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32. 正邪の間2 (1)

「湖上の国の民としては、地震により農地運営が困難になり、その状況を改善するため、魔術を使った」


 ヤミコが頷きながら言った。


「その通りでございます。湖上の国の民人たみびとに、悪しき点は一つもありませぬ。自らが鍛錬しつちかった魔術を用い、水資源を回復させたまでのこと」


 地震でそういうことが起きることも、まぁ、あるか。分からんが。ありそうではある。問題が発生したから、それを解決した。そういう話だよな。


 湖上側としては。


「分かりました。では、砂上の騎士。話しなさい」

「では」


 ヤミコと俺に向かって一礼し、砂上が話し始めた。


「我が砂上の国は、砂漠にある数々のオアシスを中心として生活拠点を築く者たちの、共同体のようなものとご理解ください」


 部族があって、その部族が互いを手助けしてる、みたいな感じ。なんだろうな。それで騎士を名乗っているのは、面白いな。騎士団があるってことだよな。


 部族間対立みたいなもんを乗り越えて、砂上の国の連中が一致団結したってことか。


「オアシスの恵みを受け、人々は砂の世界にあっても彼らなりに豊かな生活を続けておりました。互いを助け合う人々の心の在りようもまた、その豊かさをもたらす大きな理由であるかと思います」


 相手のオアシスを奪ってどうこう、というのではない、ということか。


「しかし、先頃の地震によりオアシスが幾つか枯れ、いまだ無事であったオアシスに人々は集まりました。しかし、程なくしてそのオアシスも、水位が下がり始めています」


 そこで、と砂上が続けた。


「各部族の巫女たちを集め、大規模な占術を人々は行い、西に難あり、との答えを得ました。西には湖上の国があり、大きな魔術が使われ、周囲より地下水が奪われている、ということを人々は知りました」


 なるほどな。


「地震によりオアシスが枯れ、残るオアシスも水位が下がり始めている。原因の究明を行ったところ、湖上の国で用いられた魔術が地下水を動かしていることを知った、と」

「おっしゃる通りです」

「分かりました」


 ヤミコが頷いた。


「では、国境線を巡る争いの発端は」

「砂上の国の民の一部の者たちが、国境沿いに騎士を置いたのです」


 砂上、苦しそうだな。争いは本意ではないということか。


「対する湖上の国の民も、魔術師たちを擁し、それと分かるように砂上の国の騎士たちを監視しています」


 湖上の顔も、どこか疲れた感じがある。こいつも争いは望んでいないのか。


 いい神さまたちじゃないか。砂上の国にとっても、湖上の国にとっても。


「一たび、争いの火種が現れれば、それを消すことは容易ではありませぬ」

「ですが我々は、人々を信じたいのです。自らの力でこの争いを収め、国を越えて手を取り合う姿を見たいのです」


 砂上に続けて湖上が言った。


「でも、無理なんだよね?」


 不意に聞こえてきたソラタロウの声は、冷たかった。


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