29. 女神その2 (1)
まぁ……見上げるよな。普通。
「天井高いな」
あと、なんか、張り付いてるな。
「なんだあれ」
「えー、お友だち、ですかね」
「嫌そうだな」
「そんなことないですよ」
茶色い、何か。人の姿はしてる……のか?
つうか。
「大きくなってきているように見えるんだが」
「飛び降りましたね」
ヤミコと俺だけじゃなく、侍女長と、副団長は自分の手で首を斜め上に向けているが、全員で見上げ続けること数秒。
視線を戻そう。見えたら駄目なもんが見えた。
「パンツ見えてますよー」
ヤミコの服装に近いが、スカートが若干、短いのか。見えてる、というよりも、丸出しに近い。上半身がひっくり返ったスカートに包まれてる。と思う。
「見えませんわっ!?」
「だろうな」
そう言った瞬間、衝撃波が来た。冷静でいられるのは、来たことは分かるがそれをまともに喰らったりはしていないからだ。鍵の力なんだろう。俺が持っていなくても効果があるのか。便利だな。
「……足をくじきましたわ」
「大丈夫?」
「我慢しますわ」
やはり、ヤミコと同じような服装だが、色は茶色っぽい。あと、小さい。
「子供か?」
「違いますわ! わたくしは、大地母神の娘、土の女神ですわ!」
小学校の、二年ぐらいか。身長は。具体的な数字は分からんが。
面倒くさそうなのは分かる。
「そうか。ヤミコ、俺は帰るぞ」
「待ってください」
「断る。鍵を寄こせ」
「ヤミコって、闇の女神の名前ですの?」
しまった。思わず呼んじまった。
「いや」
「いやって何ですか。鵜川さんが付けてくれたじゃないですか」
「お前が付けろと言ったからだ」
「じゃないと、通話できないんですもん」
なんか。視線が痛い。特に、土の女神と侍女長。
「通話って、なんですの」
「この鍵に、私と直通でお話できる機能を付けたのです。はい、鵜川さん。お返しします」
なんか。受け取りづらい。
「どうぞ、鵜川さん」
「ああ」
「ずるい」
「素敵です」
ずるいは土の女神、素敵ですは、侍女長。この人の素敵ですは、羨ましい、という意味が多分ある。
「地球世界の方に頂いた名前があれば、こちらとあちら、行きたい放題じゃありませんの」
「素敵です」
待て。
「どういうことだ、それは」
「こちらの世界から地球世界に行くには、それなりにお金のようなものがかかるのですが、地球世界の方に名付けて頂いた呼び名があれば、それは不要になります」
「そうなのか。おい、目をそらすな」
「ずるい」
土の女神が俺の真横にいる。今のずるいは、俺に向けて言った言葉だ。




