31. 正邪の間 (2)
炭酸が胃からこみ上げてくる現象は……こいつら神か。抑えられるよな――。
「汚ねぇな、おい!」
「えへへ」
よりによってお前かよ!
「ソラタロウさんよ。こいつ、これでいいのか?」
「ほかの世界の人たちと商談をしたりする時だったら、困るけど」
商談とかしてるのかよ。
「ここならいいんじゃない? ここのボスはヤミコくんだ」
メイコさんも頷くんじゃない。
「地球でそれをやると、なんつうか、今の俺みたいな反応になるからな。表には出さなくても、九分九厘、心の中で思うぞ」
「だって、一気飲みしたら出ちゃうんですもん」
「一気飲みするな」
子供か。いや、子供でもしねぇな。
「姫さま、そろそろ」
「そうでした。んーと。天空神さまは」
「ソラタロウね」
「ソラタロウさまは、その、端の方にいてください。守護神さんたちは、そちらのままでけっこうです。私は、お二人の真正面に移動しましょう」
俺は、ソラタロウの近くにでもいるか。
「あ、鵜川さんは、私の隣りでお願いします」
「なんでだよ」
「せっかくなんで」
何がせっかくなのか。……俺の方を見るな、砂上と湖上。
「分かった」
「椅子をお引きします、鵜川さま」
「あ、すんません」
「うむ。オーケーです」
何の話が始まるのやら。
「それでは、双方が守護する国家の、国境線を巡る争いについて」
ヤミコの声が、普段のへなへなした感じから変わった。思わず背筋が伸びちまった。
「双方の主張を、改めて聞きましょう。まずは砂上の魔術師。話しなさい」
国境線の争い? わりと、ガチめのやつじゃねぇか。それに、守護神ってのは、国を守護する神ってことなのか。
「まずは、闇の女神さまにはご機嫌麗しく、」
「不要。話しなさい」
けっこう、迫力あるな。
「失礼いたしました。私が守護する湖上の国は、名前の通り、大きな湖の上に王都を築いています。湖の資源は豊かであり、周囲に広がる農地を人々は丹念に管理し、良き実りに恵まれておりました」
空になったグラスを見るな。ヤミコ。
「しかし、先ごろの地震より、農地への水資源の供給が緩慢になり、その状況を改善しようと人々が大がかりな魔術を使いました。その結果、以前ほどではありませんが、水資源はある程度は回復の兆しを見せました。私が守護する国は、魔術師たちの国なのです」
最後の説明は、俺に向けたものだ。湖上の目を見た上で、頷いておこう。なんとなく、話が見えてきたような気もする。




