36. 頼み (2)
「いや、そうでもないよ」
「どういうことだ?」
「指導者が考えるのは、国の維持だ。戦争に突き進む状態というのを作り出しているのは、大衆の同調圧力によるところが大きいのではないかな」
そういう、見方もあるか。
指導者と、大衆か。
「比重の問題でしかないように思うけどね。戦争状態に踏み込みたくない、と思っている者は、それなりにいるだろう」
「湖上と砂上に、そいつらに対して働きかけてもらえば、どうにかなるのか?」
「それは、僕にも分からない。守護神として、答えを出すべきなのは彼らだしね」
そうか。
「ここまで言っておいてなんだけどさ。無理強いをするつもりはない」
それは。
「いまさら、だろ。ヤミコの様子も気になるしな」
能天気な駄女神が、あそこまで黙り込むのには、それなりの理由があるんだろう。
「それは、僕から鵜川くんに説明すべきことではないような気がするよ」
「ああ。俺も、詮索したいわけじゃない。落ち込んでるよりは、能天気なほうがあいつらしいだろ」
ソラタロウが笑った。
「確かに」
能天気って、上司に思われてるぞ。ヤミコ。
「まぁ、考えてみるよ。俺に何ができるかは、分からないけどさ」
「ありがとう。それでさ、僕って、天空神じゃない?」
なんだこいつ。
「急にどうした」
「僕は、すごいんだ。創世神だから」
「本当にどうした」
「セッションってやつを、僕の力でリアルタイムに映像化することもできたりね。するんだよ」
……それは。
「すげぇな」
「だろ? そういうのは、ありでいいかい?」
「いいんじゃないか。でも、あれだ、ハードな戦闘描写とかは、抑えてくれると助かる」
「分かった」
TRPGの、リアルタイムでの映像化か。普通は、できない経験ではあるか。
「よし。じゃ、そういう手筈で頼むよ」
「分かった」
「あ、あとね。あの二人がどうして神界にいるか、なんだけどさ」
「ああ」
湖上と砂上の、そして第二王子のその後の運命を聞いた俺は。
「そうか」
それ以外に言う言葉が、何も見つからなかった。




