36. 頼み (1)
「その言い方は、世界中のTRPG勢に刺さるかもな。まぁ、そうかもしれん」
思い出は、たくさんある。
「たくさんの物語を生きてきた鵜川くんに、頼みたいこと、というのは」
そう話すソラタロウの目は、真剣だった。言葉を区切りながらのこの話し方は、ソラタロウなりの誠意の現れなのだろう。そんな気がする。
「ヤミコくんと計画しているTRPGの、セッションって言うんだっけ? それに、あの二人を加えて欲しい。そして、君なりに、戦争という事態が何をもたらすのか、あの二人に物語の中で経験させて欲しいんだ」
待て待て。
「宮廷魔術師と、王宮の騎士だったんだろ? 戦場は幾つも渡り歩いてるだろ」
「でも、それはあくまでも、当事者の視点だけだ。当事者でありながら、外側から全体を俯瞰することもできるのが、TRPGなんじゃないのかい?」
鋭いところ突くな。
「相手側の状況も見えた上で、それをキャラクターは知らないという前提に立って判断することは、よくあることではあるな」
「それを、あの二人に経験させてほしい」
「どうしたいんだよ、あの二人を」
ソラタロウが笑った。気持ちのいい笑顔だった。
「彼らを助けたいのさ。上司としてね」
助けたいって言われてもなぁ。
「俺に、そんな力はないぞ」
「二つの国の人たちの間で、言葉が通じるかどうかを、僕に聞いただろう?」
「ああ」
「一生の仲間になるような、本当は気が合うやつら同士で殺し合う可能性だってあるわけだ。君は、そう言った。そしてそれを、最悪だ、とも」
まぁ。言ったな。
「君の本音だろ?」
「そうだな」
「僕も、そう思う。最悪だ」
ソラタロウがそう言って頷いた。
「これは、外の世界から見た視点だ。少なくとも彼らが管理している国の指導者たちは、そんなふうに考えられない状況にある」
テッペンがアレだと、どうしようもないってやつか。




