6. 呼び方 (1)
「それでさ」
確認しとくか。
「はい?」
「届いた本は、どこに届ければいい? そのドアから中に入ったとして、どうやったらお前のところに辿り着けるんだ」
「いえいえ、こちらから受け取りに行きますよ」
「このドアは、俺にしか開けられないわけだろ?」
「別のところにもドアがあるので、それを使います。あ、そうだ」
「どうした」
「その鍵に、私に直通でつながる連絡機能を付けます。鵜川さんからの一方通行で、私から連絡はできないようにしますので」
なるほどな。
「それ使って、お前に届いたぞって言えばいいわけか」
「はい。そうしたら、別のドアを使って、きちんと、玄関からこちらに伺いますから」
そう言って、闇の女神が俺に向かって両手を差し出した。d6が六個、乗ったままになってる。
「鍵をお願いします」
あと、右手の小指に銀色の指輪があるが、女神だし、なんか、そういうものを身に着けたりするものなんだろう。これもこっちで買ったものとかじゃないよな。
まぁ、どうでもいいか。
「分かった。それから、そのd6用に、なんか入れるものやるからちょっと待ってろ」
確か、このへんの引き出しに……これだ。
「なんですか、それ?」
学生の頃に使っていた勉強机の引き出しを、俺越しに闇の女神が覗き込んできた。
「フィルムケースだよ。親父の趣味でさ」
「ふぃるむ?」
「写真は分かるか」
「分かります。あのー、人とか風景を記録するものですよね」
「まぁ、そうだな。その記録方法に幾つか種類があって、フィルムというのは、今も使われているが、どちらかというと古い時代の方法に使う道具だ」
プロの写真家とかは、フィルムを今も使ったりするんだろうが、俺の世代では、正直、このプラスチックの小さな筒状のケースを知ってるやつは、多くはないと思う。
「へー」
「で、余ってたこれを親父からなんとなくもらって、集めてたんだよ」
「小物入れとかに良さそうです」
「だろ」
つうわけで。
「これももってけ。サイコロ六個、手に握りしめてるよりはいいだろ」
「わ、ありがとうございます」
手渡したフィルムケースに、闇の女神がd6を入れるのを待ってから、俺は、異世界の鍵、とでも呼ぶか。異世界の鍵を闇の女神に手渡した。
「では。あのー、鵜川さん」
今度はなんだよ。
「どうした」
「私に連絡する時に、私のことを呼んでいただきたいんですけど、ちょっと待ってくださいね。えい」
闇の女神が異世界の鍵の、持ち手側を指で弾いた。
「おぅ、今度はすげーな」




