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1.魂は出会う

「万物の根源は魔力である」


かつて魔力という存在を発見し魔法学を発足させた学者の言葉だ。

建物や植物、人間までこの世界に存在するすべての物質は魔力によって形作られている。

魔力を天から授かって生まれ、魔力を使って活動し、魔力を使い切ることで人間は死ぬ。

それはこの世界の根本にあるルールだ。

そんな世界に俺は魔力を持たずに生まれてきた。



初めて自分という存在を認識したとき、俺はまだこの世界に存在していなかった。

その時から意識は持っていたのだが、魔力がないがゆえに体は持たず森の中を漂っていた。

体がないということは当然誰にも見えないし誰にも話しかけられない。

だから俺はただひたすら漂っていた。


漂いながらいろいろなものを見た。

大きな鳥も見たし、きれいな泉も見た。森に迷い込んだ人間が獣に食われるのも見た。

この森にはたくさんの生き物がいて日々争っている。

人間はほとんど見なかったし、見たとしても大体そのまま餌になってしまう。


そんな中で一人だけこの森に住んでいる男がいた。

男は泉の近くに家を建てて楽器を演奏していた。

俺は男の奏でる音が好きだった。

そして、そんな男の生活を見ているのが好きだった。




ある日のことだ。


俺はいつものように男の演奏を聴いていた。

いつもは少し離れたところから聞いていたのだが、その日はいつもより近くで聴いていた。

しばらく聴いていると急に演奏が止まった。

何事かと男を見てみると、俺を見ていた。

見えないはずなのにと動いてみると、俺の動きに合わせて男の目線も動く。


「君は何者だい?」


唐突に男が話しかけてきた。

だが、俺には答えを返す方法がない。


「言葉は理解できてるかな?分かったら跳ねてみてほしい。」


俺は返答の代わりに跳ねて見せた。

それを見た男の目がかがやく。


「ちょっと待ってな。喋れるようにしてやるから。」


そういうと男の手の中に白く輝く光のようなものが現れる。


「これは魔力っていうんだ。これを取り込んでみて。そしたら喋れると思う。」


俺は言われるようにその光を取り込んだ。


「あ、あ、音が出せる」


それを聞いた男は嬉しそうに微笑み俺に語り掛ける。


「なあ、君は何者だい?なんで魔力を持っていないんだ?」


俺は男と会うまでのことを話した。




「なるほどな。つまり何も分からないってことか。分かった、ついておいで。いろいろ教えてやろう。」


それから男はこの世界について教えてくれた。


本来、生き物は魔力を持って生まれてくるということ。


魔力がなくて生きているということはイレギュラーだということ。


この森は果ての森と呼ばれていて強力な魔物の住処だということ。


「僕は元々ある大国のすごい魔法使いだったんだが、あることがきっかけで出ていくことになってな。のんびりと余生を過ごそうと思ってほかの人間が来ないこの森に来たんだ。」


ここで俺は疑問を聞く。


「森の生き物には俺の姿は見えなかった。なんであんたは見えるんだ?」


「それを話すには僕の前世について話さなければいけないな。」


そう言って男は話し始める。


男はこの世界に来る前、別の世界で生きていた。

そこにはこの世界のような魔力は存在せず日々平和に過ごしていた。

魔力が無い世界で人々は何を見ていたのか。

それが魂。

それはその肉体という存在を指すのではなくその人自身の人格を指している。

男もまた魂を見つめながら生きていた。


そして俺の状態はその魂という形とよく似ているのだという。

この世界では皆が見ているのは魔力だから、俺の姿が見えなかったということらしい。


「この世界で生きていく以上、今の魂の姿では過ごしにくいと思う。僕の魔力をあげるから魔力の肉体を作って、この世界で生きられるようにしたほうがいいね。じゃあ今日から僕が君の先生だ。先生とでも師匠とでも好きに呼んでくれ。」


「よろしくお願いしますよ。師匠!」


師匠がにこやかな笑みを浮かべる。


「そういえば君は名前がないんだよね。何て呼ぼうか?」


「なんでもいいです。師匠がつけてください。」


師匠は小首をかしげて考える。

少し時間がたって師匠が言う。


「アニマなんてどうかな。僕の世界で魂って意味なんだけどちょっと安直すぎるか。」


アニマ。魂だけの俺にぴったりの名前だ。


「いい名前だ。師匠、俺は今日からアニマです。」


師匠はほほえんで俺を見ていた。




この話は魔力を持たずに生まれた少年(魂)であるアニマの冒険譚である。

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