ついに
慎也は昔から、真面目な顔をして街を行き交う女性達が安全だと信じ込む自宅に帰り、見えない目に気付かずに自らの欲求を満たすために妖しく身体をくねらす姿を想像することにこの上ない興奮を覚えるのであった。そして中学生の時分から既に帰宅するなり、あのかわいい同級生も一度他人の目から解放されれば、腕が、手が、身体が欲望によって支配されるのだと妄想しては一層に顔を醜くしてニタニタと笑いを浮かべ、自らも欲求のままに腕を忙しく動かすことが日課なのであった。
そんな慎也はようやくリアルタイムでそれを見れる環境を整えてしまったのだ。早速冷や汗をかかされたとはいえ、興奮は冷めるところを知らず、目を血走らせ、今か今かと顔をモニターとぶつからんほどに近づけていた慎也であったが、彼を満足させるような出来事は中々映されなかった。
再び週末が来ようかというのに慎也が待望の場面に遭遇することは一度もなかった。素晴らしき容姿の女性の着替えを観賞して、汚らしい笑みをこぼすことは多々あったのだが、それでも彼は物足りなさを感じていたのであった。
危険を冒してまでカメラを設置したというのに、慎也は何も得るものがなかったのか。いや実は、ある一つの“収穫”があったのだ。それは優佳の日常を監視する限り、家族、そして無論父親とも連絡を取っている様子がないことに気付いたのであった。電話をするにしても、父親と話している素振りもない。メールはあまり好まないのか、親指を忙しく動かすところを見かけることもほぼなかったのであった。この事実はますます慎也を勇気づけた。カメラを仕掛けた頃は優佳の顔を見てもどうとも思わなくなっていたが、近頃は液晶の画面越しでも再び滝川氏の顔がチラつくようになっていたのだった。
不安も多少は取り除かれたとはいえ、第3の目は主人の望んでいたものを一向に捉える気配はない。もしや、と慎也はふと思った。やはり設置されたカメラに気付いていたのではないか。だがそんなわけがない、と何度も自分に言い聞かせるのであった。
ここからの慎也の思考はとんでもなく馬鹿馬鹿しいものであるが、順を追って書いていかなければなるまい。
優佳はあんなに真面目な娘だ。きっと世の中の薄汚れたところを知らないのだろう。そして自分の本能が叫ぶサインすらも聞き間違えて、何か体調が悪いのだとしか思ってないのだろう。そうだ、そうに違いない。ならば、彼女を“目覚めさせる”にはどうすればよいものか。何気なくそんな話をしてみようか。いやできない。多少は話せるようにはなったが、そこまでの自信はない。…そうだ。見たことがないのなら俺のヤツを見せてやろう。それこそ何気なくだ。そうだ。それでいいじゃないか。
本当にこの男は気が狂っているのかとしか言いようがないものだ。仮定の根拠すら勝手な妄想で、しかもしまいには自分の恥部を見せつけると決心している。一体どのような脳髄をもってすればそのような結論へと辿りつくのであろうか。おそらく、滝川氏の影の不在がこのような暴走を許してしまったのであろう。しかしながら、後々の彼からすればこれしきのことはまだまだかわいいものであった。
さて、それで慎也はというと、見せつけようと思い立ったはいいが、生憎彼は普段からジャージを着用していた。これでは何気なく出すということはできない。どうしようかとしばし悩んだ挙句、単純に全体を大胆にずり下げて優佳の部屋へと向かうのであった。
ようやくタイトルにふさわしくなってきました。
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