第12話 迷子
川沿いに進んで更に数十分。
常にマナを意識しながらの移動はなかなか精神的にきつかったが、徐々に慣れてきたころだ。
マナ感知を持っているのが俺だけとは限らないため、できるだけ自分のマナを操作して体内に抑えるようにしている。
こうしておけば感知されない、とは限らないかもしれないが全く効果が無いことはないだろう。
ずっとこんな状態で移動していたからか、マナ感知とマナ操作がLv2に上がっていた。
急激ではないものの明らかに違いがあったため、アナウンスがなくともすぐに気が付いた。
今のところ感知に引っかかったのはスライムと角兎だけだが、最初に倒した個体よりも強い個体ばかり引っかかるようになった。
明らかに感じるマナの量が違う。
とはいえ強さが倍になったとしても弱いことに限りはないため、問題なくいつも通りの手順で倒すことができた。
Lvも進化してから4つ上がって、一度進化して落ちた移動速度もまた伸び出した。
今はこんな感じだ。
**********
名前:なし
種族:ビッククロノススネーク
Lv:5/30
HP:191/191
MP:394/394
攻撃:159
防御:136
魔攻:254
魔防:216
敏捷:232
器用:120
《固有スキル》
【時空間魔法:Lv2】
【特殊進化:Lvー】
《スキル》
【マナ操作:Lv2】
【マナ感知:Lv2】
【暗視:Lv1】
【噛み付く:Lv3】
《称号》
【転生者】
**********
ステータスの上昇量の法則は相変わらず分からないが、進化前よりは伸びは良い。
この調子ならば、前のステータスよりも強くなるのは時間の問題だろう。
順調に進んでいると、感知範囲が広くなったマナ感知に新たな反応があった。
(初めて感じるマナだな……それに3つも反応がある)
右方、距離はおよそ20mくらいだろうか。
近くはないが遠くもない。
ステータスが高ければ20mなんてあって無いようなものだ。
向こうはこちらに気付いているのか、迷いなく真っ直ぐと向かってきた。
どんな相手か分からないため、自身に加速を付与してあらかじめ目の前に不可視壁を展開、そしていつでも転移で逃げられるように身構えておく。
「グギャ!ギャギャ!」
身構えてすぐ現れたのは3体の紫の肌を持つ醜い姿形の人型の化け物。
手には単純な作りだが立派な棍棒を持っている。
(これって……ゴブリンか?)
記憶はないが、なぜか知識として知っている。
しかし、俺の知っているゴブリンは緑の肌だ。
(一体だけなら偶然起きた突然変異か何かかもしれないが……三体とも突然変異が起きるってことがそんな簡単に起きるのか?)
人的要因、あるいは環境要因、他にも考えられる可能性はあるが、今重要なことは勝てるかどうかだろう。
(初見だが、感じるマナは角兎やスライムよりは強いがそこまで脅威に感じほどじゃないな)
ゴブリンがマナを操作して抑えているとは考え難いだろう。
問題なく勝てると判断した俺は、不可視壁とは別にゴブリンと自分の間に30cm程の高さの不可視の段差を作る。
何も知らないゴブリン達は連携も取らずにこちらに接近、そしてそのまま仕掛けた段差に躓き見事に転倒。
倒れて隙だらけになったゴブリンの二体を立ち上がれないように、倒れたゴブリンの頭上すぐに不可視の壁を横向きに展開。
残りの一体は起き上がる前に身体を使って棍棒を振り回さないように素早く上半身を腕ごと締め上げ、そのまま喉元に何度も噛み付く。
噛み付く度に血が噴き出るが、あまり嫌悪感はない。
ゴブリンの身体の力が抜けて、しっかりと絶命したことを確認してから、残りの二体も同じように仕留める。
戦う度に断絶を使っていると、いつマナが枯渇するか分からないため、消費の少ない不可視壁のみで戦ったが、噛み付くのスキルがあることもあって、思ったよりも簡単に倒せた。
不可視壁が燃費の割に便利すぎる。
遅延と加速も相手に付与するのはマナの消費が多くなるが、自分に付与する分にはそこまでマナの消費は多くならない。
持久戦や今のようにどれだけ敵が襲ってくるか分からない状況では、この燃費の良い二つがかなり重宝するだろう。
ゴブリンの血の臭いに釣られて、さらにゴブリンか別の敵がやってくるかもしれないため、川の水で血を洗い流し、すぐにその場を後にした。
**********
初ゴブリン戦から更に数十分。
あれから追加で十体のゴブリンを倒した俺は、大きめの棍棒を持った紫オークに遭遇した。
感じるマナはゴブリン三体分よりも強かったが、数は一体だったため、逃げることなく接敵した。
ゴブリンと戦ったときと同じの戦法で戦ったが、転倒させるまでは良かったが、身体に巻きついて締め上げようとしたが想像以上に力が強く、強引に剥がされて投げられてしまった。
少ししかHPは減っていないものの、ここで消耗するのは得策ではないと判断した俺は、再び同じような転倒させて首を断絶で切った。
《Lvが上がりました》
完全に切り落とすことはできなかったが、首の半分は切れたため即死だった。
(敵が強くなってLvが上がる速度も落ちていないとはいえ、このペースで戦い続けていたらマナの回復が消費に追いつかなくなるな……)
まだマナは半分ほど残っているものの、ここで無茶をして必要以上にリスクを負うのは得策ではないだろう。
(なんで下流の方に進めば進むほど強い敵が出るんだよ……森の広さが分からない以上何とも言えないが、このままのペースで敵が強くなれば流石にまずいよな……)
今以上に強い敵と万全ではない状態で遭遇すれば命を落とすかもしれない。
それに重傷ではないが、オーク戦で軽くHPも減っている。
(そういえばさっきスライムを倒したところに例の草があったよな)
もしあれが薬草だったら、迅速にHPを回復させることができるかもしれない。
そう考えた俺の切り替えは早かった。
すぐに草を求めて来た道を引き返す。
(道と言っても獣道だけどな)
引き返すことおよそ20分。
草の群生地はまだ見つからない。
(こんなに遠かったか……? 多少マナは使ってしまうが転移するか)
転移でマナを消費しても、HPよりは早く回復するだろうと思い、転移しようとする。
(あれ? 何で転移できないんだ?)
しっかり行き先をイメージしようとしても、頭に靄がかかったように思考が鈍り、転移が発動しない。
試しに10cmの短距離転移を使ってみるが、これは問題なく発動する。
(数分程度の距離が20分かけても辿り着けないし遠距離転移もできないしどうなってんだよ……)
仕方なく巨木を断絶で切って、切った部分を引き寄せで抜き取る。
これで即席空洞の完成だ。
進化して大きくなったため、前に使った天然の空洞よりも中を広めに作った。
これで寝ることできなくても、不可視壁で穴を塞いでおけば休むことはできるだろう。
**********
休んでいる間もマナ感知とマナ操作を欠かさずに続けているため、敵には気付かれにくいだろうし、何か来ても近寄れば気付けるだろう。
「そんなところで何してるの?」
回復に専念していると、突然、俺の感知をすり抜けて不可視壁越しに30cm程の赤い鳥が目の前に現れて話しかけてきた。




