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ロートハト

作者: ローブ
掲載日:2013/04/05

「ボス! 大変だボス!」

 そう叫ぶと大将はボスのもとに駆け寄った。ボスと大将は年齢が一緒だが、ボスの人より大きな身体に畏怖して敬語で話すことにしていた。

 ボスは大将の顔を見るなり何も聞かずに平手打ちし、「ミートソースを買ってこい!」と命じた。

 大将は「ミートソース、ミートソース…」と呟きながらコンビニに入ると、ミートボールの袋を破って中身をやにわにほおばりだした。慌てた店員がレジから飛び出し、掴みかかろうとしたのだが、大将はヒョイとかわすと店員に平手打ちを喰らわせた。

「ミートソースを買ってこい!」

 店員は大将の言葉に恐怖を感じると店を飛び出し、近くの商店街の中にある雑貨店へと駆け込んで、有り金の全てを出して力の限り「ミートボールをください!」と言った。店番をしていた老婆は店員のあまりの大声に驚き、さらには店の奥でテレビを見ていた老爺も驚き、さらには老爺の膝で寝ていた猫も驚き、さらには部屋の隅で膝を抱えていた孫(無職・37歳)も驚き、雑貨店は一瞬にして阿鼻叫喚の地獄と化した。

「このままでは捕まる…」

 店員はそう考えて家内の人間を殺すことを決意したが、家庭内暴力を振るう孫(無職・37歳)を警戒してこの家には武器になりそうなものの一切が何処にも置かれていなかった。

「ちくしょう! ちくしょう、こんなはずじゃなかったのに」

 悔し涙を撒き散らしながら店員は棚にあったミートボールをひったくり、店を出て一本目の道を右へ、進んで一本目の道をまた右に、そして進んで一本目の道を右に曲がって雑貨店へと戻ってきた。 

 この間2分。当然のことながら雑貨店は地獄の様相にあるままで、老婆はガチガチと上歯と下歯を激しくぶつけ、老爺は両目をカッと見開いて微動だにせず胡座をかき、猫はそんな老爺の首元に咬みつき柱時計のようにブラブラと揺れ、孫(無職・37歳)はTシャツを真っ白なランニングシャツに着替えて脱いだものをキレイに畳んでタンスにしまった。

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