第6話 初戦闘?
過度な芋虫食いのせいで、喉が渇いてしまった。
芋虫の量が多すぎて、途中で水を飲みにいく暇なんて無かったからな。
ステータスの増加に伴う能力の変化の確認はひとまず置いておいて、水を飲みに行くことにする。
まだ日は落ちていない、というか体感的に真っ昼間な気がするが、流石に我慢できない渇きだ。
ステータスのおかげで、昨日よりも移動速度がかなり速い気がする。
速いだけではなく、石などの障害物を避けるのもかなり楽になった。
ステータスの数値について詳しくはまだ分からないが、しっかりと体感できるほどに効果があるようだ。
これなら何かしらに襲われても逃げ切れるんじゃないだろうか。
ステータスのおかげで、昨日よりも転移の距離も伸びているだろうし、何かあればすぐにその場を離れられるはずだ。
目に見えて効果が分かるのは良いな。
おかげで、昨日の夜よりも安心して川に向かうことができる。
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川に着いた俺は、程よく冷えた川の水を大量に飲んでいた。
大袈裟ではなく、身体の体積以上に飲んでいる。
芋虫を食べているときも思ったが、俺の身体のどこにそんな容量があるのか。
(これも検証するべきなのか……)
芋虫のように要確認事項が増えていく。
面倒ではない……と言えば嘘になるが、生きるために手は抜くわけにはいかない。
自分の能力を把握したおかげで、非常時の逃走手段を持っているわけだしな。
喉の渇きも無くなったし、寄り道せずに帰ろう。
わざわざ危険を冒す必要はない。とんでもないモンスターがいる可能性も十分あるからな。
(ん? 今なんか動いたか……?)
回れ右をして洞窟に帰ろうと進み出したが、進行方向で何か動くものが視界に入った。
巨木の裏にすぐに移動したせいか、ここからでは見えない。
(まずいな……)
ここから洞窟まで遠くはないが、直接転移で帰るには距離がありすぎる。
幸いにもこっちには気づいていなさそうだが、どうしたものか。
遠回りも考えたが、この辺りの土地勘は無いし、無闇に動き回ったら別の脅威に遭遇しないとも限らない。
今以上のリスクを負うのは流石に勘弁だ。
仕方なく、こっちに気がつかないよう、なるべく音を立てずにゆっくりと近づいていく。
もちろん、いつでも転移できるように身構えながらだ。
慎重に近づいていくと、巨木の裏で動くものが見えた。
さらにもう少し進むと、その全貌が明らかになった。
20〜30cmくらいだろうか。
全体的に青く半透明で、プルプルと震えている。
よく見てみると、その身体の中に紫の小さな石がある。
(スライムじゃね?)
どこからどう見てもスライムだ。
地面から生えているスライムと同じくらいの高さの植物を溶かしている。
スライムの能力は分からないが、想像よりも遥かに弱そうなスライムと分かった途端に気が抜けてしまった。
【蛇なのに変な汗をかきそうだ……)
“パキッ”
気が抜けたせいで移動が少し雑になってしまったのか小枝の上を通ってしまい、見事に折ってしまった。
耳がないのにこちらに気づいたスライムは、一直線でこちらに向かってくる。
これが狼や熊だったら全力で逃げていたが、相手はスライム。
どんな能力を持っているのか分からないが、こっちに向かってくる速度も遅いし勝てそうな気がする。
とりあえず、スライムを時空間魔法で遅延できるか試してみる。
魔法を使った瞬間に、スライムの動きがゆっくりになる。
ただでさえ動きが遅いスライムが、さらに遅くなったせいでかなりゆっくりに感じる。
(ひとまずこれで余裕ができたな。このあとはどうしようか……)
スライムの身体にある紫の石が弱点な気がするが、取り込まれた植物は溶けていたし、触れるのは得策ではない気がする。
噛み付いて攻撃は無しだ。
(となれば、攻撃手段は時空間魔法の1択になるが……)
そういえば転移は自分以外にも使えるのだろうか?
超鈍足なスライムを横目に、試しに近くの小石を引き寄せるイメージで時空間魔法を使ってみる。
次の瞬間、小石が消えたと同時に、目の前に小石が現れる。
引き寄せは成功だ。
次は、スライムの石を引き寄せようとしてみる。
小石とは違って抵抗感がある。
さっきよりも強く念じながら、抵抗を無視して引き寄せてみる。
目の前にスライムの石が現れた瞬間、スライムの身体が崩れて液体になって地面に吸われていった。
やはりスライムの石は弱点だったようだ。
(石というより核って感じだな)
紫のように見えていたが、改めて見てみると濁った赤い色をしている。
スライムが青かったせいで、紫に見えていのかもしれない。
危なげもなく倒せたし、初戦闘にしては上出来ではないだろうか。
一方的で戦闘とはいえないかもしれないが、そんなことは気にしない。
とはいえ、戦闘中に慌てるのはリスクが大きいため、しっかりと魔法での攻撃手段を考えなければいけない。
敵が全員スライムのように核を持っていて、それを引き寄せたら倒せる、なんて甘いはずがないからな。
洞窟には優秀な食料兼サンドバッグの芋虫が大量に湧いているから検証は容易いものだろう。
(何かに使えるかもしれないし、スライムの核は持って帰るか)
スライムの核を咥えた俺は、そのまま洞窟への帰路についた。
やっぱりスライムって定番ですよね〜