24. 異世界 (2)
「お前の城に着いたら、指輪はどうするんだ? 侍女長さんは、持てないんだよな」
「さようでございます」
渡してさっさと帰ろうとしたら、引き留められてこの状況だ。
持ったら、女神の力に飲まれるとかなんとか言ってたが。俺、普通に触っちまったんだが。
「直接、私に手渡ししていただきたいんですけど、謁見手続きというのがありまして、それに少し、お時間をいただくかも」
「お前、女神だもんな」
「そうです。私は女神です」
「ダイスは持って帰って、大事な指輪は忘れるぽんこつ女神だよな」
「……言い返せないのが悔しいです」
ダイス、という言葉を聞いて、侍女長が立ち止まりそして振り返った。
「姫さま、何かいただいたんですか?」
「えーと。サイコロを」
「それは……素敵ですね。TRPGに使う道具ですよね?」
「そうです」
侍女長も、TRPGのことを知っているのか。まぁ、このぽんこつの面倒を見ているみたいだしな。
「侍女長さんもTRPGに興味があるのか?」
「姫さまが地球世界から持ち帰った本を読みながら、楽しそうにお話をしてくださるので、多少は」
多少、か。
「ルールブック貸した時、夢中になって読んでましたよね?」
ヤミコからのツッコミに、若干、動じたな。
「……多少、でございます」
「私、鵜川さんにゲームマスターしてもらいましたよ」
得意げな顔で自慢するな。
「え」
「ものすごく、楽しかったです」
「それは……素敵ですね」
侍女長が言う素敵って言葉は、羨ましいという言葉と意味が同じような気がする。表情があまり動かないやつが羨ましそうな顔をすると、こういう顔になるんだな。
「……鵜川さん」
隣りからは、お願いの視線が飛んできているが。
「分かった分かった。昨日のはチュートリアルだったんだ。ちゃんとしたシナリオ用意するから、そっちも人数揃えてくれ」
「やった!」
「わたくしも、よろしいですか?」
「ここにいる二人の参加は確定でいいんじゃないか」
プレイヤー人数は……『戦国双刀伝』なら、六人ぐらいまではいけるか。
「あと四人な。六人までなら対応できる」
「分かりました。興味がありそうな人に声をかけてみます!」
興味がありそうな人、というのが気になるが。ヤミコと侍女長に加わることができる立場の、人間、じゃないな。存在か。……まぁ、神が妥当だよな。
「急ぎましょう! 早く帰らないと」
「そうですね」
先頭の侍女長にヤミコが並び、歩くスピードを上げ始めた。
「まぁ、いいか」
俺も、楽しかったしな。昨日は。
「もうすぐですからね!」
楽しそうに、ヤミコが俺を振り返る。
「ああ」
城、が見えてきたのは、それからしばらくしてのことだった。




