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フリーナイトマンション  作者: 白桃太郎
10月10日 1日目 マンションの住人
4/7

マンション住人篇 歯車が回り出す前の話

ーー午後2時21分


「我々の計画はここから始まる」


 喪服を着ているかのごとき黒のスーツ。

 白髪、白髭の老人は重々しく口を開いた。

「この作戦が成功した暁には、我々は地位と名誉を得るだろう。そのためには多少の作戦もやむを得ないと私は考えている。諸君らはどうだ」

 始めに答えたのは丸々とした巨漢。

「オレァそれで良いっすぜ。こんなちっこいマンションの一部屋が作戦場所なんて初めてですがねぇ」

 次に口を開いたのは左目に大きな傷のある男。

「このデブと同様っす」

「あぁん!?なんだと?殺すか?」

 最後はサングラスをかけた長身の男。

「やかましい。要はヘマをした奴は死ねってことだろ。良いじゃないですか、ボス」

「諸君らの思いに感謝する」

 ボスと呼ばれたのは、白髪白髭の老人。

「このマンションは昔から組織の中で『革命のマンション』と呼ばれている。何かデカイことをするときは、大抵このマンションが作戦の会議場となるのだ」

「ボスが言うなら間違いねぇでしょうなぁ」


「一週間後に、我々は動くぞ。各人、準備はしておくように」


 再び、部屋に沈黙の時間がやってくる。




ーー同時刻 刑事 雨川康一 (あめかわ こういち)


「雨川ぁ、『黒服』をしっかりマークしとけよぉ」

 やれやれだ。またこの支倉剛(しくら つよし)脳筋警部補は口ばかりで仕事しないことがわかった。何故か今回のヤマで俺は一番嫌いな人種と組まされてしまったのだ。

 今回のヤマは、一週間後に動くとされている『黒服』という犯罪組織の調査と出来るならば逮捕。……なのだが。俺の目的は違う。

 俺はこのマンションに潜んでいる男に興味がある。そいつはまた有名なチンピラであり、今回も『黒服』に関わろうとしているようだ。俺は『黒服』とただのチンピラの繋がりが気になっている。

 こっちを優先に捜査したいのだが、どうも脳筋はそれを許ない。

「雨川ぁ!なにボーッとしてんだ!」

「いやしてませんし」

「うるせぇ!」

 このように、そもそも人を理解しようという気持ちが無い脳筋に使われている。まずい、このままでは無駄な一週間を過ごしてしまう。それだけは勘弁していただきたい。

「支倉警部補」

「なんだ」

「ちょっと外歩いて来ますわ」

「なにぃ!?今の仕事投げてか!」

「えぇ、その間監視願います」

 俺は朝7時からずっと監視してたんだ、この脳筋が寝てる朝から。

 脳筋の話も途中に、俺は外へと出た。

 こんな空間にいるくらいなら外に出た方がいい。


「あ、どうも」


 外に出ると、スーツの男と目があった。なんだこいつは。しかし至って不審な点はないように見える。昨日からこのマンションにいるが、こんなまともそうな人間はいなかったような気がする。まともそうに見えて案外狂ってるかもしれないな。

 まぁ、俺の捜査に支障は来さない人物と見ていいだろう。


「こんにちは」

 一応挨拶しといた。

「こんにちは。良かったですわ、やっとまともそうな人間に会えました、ははっ」

 あぁ、こいつはまともな人間だと思った。

「あなたのような人だから教えますが、私はフリーライターの以々島隆と言います。取材で一週間、このマンションにいます」

「そうですか、私はただのサラリーマンです。出張でこの辺に来ているんですが、好奇心からこのマンションに泊まることになりました」

 完全な嘘だが。

「へぇ、ホントにまともな人間だ。ここの人間はおかしな人ばかりだからなぁ……」

 以々島とかいう男はやれやれとため息をつく。わかるぜ、その気持ち。

 しかし取材か、良いネタができそうだ。


「あ、そうだ」なら一つ頼んでおくか。

「悪いんですがね、一人、動きを見てほしい奴がいるんです」

「え?」


「旭岡大樹。金髪でチンピラ風の男が変なこと言ってたり動きをしたら私に教えてください」

「ん、何でです?」

「ちょっとした……ね。私のことは言わないでください。もちろん礼は弾みますから。私もあと一週間ここにいますんで」

「……?まぁ、事情は後で聞かせてください。面白そうですから、良いですよ」

 これで味方はできた。礼か……上司に頼むか。


 互いに礼を交わした後、俺は外に出るため階段を降りた。向こうはまだ挨拶があると言って残っていた……一応脳筋がやかましいことを言わないように俺の部屋には来ないように伝えておく。

 ずいぶん怪しまれているが、まぁ、奴のようなら信頼はできるだろう。

 言ってしまえば、そのときはそのとき。そのときは……



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