強面と野獣
森に棲むといわれている野獣を討伐せよと命令されたので、私は今、森の中にいる。
…おかしい。言い伝えによれば生肉をエサにすれば、野獣が血のニオイを嗅いで襲ってくるはずなのだが……全くくる気配がしない。
一時間や一日くらいならまだ待てる。
………しかし一週間となれば、もはやこれは一時撤退するべきなのだろうか‥‥‥‥
だが、帰る気力がでない。
なに、この森にはとくに危険な生き物は噂の野獣以外いないと分かっている。
そしたら……
(昼寝でもしてから帰るか……)
とにかくこの時の俺は疲れきっていて、やっと任務から解放されるかもしれない少しの期待と少しの緊張のほぐれによってぐっすり昼寝を楽しんだ。
起きたとき我が身をつつむ毛皮を見るまでは。