29. 上司 (1)
結局、『戦国双刀伝』の一巻を追加で五冊買った。コンビニに届けてもらうようにしておいて、それを受け取った今日は土曜日だ。ヤミコと会って、一週間が経った。
「ただいま」
コンビニ飯と受け取った本をテーブルの上に置く。連絡するか。渡すのは早い方がいいだろう。鍵は二階か。
「連絡は飯食ってからでいいか」
今日の俺の晩飯はハンバーグ弁当と野菜ジュース。これで健康的な生活を送っているとは思っていないが、疲れている時に自炊したいとも思わない。さっさと着替えて、鍵をもって降りてきて飯を済ませてから、俺はヤミコに連絡した。
「ヤミコ」
――はいはーい。ヤミコちゃんですよー。
「頼んでおいた本が届いたんで、お前のところに持っていこうかと思ってるんだが。審判の間でいいのか?」
審判の間に転移。本を渡す。解放の扉の前に転移。部屋に戻る。たいして時間はかからないだろう。
――そちらに伺いますよ?
「いや。俺が持って行った方が早いだろ」
――まぁ、そうですね。審判の間にいらっしゃってもらっても、全然、構いません。お待ちしてますね。
「じゃあな」
さて、と。
「行くか」
一週間経っても、このドアには慣れない。鍵を開けて……待てよ。
「この間、こっち戻ってきた時、俺、鍵開けたよな」
鍵をかけた記憶はない。勝手に鍵がかかるのか? ヤミコが遠隔操作でかけたんなら、あいつはそれを絶対に俺に言うような気がする。
「まぁ、いいか」
行こう。鍵を開けて、ドアを。
「やぁ」
閉めよう。
「待って、待って待って、ちょっと話を聞いて」
「問答無用」
よし、閉めた。
「おい、ヤミコ」
――はいはい、どうしました?
「ドア開けたら変なやついたぞ」
――変なやつ?
「眼鏡をかけた……」
銀髪だったな。
「銀色の髪の男だった」
――髪、後ろで結んでませんでした?
そういえば。
「そうだった気がする」
――その人、天空神さんですね。創世神のおひとりです。
ああ。なるほど。
「不審者じゃないんだな?」
――私の上司ですから。
上司か。
――あのー、こちらから天空神さんにご連絡を差し上げた方がいいですかね?
「どうだろうな」
――何かおっしゃってました?
「挨拶をされた。あとは、話を聞いてくれって言われたような気がする」
――聞いてあげてください。鵜川さんに何かをしたりはしないです。
「そうなのか」
――もし、何かあったら、地球世界の上位存在の皆さんと私たちがもめますから。それは絶対にないです。
「そうか」
なら、いいか。
「連絡はいいよ。俺の方で対処してみる。悪いな」
――いえいえ。では、失礼しますー。
「じゃあな」
天空神か。待ってるんだろうな。このドアの前でまだ。




