33. 守護神たちの過去 (2)
「私は、宮廷魔術師でした」
湖上の表情は穏やかだ。
「平民の出でしたが、王を始めとした方々が私を評価し、宮廷魔術師の一員に加えてくださったのです。第一王子も、宮廷魔術師の一員でね。互いに研鑽し合う仲でした」
平民の出、という言葉が重いが、湖上は穏やかなままだ。第一王子は、身分の差に関係なく湖上に接していたのか。
「第一王子ってのは、器の大きい人だったんだな」
「そうですね。魔術の才に秀でていましたが、絵を描くのが好きでね」
そう言って、湖上が笑った。
「とても下手だった」
今も、そういうことが言えるだけの関係性があった、ということか。なんか、しんどいな。
湖上が砂上に視線を送った。
「私は騎士団所属の騎士だ。王宮に連なる血筋の出ではあったが、血統で騎士団への加入が認められるほど、甘い国ではなかったよ。武芸の才能に長けている者は多く、その中で私は必死に鍛錬を続け、そして認められた」
あの時は、と砂上の口元に笑みが浮かんだ。
「嬉しかったよ」
「努力を評価されるってのは、嬉しいよな」
「ああ。尊敬する人からの評価であれば、尚更だ」
「第二王子か」
「そうだ。第二王子は、王宮騎士団の副団長だった」
「誰にでも、友人のように接する人でしたね」
「そうだったな」
二人の話が続く。湖上が宮廷魔術師に、砂上が騎士となった頃から、様子がおかしくなっていったらしい。ちょうどその時期に、王が病気がちになった、という話だった。
「よくある話だと言われてしまえば、それまでだが」
「次代の王がどちらになるのか、という、民人の噂話のようなものであったはずが、いずれの王子につくか、という派閥争いになるまで、時間はかかりませんでしたよ」
これは、物語じゃない。この二人が経験した現実だ。だから重い。
「第一王子派と第二王子派の間の緊張がいよいよ高まった時、王女さまに神託が下った」
「王女さんがいたのか」
「王子たちの妹君でね。聡明な人でしたよ」
「二人からも、可愛がられていたな」
「そうか」
神託、か。




