35. 物語 (2)
「うん。でも、その前に。湖上の国と砂上の国のこと、鵜川くんはどう思った?」
どう思ったか?
「二つの国の間で、戦争は起きるだろうな」
「そうだね」
「人がたくさん、死ぬだろう。死ななくてもいいやつらが」
女も、子供も。こっちの世界でも、戦場の後方にいるだけで殺される人間はたくさんいる。戦場に後方なんざない。そういうことなんだろう。戦地となった土地の全てが、戦場だ。
「湖上の国の連中と、砂上の国の連中は、言葉が通じるんだよな?」
「通じる、というより、同じ言葉だね。国ができた頃は、小規模ながら交易をしたりしていた時期もあるみたいだよ。それなりに長い時間が経っているけど、今もほぼ、同じ言葉を使ってる」
「そうなのか」
だったら。
「もしかしたら、一生の仲間になるようなさ。本当は気が合うやつら同士で、殺し合う可能性だってあるわけだ」
「そういうことも、あるだろうね」
「最悪だな」
それ以外に、言葉が見つからない。
「そうかー」
ソラタロウがそれだけを言って、しばらく間を置いた。
「鵜川くんはさ」
「なんだよ」
「TRPGを遊ぶ人なんだよね」
「まぁな。最近は遊べてないが」
「ヤミコくんと、TRPGをやったって聞いたけど」
「キャラクター作って、戦闘を二回、やっただけだ。それにまぁ、なんとなく物語を付け足しはしたが」
「ゲームマスターってやつだよね。鵜川くんがやったのは」
「ああ」
「ゲームマスターをするのと、プレイヤーをするのは、どっちが多かったんだい?」
「そうだな……完全な仲間内だと、それぞれ、GMをするのに得意なTRPGがあってさ。プレイヤーしかやったことがないTRPGもあれば、俺以外、GMをするやつがほぼいないTRPGも、あったりだったからなぁ。でもまぁ、GMの方が比率が高いか」
これは、何の話なんだ?
「なんか、関係あんのか? この話と、湖上と砂上の話が」
「鵜川くんは」
「なんだよ」
「TRPGというゲームを通して、たくさんの物語を生きてきた人だよね」
たくさんの物語を、生きてきた、か。




