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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。

私はツバキ、侍女をやっています

作者: ハク*
掲載日:2026/03/27

ハイテンション百合ラブコメ。連載作品の合間に書いてみました。


 私はツバキ、侍女をやっています。


 今日も賑やかです。


「いい?アリシアちゃんこれは売れるわ!」


「で、でもクロエ様ぁ。ぶーちゃん三号はまだ未完成でぇ」


 そう言ってアリシア様は、自身が作った魔導具を大事そうに抱え込んだ。


「だからこそ!いま!売り込むのよ!」


 背の高いクロエ様の声は今日も大きい。


「あなたのぶーちゃん三号、遠いところの人とも会話出来るんでしょ!素晴らしいじゃ無い!もっと自信持って!」


「で、でもぉ。……まだ魔力配分も不足しているし全ての魔石との互換性も未チェックさらに遠方との会話にノイズがかかってる問題もある通話を開始するのにタイムラグが発生するしそれになんたって魔力コストが高すぎる!こんなんじゃ絶対売れないよぉ!」


 そこまでアリシア様が一息で言った。


 ――いや、長い長い長い。


 しかし、クロエ様は慣れたもの。うんうんと頷きながら諭す。


「いい?何もそれを今顧客に売れ、と言ってないわ。ただ多くの人の前でデモンストレーションして欲しいのよ。あなたはこんなものを作れるんだぞ、と」


「えええええ!人前でですか!?」


「そうよ」


 クロエ様は笑顔で頷く。


「むりむりむりむりむりのむり!」


 アリシア様は凄い勢いでかぶりをふった。


「わわわ、私が人見知りって知ってますよね?」


「ええ、もちろん」


「私が、クロエ様以外とまともに喋れないのは!?」


「それも、もちろん知ってるわ」


「じゃあ!」


「いい?アリシアちゃん。あなたのぶーちゃん三号を思い出してみて。何が出来るの?」


「え?遠方の人と…」


 そこでアリシア様はハッとする。


「まさか――」


「そう、そのまさかよ!」


 クロエ様、ビシッと指を立てる。


「アリシアちゃんは、離れた所からぶーちゃん三号を介して話して欲しいの。大丈夫。みんな私のお得意様よ。あなたの人見知りのことも伝えているわ」


「クロエ様……」


「もちろん、あなたの意思を第一に尊重するわ。それでも怖いと言うのなら、無理にとは言わない」


「クロエさまぁ……」


 アリシア様の瞳には、大粒の涙が浮かんでいた。


「あなたのことは私が守るから」


 そう言って、クロエ様がアリシア様の両頬に手を添えて――。


「私を信じて」


 ――息がかかる距離まで顔を近づける。


「はいぃぃ!やってみせます!」


 アリシア様のお顔は真っ赤だった。


 一体、私は何を見せられているのでしょう…。


 ――夕刻


「当日、ツバキちゃんには、アリシアちゃんの側に付いてて欲しいの」


「私が、ですか?クロエ様ではなく?」


「ええ、私はぶーちゃん三号を使うお得意様の相手をしなくちゃいけないでしょ?」


「アリシア様、嫌がるのでは?」


「大丈夫よ、言い聞かせるから。身体に」


 そう言って、クロエ様はとても良い顔で微笑んだ。


 ……あー、明日の朝、2人の寝室の掃除は大変そうだ。


 私は、遠い目で意識を飛ばした。


「――でね」


 ――当日


 指定の部屋。


 ぶーちゃん三号を抱えたアリシア様は、項垂れている。


「うぅ……やっぱ無理だよぉ」


 私は懐中時計を見る。あと5分後に連絡が来る手筈になっている。


「アリシア様、そろそろご準備をなさらないと」


 ビクッと、肩を振るわせて私を見る。


「つ、ツバキちゃんが、さ、サポートしてくれるんだよね?」


 オドオドとした態度で聞いてくる。


「はい。ただしほとんどはお手元にある書類。クロエ様が書き認めた台本通りに、喋って頂ければ問題ありません」


「あ、相手の人が予想外のことを聞いてきたら?」


「そこは私が対処いたします」


 そこまで聞いて、彼女はホッと一息ついたようだ。


 ――ぶーぶーぶー!


 その時、ぶーちゃん三号が音を鳴らして震えた。


「ひぇぇえ!」


 アリシア様は驚き、椅子から飛び跳ねた。


「あ、あわわわ」


「アリシア様、ぶーちゃん三号を取ってください」


「う、うん」


 彼女が意を決して、ガチャりと受話器を取ると――。


『――アリシアちゃん?』


 ――微かに通話口から、クロエ様の声が聞こえて来た。


「え?く、クロエ様?」


 そこまで聞いて、私はゆっくりと部屋から立ち去った。


 ――クロエ様との会話時


「――でね、本当はデモンストレーションなんてしないの。もちろん将来的にはする予定だけどね。でもまだしないわ」


 私は首を傾げて尋ねる。


「では、どうして?」


「まずは彼女に自信をつけて欲しいの。あの子はとても優れた魔導具師だわ。もちろん私もパトロンとして尽くすけど、もっと多くの人に支えて欲しいの」


 そこで、ワインを一口飲んで息をつく。


「そして、彼女自身の足で世界を広げて欲しい。今のまま工房に引きこもるのが悪いわけじゃ無いわよ?ただ、もし可能ならいろんな人に出会って欲しいの」


「アリシア様は嫌がるのでは?」


「そうね、それも彼女の選択よ。もしどうしてもダメなら私も無理強いしたく無い。でも――」


 そこでクロエ様は、こちらを見る。


「――期待、したいじゃない?」


「それで、彼女に嫌われたら?」


「それは……仕方ないわね」


 そう言いながら、ワインのグラスを揺らすと――。

 

「嫌われたら――また1から関係をやり直すわ」


 ――とても澄んだ瞳で言い切った。


「彼女との関係を諦めないんですか?」


「ええ、もちろんしないわ」


「なぜ?」


「だって私はアリシアちゃんのことを――」


 ――現在


 しばらくして、アリシア様が部屋から出て来た。


 ぶーちゃん三号を大事そうに抱えて。


 どこか、誇らしげで、


 なぜか、キラキラしていた。


 すこし、羨ましく感じた。



 ――1週間後


「ア、リ、シ、ア、ちゃぁぁん!?」


「きゃぁぁあ!ごめんなさぁぁい!」


「まぁた、工房を爆発させたわね!」


「だ、だってペンギンちゃん六号の設計がとても上手くいって〜」


「言い訳は聞きません!」


 私は工房のお掃除をしながら、クロエ様の言葉を思い出す。


 『――心の底から愛してるのだもの』


 私はツバキ、侍女をやっています。


 今日も、賑やかです。


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