23. 指輪 (1)
「……忘れてやがる」
シャワーを浴びて普段着に着替え、昨日の片づけをしていたら指輪を見つけた。ヤミコが右手の小指あたりにつけていた、銀色の指輪だ。牛鬼との戦闘中、邪魔だと言って外したやつだな。
「大事なもん……だよな。連絡するか。つうか、これ、触っていいのか」
駄目、だよな。女神の持ち物だ。余計なことはしない方がいい。
溜息をつきながら二階の部屋に向かい、例の鍵をとって戻ってきた。黒い石が付いた指輪に指を入れて、呼びかけを開始する。
「おい、ヤミコ」
しばらく待ってみたが、返事はない。
「ヤミコ」
…………つながらないな。
「やったな、あの女」
この指輪が連絡用の何かなのは、間違いない。いや、もっと重要なものかもしれん。
「取りに来るつもりがあるんなら、もう来てるよな。玄関から」
何やってんだよ、あいつ。
「行くしかないのか」
異世界へ。生身の地球人が入って大丈夫なのか?
「ダイスは……持って帰ってるな」
なぜ指輪に気づかない。
「靴がいるか。サンダルはまずいよな」
いや、もう、なんでもいい。面倒くせぇ。玄関にあるサンダルでいい。
「で、午後一時か」
届けるなら、早い方がいい。行くか。指輪は……ま、大丈夫だろ、触っても。危険なものなら外したりはしないような気がする。昨日会ったばかりだが、あいつはそういうやつだ。
「大丈夫……そうだな」
よし。無くさないようにポケットにでも突っ込んでおくとして。
「飯食うの忘れてた」
いいや。二階に急ごう。
「この鍵は、昨日、どうやって使ったっけな」
鍵穴に差して回すだけだったか。
「しかし、まぁ」
派手なドアだよな。装飾過剰な額縁にも見える。読めない文字が刻み込まれていたりもするが、あまり見るのはやめよう。呪われでもしたら厄介だ。
「さて、覚悟を決めるか」
俺に何かがあったとしても、ヤミコがどうにかしてくれるだろう。それを期待しよう。
鍵穴に鍵を差し込み、回す。鍵穴から光が溢れるとか、そういった演出があるわけでもなく、小気味よい音を立てて鍵が開いた音がした。鍵を引き抜き、ドアノブ替わりの取っ手のようなものを掴んて、奥に押し開いていく。
ドアは、あっさりと開いた。




