55. 鍵と加護 (2)
「無理です」
「無理ですわ」
「理由は」
「一度、付けたものを消すと、色々と問題がですね」
「知らん。消せ」
いや。待て。
「ソラタロウ。お前のは?」
「僕の加護?」
「通話機能と、解放の扉を自動的に閉める機能、だったよな」
「そうだったね」
「加護はあるんだろ?」
確か、解放の扉を俺が閉め忘れた時、強引な方法で閉めたって言ってたよな。創世神が使う、強引な方法って言葉は、重い気がする。
「まあ、いいじゃないか。そこはさ。加護は、自動的に配られるもの、でもあるから」
怪しいな。
「あと二人、創世神がいるんだよな」
目を逸らした。
「その二人に聞くのは」
「それは、ルール違反だよ、鵜川くん」
何のルールだよ。
「あの。ソラタロウさま。大変、言いにくいことなのですが」
「なんだい?」
「お母さまが、その、こちらにいらっしゃるそうです……」
「それはまずいね!?」
……ソラタロウ。
「後ろだ」
「え?」
「まずい、とは?」
金色の長い髪を持つ、女……まず間違いなく、大地母神が、ソラタロウの真後ろに唐突に出現した。大地母神の声が聴こえたはずだが、ソラタロウは振り返らない。
なんつうか。
今まで会った神界の連中の中で、一番。
威圧感がある人だな。
「同じ言葉を繰り返すのは好きじゃない。まずいとは」
ツチヨに劣らず、小柄だが。あと、いわゆる無口キャラっぽいが。威圧感がやばい。
砂上と湖上の顔もやばい。どん引き、とはこういう表情のことを言うのか。
「答えて」
「あのー、言い訳をしても?」
「事実のみ」
「……はい」
俺に目で助けを求めるな、ソラタロウ。
「少し、自分のほうから、話をさせていただいても」
感情のない平坦な視線がこっちに向いた。
「どうぞ」
「この世界と地球をつないだ扉については、ご存じですか」
「確認済み」
「で、その扉を俺が閉め忘れまして」
「それは大変」
「その時に、こちらの天空神さんが助けてくださいまして。で、扉を自動的に閉める機能と、何かがあった時のための、連絡手段をこの鍵に付けてくれまして」
間違ったことは言ってないよな。
「その時に、加護がこの鍵に付き、鍵の所有者にその加護の影響が出る……でいいんだよな?」
闇と土と天空が同時に、高速で頷いた。
「それで、地球の人間である俺に、この世界の神々の加護が付いた、ということらしいんですが」
「なるほど」
すげぇ、鍵見てる。
どうすんだよ、この状況。




