34. 神託
「神託ってのは、どういう内容だったんだ?」
口を開いたのは、湖上だった。
「国を二つに分け、それぞれに王を建てよ、という内容でした」
それは……どうなんだ?
「守護神は、預かる国の人の心が分かります。先代の守護神どのがそのような神託を王女さまに与えた背景には、当時の人心の動きがあるのでしょう」
先代の守護神なりに、考えた結果、ということか。
「守護神の身となって分かることも様々にある。悪手だとは思わぬ。当時、神託を聞いた側としてもな」
湖上も砂上の言ってることを否定はしないし、実際、国を二つに分けて統治する、というのは、当時の連中の状況からすると、悪い選択肢ではなかったということか。
そうしないと収まりがつかなかった、ということでもあるんだろうが。
「だが、そうはならなかった。第一王子が王よりも先に亡くなられたのだ」
「……そうか」
言葉が出てこない。
「第一王子派に成り代わり、王女さまを女王として即位させ、国の分割統治を否定する派閥が台頭した。神の声を聞いた王女さまこそ、次代の女王に相応しい、とな」
こいつらが神託を嫌う理由は、そこか。
「それは、王女さんが望んだことなのか?」
「いや。ご自身のせいで二派の対立が深まっていくことに、心を痛められていた」
……なるほどな。
「第二王子は混沌に向かう状況を収めようと立ち回られていたが、神託派と呼ばれるようになった元第一王子派の者たちが、神の威光を振り回すようになってな。第一王子の死は第二王子派がもたらしたものだ、などと言う者まで現れる始末だ」
「王女さん、きつかっただろうな」
砂上が目を閉じた。
「我らに悔恨があるとすれば」
湖上が溜息をついた。
「王女さまをお守りできなかったことだ」
「どういうことだ」
「王女さまは」
湖上の言葉が止まる。その言葉の続きを引き継いだのは、砂上だった。
「自害された」




