4. あの頃 (2)
文庫系のは、文庫って確か、ダンボールに書いたよな。ああ、これだ。これなら、自分で引っ張り出せる。
「よっ、と……重いな」
「大丈夫ですか?」
「まぁ、なんとか、な」
よし。この中に……これか。『戦国双刀伝 巻之二 追加データ+リプレイ後編』。『戦国双刀伝 巻之一 基本ルール+リプレイ前編』含め、残り五冊も全部あった。
「ほら。全部もってけ」
「え?」
「ダンボールの中に長いこと、放り込んだままだったんだ。もう、これで遊ぶこともないしな。やるよ」
「いえ、いただけません!」
「別に、替わりに何かくれとか言わないぞ」
「いえ、あの、本は、自分で買いたい派なので」
「あー」
分からんではない。
「町の本屋には、なかったんだろ」
「はい」
「あとは、古本屋かネットだぞ」
「ネット、ですか……」
ネット通販なら、まだありそうではあるか。うなだれた様子を見る限りでは、さすがにネットは使えないっぽいな。
「リプレイの続きが気になるんだよな」
「そう、ですね……」
「だったら、俺が代わりにネットで探して買うよ」
「え?」
「代金と引き換えで渡せば、お前が買ったのと同じだろ?」
「そう……ですね、はい」
「二巻だけでいいのか?」
「そのー、えーと……」
急にしおらしくなったな。
「分かった、残り五冊全部だな?」
「はい。……いいんですか、本当に」
「ネット使って買い物することは幾らでもあるし、その時に一緒に頼めばいいだろう」
「でも、どうして、あの……」
「なんかな。懐かしくなったんだ」
「懐かしい、ですか?」
「毎日、仲間とTRPGしてた頃をさ。思い出した」
中学の時、学校帰りにうちに集まって、よくTRPGをやった。
高校の時は、放課後の学校だった。空いてる部屋に勝手に入って、サイコロ転がして、大事なところでファンブル出して、大声出して先生に怒られたりもした。ついでに、シナリオもめちゃくちゃになった。
大学の頃は、時間を作って集まって、違う大学に行ったやつらを勝手にうちのサークルの部室に呼んで、夜中まで遊んでそのあと、後輩たちも連れてファミレス行ったりとか。
理由は分からない。分からないが、ダンボール箱を開けた時の匂いで、そんなことを俺は思い出していた。楽しかったあの頃のことを。




