呪術師
私は呪術師だ。ワラ人形を使って相手の身体を痛めつけることができる。ワラ人形は自作している。大切な商売道具だから見ず知らずの他人に任せる訳にはいかない。その大切なワラ人形だが、今回ちょっとエッチな感じに仕上がってしまった。胸の膨らんだ感じとか、はち切れそうな太ももとか、ちょっと虐めてみようか、なんて思ってしまうものになってしまった。これじゃ、なんだかドMみたいじゃかいか? でもちょっとだけならいいかも。そう思って少しだけ針を刺してみた。その瞬間、ゾクゾクっと来た。悪人を懲らしめるための道具を秘められた自分の喜びを解放するために使っているのだと思うと、心地良い背徳感に包まれて益々興奮してしまった。でも、その時、自分に痛みがあった方がもっといいかもしれない。ワラ人形にチクっとした時に、私の身体がチクっとしたら、ものすごい快感かもしれない。そんなことを考えてしまった。それは私にとって不可能なことではない。何と言っても私は呪術師なのだ。それくらいのことは容易くやってのけることができる。そして私は人形への攻撃が私自身への攻撃になるよう呪いをかけることにした。なんだかあらゆる意味で倒錯している感じがした。そして自分の髪の毛をそっとワラ人形の胸元に入れた。準備は整った。ワラ人形の左手にそっと針を刺した。チクっとした痛みが左手を襲った。痛いっ! でも気持ちいい! 私ってドSだったのかと思った。もう一回、今度は右手に針を刺してみた。痛いっ! でも気持ちいい! 今度は足を刺してみよう。そして私は、それからずっと自分を呪ったワラ人形に針を突き立てていた。
「死因は?」
「わかりません。調査中です」
そこにはすでに冷たくなった呪術師の姿があった。事件性があるということで警察が捜査に来ていた。
「呪術師だそうです。同業者同士で揉めてたいのかもしれません。ワラ人形をしっかり手に持ったまま、針を突き立てています」
「もしかすると相手も無事では済んでいないかもな」
「おそらく」
「この世界には、俺たちの想像も及ばない奇妙なことが、たくさんあるのかもしれないな」
安らかな死に顔の呪術師を見ながら、神妙な面持ちで刑事は言った。




