39. 名前決め (2)
「鵜川どの。名前は、キャラクターを現したほうが良いのだろうか」
「どっちでもいい。刀鍛冶だから、例えば名前に刀という言葉を入れるとか、そういう意味だよな」
砂上が頷いてる。それは、中二病への入口だったりもするが、これは面白いからそのまま、進んでいってもらおう。
「火の刀で、ヒガタナ、というのは」
「お、いいんじゃないか」
「漢字で、焔の刀で、焔刀とかどうだい?」
「おお、かっこいいですね」
砂上は、そっちの人だったか。
で、他の連中はどんな感じなんだ。
「名前を決めるのは難しいよねぇ」
「ええ。鵜川さま、歴史上、有名な陰陽師の方というのは、いらっしゃるのでしょうか」
陰陽師で、有名人か。
「安倍晴明とかかな」
「安倍どのですか。でしたら、私はご苗字をお借りして、安倍と名乗ります」
名字かよ。
湖上。独特のセンスの持ち主か。もしかして。
天然、とまでは言わないが。
「わかった。焔刀と、安倍な。名前のところに書いておいてくれ」
漢字で書いてるよ、二人とも。すげぇな、神は。
「あとは、僕と、ツチヨくんとメイコくんか」
「わたくし、もう、決めましたわ」
「え、そうなの?」
決まったか。
「どんな名前にしたんだ?」
「カゼノヒメ、ですわ」
風邪引いてる姫さまみたいになってるような気がするが、それを指摘するのは無粋だよな。自分で決めたんだ。こういう、最初のキャラクターの名前ってのは、一生ものの記憶になる。
マダム・キャサリーンは忘れよう。
「漢字をどうするのか、迷っているのですけど」
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風之姫
風乃姫
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俺の方に押し出してきたメモを見たら、この二つが書いてあった。
「下のほうが、女の子らしいですわよね?」
「あー、まぁ、そうだな。そんな気はする。この乃は、女の名前に使われることがよくあるしな」
なんとか乃、というパターンは、けっこうあるよな。知り合いにはいないが。
「下の、風乃姫にしますわ」
「わかった」
あとは。ソラタロウとメイコさんか。
「鵜川さま」
「どうした」
「兎さんに名前をつけてもいいのでしょうか」
兎?
ああ、兎の名付け札を使うのか。
「いいぞ」
「メイコさん、兎さんを連れてますの?」
「ええ。巫女専用の装備に、兎の名付け札というのがありまして」
「うらやましい」
それ、1800銭するから、1レベルのPCだとほぼ、手元に金が残らないんだが、2レベルスタートで4000銭あるから、まぁ、買う余裕はあるか。
「兎さんの名前は、つや、にします。ひらがなです」
「分かった」
メイコさんは兎持ちか。
気をつけよう。
「キャラクターの名前は、もう少しだけ、考えさせてください」
「わかった」
装備は、だいたい、決まってきてる感じか。全員。
「僕は、どうしようかなぁ。ソラタロウのままでもいいような気がするけど。天狗は、飛べるだろう?」
「そうだな。種族能力の話だよな?」
「そうそう」
切り札を切ると飛べなくなるが、天狗は戦闘時の移動に若干の優遇がある。
さて。
「飲み物とかは、自由にしてくれ。遠慮しなくていいからな。大量に買ってきたから、好きなだけ飲んでくれ」
「悪いね。なんか」
「異世界の神とTRPGやるなんて、普通はできない経験だからな。まぁ、礼、というと変だが、これぐらいはさせてくれ」
「ありがとうございますー」
ヤミコが率先して飲んでくれると、砂上や湖上も飲みやすいだろう。助かる。
「いただきます」
「私も。恩に着る」
「大袈裟だ。ただの飲み物だよ」
湖上と砂上。いいやつらだよな。こいつら。
「鵜川さま」
メイコさんか。
「おう。決まったか?」
「はい。お花の名前をお借りして、ツツジ、にしたいのですが」
「いいぞ」
躑躅……漢字で名前書いてるな。日本人でも、あまり書けるやついないぞ。多分。
「あとは僕だけか。よし、じゃあ、小鴉にするよ」
「分かった」
ソラタロウは、けっこう、早い段階で決めていたような気がする。自分が先に決めると、周りが気を使うとでも思ったんじゃないか。
ともかく。全員、名前は決まったな。
「じゃあ、そろそろ、始めるか」




