25. 城? (1)
「……これ、城か?」
「そうですよ?」
だからなんでちょっとキレ気味なんだよ。
「小屋の間違いじゃなくて?」
「あそこは玄関なんですー、本殿は別にあって、ちゃんと広いんですー」
「じゃあ、城じゃないよな」
「……ぐぬぬ」
素材が何なのかまでは分からないが、黒い小さな一軒家というか、小屋がある。田舎の家の庭先にある、物置に近い。
「本来のお城は、姫さまのお力で隠されておりますので」
「あー。そういうことか」
「さようでございます」
侍女長とヤミコの幻影に連れられて、小屋……の前に到着した。入口らしきものはない。
「私、消えますね。あとでお会いしましょう、鵜川さん」
「ああ」
手を振り消えていったヤミコを見送る侍女長が、微かな溜息をついた。なんつうか。あいつの下で仕事するの、大変だろうな。お、足元に魔法陣出したぞ。
「鵜川さま、こちらへ。姫さまが鵜川さまをお通しできるよう、結界をゆるめてくださっていますので」
二重に描かれている魔法陣が、外側と内側で互い違いの方向に回転し始めている。見てもよくは分からないが、とりあえず、すごそうだ。複雑なものらしい、ということは素人目でも分かる。
「これに踏み込んでいいんだよな?」
「どうぞ、そのままこちらへ」
入ってみた。身体に変化が起きたり、といったことはない。
「目を閉じていただいた方がいいかもしれません」
「転移酔い、みたいなやつか」
「はい。この世界の者でも、慣れないと嘔吐します」
「……それ、この方法に根本的な欠陥があるんじゃ――」
「跳びます、目を閉じて!」
……魔法陣を展開するのは侍女長の役割で、転移のトリガーはヤミコが引いてるのかもしれん。そんな気がする。
目を閉じて一秒も経たないうちに身体がぐらついてきた。俺の肩を、侍女長が支えてくれている。冷たい手の女だな。肩越しでもそれが分かる。
「到着いたしました。目を開けても大丈夫ですよ」
特に、転移した、という実感はなかった。目を開くと、見えたのは黒い壁だった。
「ここは?」
「先ほどの建物の中です」
「大広間に転移したりとかじゃないんだな」
「ええ。地球世界で言うところの、エレベーター、ですね。姫さま、お願いします」
――いきますよー。鵜川さん、壁の手すりを掴んでおいたほうがいいですよー。
手すり? ああ、これか……なんだ!?
――上にまいりまーす。
楽しそうだな。お、動き始めた。上方向への加速がかかってる――。
「……すげぇな」
壁が全て透明になり、光る草の平原が全周囲に広がった。見渡す限り、何もない。そして、見える範囲に限界がない。地平線がない。ただ無限に、光の平原が広がっている。




