31. 正邪の間 (1)
審判の間を出る前に、ヤミコが「えい」と言ったからなんだろうとは思うが、部屋から出ると見たことのない場所につながっていた。
「ここが正邪の間か」
「そうですよー。そちらのお二人も、ご遠慮なさらずに中へどうぞ」
「はっ」
「失礼いたします」
湖上の騎士は体育会系っぽいな。声が若干、でかい。砂上の魔術師は、普通か。
「正邪の間ってのは、ちゃんとした部屋なんだな」
壁がある。しかも白い。調度品も立派だ。長いテーブルがあって椅子が大量に並んでいるのは、地球側だと各国首脳の対話の時のニュース映像の、あれに近い。
「ちょっと、飲むもの用意しますね。メイコさーん、飲み物をお願いしたいんですけどー」
ドレスをずるずる引きずりながら、どっかいっちまった。
「座って待ってようか。君たちも座りなさい」
上司が不在で上司の上司に座れと言われた場合、どうするのが社会人として正しいのか、難しいところだよな。湖上と砂上が見合ってる……二人揃って俺を見るなよ。
「ま、上司の上司に座れって言われたんだから、座ってもいいんじゃないですかね」
「いいよいいよ。そんなことで闇の女神くんは怒らないよ。闇の精霊の女王くんの方は、怒るかもしれないけど」
メイコさん、そういうところには厳しそうだよな。
「「このまま、お待ちします」」
砂上と湖上の声が揃った。俺も、立っておくか。なんか、こいつらに悪い。待つ間、適当な話題でも。ああ、そうだ。
「そういえばさ。なんでさっきのところじゃないんだ?」
「あそこで色々と決めてしまうとね。守護神くんたちは、その決め事に永遠に拘束されることになるんだよ」
まじか。
「審判の間だからね。けっこう、特別な場所なんだよ、あそこは」
なんつうところに転移できるようにしてくれてんだ、あの女。
「はーい、お待たせしましたー。あれ、皆さん、座って待っていてくださればよかったのに」
「ここの主は姫さまです。いくら天空神さまといえど、」
「僕、ソラタロウになったよ」
「……天空神さまといえど、自由になさりすぎるのもどうかと思います」
「怒られちゃった」
「まーまー、私は気にしませんよ」
「気にしてください」
「えー。あ、ともかく、皆さん、座ってください。鵜川さんはなんで立ってるんですか」
「なんとなくだ」
守護神たちに気を使ったなんて言えるか。座ろう。メイコさんが飲み物を配ってくれている。が。
「すまん、地球世界で有名な炭酸飲料に見えるんだが」
「好きなんです」
「そういうことは聞いてない。なんであるんだ、これが」
「買い置きしました。五年分ぐらいはありますよ」
「賞味期限……お前、神だったな」
「そうです。私は女神です。そんなの、ちょちょいのちょいです」
守護神たちが、飲んでいいものかどうか、戸惑ってるが。
「せっかくなんだし、飲みたまえよ」
また、顔を見合わせたぞ。砂上と湖上。仲いいな、こいつら。で、俺を見るまでがテンプレか。……なんなんだよ。俺から飲めばいいんだろ。おお、しっかり、冷やしてあるな。
「……間違いなくあれだな」
お、飲んだ。一気飲みしようとしてるが。グラスは一回で空けないと駄目とかいう、謎ルールでもあるのか。
「これは、地球世界のものですか」
「爽やかな飲みものですね」
飲みやがった。




