5. 鍵とd6 (2)
片手で掴んでも、少しはみ出るぐらいの大きさで、手触りは金属っぽいが、異世界の特殊な何かでできているんだろう。闇の女神が得意げに、俺を見ている。
「ゲームっぽくいうと、その鍵、最高レアリティですから」
レアリティとかあんのかよ。
「無くさないようにするよ」
「お願いします」
このドアにしか使えないんだし、この部屋に置いておけばいいだろう。本棚にでも置いておくか……そうか、これがあったな。
鍵を置き、替わりに俺はなんとかチップスが入っていた紙製の筒を、本棚の奥から取り出した。
「お前、ダイス持ってないよな」
「だいす? 椅子ですか?」
『戦国双刀伝』はダイスという言葉を使わないでルールを書いてるんだったか。
「すまん。サイコロ全般のことだ。六面以外にも、十面とか二十面とか、色々あるんだよ。それをまとめてダイスと呼ぶことが多い」
「へー。サイコロのことなんですか」
「正確に言うと、六面のダイスのことをサイコロと言って、それ以外のやつは、まぁ、十面ダイスとか、二十面ダイスとかな」
「へー、へー」
「面倒だから、TRPG界隈だとd6とかd20とか、略して言うことの方が多い」
「二十面ダイスより、d20の方が言いやすいから」
「そういうことだ」
で、こいつの中に。
「やるよ。とりあえず、六個ぐらいd6があったらいいだろ」
「え」
「鍵の礼だ」
「いただけませんよ、そんな、貴重なもの」
「これはTRPGを始めたばかりのやつに配るためのものだ。たいてい、持ってないからな。そのうち、自分好みのダイスが出てくるから、その時は自分の金で買ってくれ。ほら、手を出せ」
「本当にいいんですか?」
「今までも、色々なやつにダイス配ってきたからさ」
「じゃあ、あのー、ありがとうございます」
差し出された両手の上に、白地のプラスチックに黒の点を打ってある、いかにも日本的なd6を六個、転がした。
「少し小さいぐらいの方が振りやすいし、重いやつはテーブルの上に落とすと音が騒々しいから、完全に俺の好みを押し付けている感じになってはいるけどな。そこは、まぁ、許してくれ」
「許すとか、そんな、全然。ありがとうございます。わー、大事にしますね」
「まとめ買いした時のやつだから、別に、高価なもんでもないし、好きに使ってくれ」
嬉しそうに手の中のダイスを見て、闇の女神が笑っている。
まぁ。喜んでくれたんなら、良かったな。




