について情報を得たら教えてくれ、と頼まれ。紳士な好青年にありがたいお節介されて今に至る。
時刻は午前7時。目覚めは悪くない。
……いや。超悪い。
「あ、起きた。あんたさー、お菓子ないの?」
「人の部屋漁らないでくれる……?」
「私の部屋だもん!いやー、昨日友達来たらさ、お菓子なくなった」知るか……
やれやれ、と頭を抱えながら自分を落ち着かせる。
これが魔女とかほざく大家ことオーヤちゃん。
「オーヤちゃん、それなに?」
「ん?首」
見ればわかるし。てかそれ、昨日挨拶回りしたとき会った203号室のヤンキー女やん。……って。
「うおおっ!?なんだそりゃあ!!」
「おっそっ。今さら騒ぐの」
「そーじゃねーだろ!それマジモンなら警察……いや救急車か!?とにかく呼ばねーと!」
「うるさいなぁ、なにマジモンって。デジモンの新キャラ?あゎたバタフライ歌ってなさいよ」
「おまっ……」意味がわからん。何でこいつはこんなに平然としているんだ!
「この人、ちょっと前に入ってきたんだよねー。態度悪かったな。でもこの人のケーキ美味しかったのに……って。あ、どこいった?」
あのバカの話はどうでもいい!とりあえず203号室だ!
俺はドアを蹴破り、中に突入……うぷっ。
惨劇。大量の血痕と傷だらけの体。
四肢がなく、胴体だけが布団に置き去りにされていた。
その胴体は、昨日話したはずのヤンキー女。
名前は確か……雨野京子。
「なんだよ……これ……」「あー、ひっでぇなぁ……」「うわぁ!?」
後ろから誰かが覗き込んできた。
「人の顔見て叫ぶな。俺は大澤明輝ってペンネームで小説書いてる人間だ。自己紹介終了。観察してぇからどいてくれ」
「なっ……観……察?」
「そーだよ。俺は〆切まであと6日しかないんだ。こーいうネタがなきゃやってけねーんだよ」
「しかしだな……これから警察も来るし」「来ねーよ」「は?」
大澤とかいうランニングシャツにハーフパンツ男はため息をつきながら死体を見えていた目をこちらに向けて
「ここでは人が死ぬのは日常茶飯事。警察も来ない。死んだってことに誰も気付かない。お前もここに住むのならそんくらい覚えておけ」
「な……?」
その後、いくら話しかけても全て無視された。
仕方なく俺は部屋に帰る。
「あ、おかえひぃ」
化けモンがいる。飴くわえながら首で遊んでいる。
「大澤いたしょ。あいつ邪魔くさいよね。部屋の掃除したいのにー。ま、掃除たって魔法で数秒だけどね!」
「はぁー……」
朝から疲れた。 今すぐにでも帰って、これをネタにしたい。 写真は後で撮影すればいいか……。
「じゃ、私掃除するから帰るねー」
「お……おいっ!」
「なによ」
「お前は……犯人の目星、ついてんのか……?」
「うん」
「即答すんなよ。で、誰なんだ?」
「さぁ」
「うわ、腹立つ」
「ま、そのうちわかるよ。生きていれば。大丈夫だよ、男はなかなか殺されないからね」
けらけら笑ってオーヤは首を持って部屋を出た。
「なんなんだよ……」朝からいろいろひどい。
いや、これは夢だ。夢なんだ。きっと夢。
とりあえずもう一眠りしよう。そうすれば……きっと……