7. 黒の記憶 (2)
目見開いて驚くなよ。
「言ってみただけなんですけど」
「見たいなら、見ればいい」
「いいんですね?」
「ああ」
「後悔しませんね?」
「しない」
「では、えーと。どうしましょう」
「『戦国双刀伝』以外のTRPGのシナリオは、見ても分からないよな」
「ですね」
「学部の二年の時に書いたやつが……確か」
ああ、これだ。
「ほら。持っていっていいぞ」
もう、このシナリオを使うこともないしな。
「ちょっと待ってください。そのシナリオ、見てしまったら、私、二度と、遊べないですよね?」
遊ぶつもりなのかよ。
「いちおう、同じシナリオを繰り返し遊ぶやり方は、なくもないが」
戦闘メインの『戦国双刀伝』だと、出てくる敵そのものがネタバレではあるか。
「そうだな。どういう敵が出てくるのか、そのへんを想像する楽しみは、なくなるかもしれないな」
「ですよね」
左上でとじたA4の紙数枚に手書きで書いたシナリオを、ぱらぱらとめくってみた。これで間違いない。
「だったら、今から、このシナリオやってみるか」
「えぇっ!?」
そんなに驚くことか。
「それは、さすがに、あの、図々しいと言いますか」
「人の部屋に変なドアを作ったやつが言うことか」
「うぅ、それは、その……」
この鍵がある限り、異世界の連中が俺の部屋に大挙して押し寄せたりはしない、はずだ。ヤミコのさっきの言葉を信じるなら、だが。まぁ、嘘は言わないだろ。
神だしな。
「冗談だよ。この鍵がありゃ、どうにかなるだろ」
「もちろんです。私のフルパワーで作りましたから」
逆に不安になるが、まぁいいか。
「で、どうする」
「そうですね……私ひとりでも、大丈夫なんでしょうか。ほかにも、プレイヤーがいたほうがいいとか、そういうのは」
「ひとりでもどうにかなる。状況を説明して、その都度、敵と何回か戦うだけだ」
「なるほど。でしたら」
ヤミコが、笑顔になった。
「お願いします」
「――おう」
じゃあ、とりあえず。
「下、行くか。ここより広いし、広いほうがいいだろ」




